昭和42年

年次経済報告

能率と福祉の向上

経済企画庁


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はじめに

政府は,これまで毎年,経済報告(いわゆる経済白書)をまとめ,日本経済の実相とそれがかかえる問題点を国民の前に明らかにしてきた。

本年度の年次報告は二部からなつているが,

(1)第1部では,主として昭和41年度から現時点にいたるまでの日本経済の回顧をおこなつた。

昭和40年10月の谷から上昇しはじめた景気の回復の足どりを総決算するとともに,設備投資リードの大型経済への移行といわれる現段階を評価し,かつその間題点の指摘をおこなつた。とくに,最近の設備投資の台頭とその背景を分析し,それが国際収支,労働力需給,財政金融等に与える影響の検討に重点をおいた。その際,日本経済の現段階を,たんに景気循環の一局面としてとらえるのでなくて,成長路線での局面としてとらえるように努めた。

(2)第2部では「経済社会の能率と福祉」の問題をとりあげた。

日本経済はいまや人口1億,国民総生産1,000億ドル,輸出100億ドルの規模に達し,その経済力も著しく充実されてきた。しかしながら,内外の諸条件には,資本自由化をはじめとする一連の国際化や労働力人口増加の鈍化などの基調変化があり,今後のいつそうの飛躍のためには高い適応力をもつことが要請されている。

戦後の成長を顧みれば,日本経済にはこの要請にこたえるだけの能力があることは否定しえない。しかしながら,資本,労働,制度等各般にわたつてその潜在能力は必ずしも十分に開発,活用されているわけではない。第2部は,この点を日本経済の実態に即して分析したが,とくに,個々の分野における能率と経済全体の能率との関係がどうなつているかを総合的にとらえるようにした。さらに,そのような経済の効率化が国民の福祉向上とどのような関係にあつたかを明らかにすることに努めた。

(3)あらゆる政策の窮極目標が高福祉の実現(国民生活の向上)にあることはいうまでもない。本来,高能率とは経済全体の生産性が高いことであり,潜在能力がむだなく開発・利用されることであるから,それは高福祉の源であり,かつそれを保証すべきものである。

日本経済は,昨年後半期に景気後退から完全に立ち直り,新しい発展の段階を迎えつつある。物価の安定や国際収支の均衡に留意しつつ,この発展を持続的な成長の第一歩とするとともに,能率の高い経済の実現を通じて福祉社会を建設することが必要である。

以上のような点をあきらかにすることが本年度報告の主題である。


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