昭和41年
年次経済報告
持続的成長への道
経済企画庁
昭和40年度の日本経済
今回の景気変動の性格と問題点
景気回復の現段階
当面、景気回復をリードしている需要要因は、在庫投資、財政支出、輸出であった。第36図にみられるように、日本では常に最終需要は増え続けており、総需要の増減の波は在庫投資の振動によってもたらされてきた。従って、在庫の減少がやむだけでも、総需要は増勢をとりもどすことになる。財政支出は、公共事業費の支出促進の効果で4〜5月は前年を7割、また、輸出はアメリカの好況に支えられて4〜5月は前年同期を1割強上回っている。消費や、設備投資の回復は遅れている。しかし生産の増大につれて、超過勤務時間や求人も上向いており、41年に入ってからは、家計消費や百貨店の売上高も増加してきた。また、設備の稼働率も40年10〜12月期を底にして41年1〜3月には上向き、機械受注も増加している。第30表に示すように、ほとんどすべての指標で、10〜12月に比べて1〜3月はかなりの景気回復を示しており、特に、新規求人16%増、輸出13%増、百貨店売上げ8%増、時間外労働6%増、出荷4%増等は、1・四半期間の増加としては極めて大幅である。
最近月では一段と水準が上がっている。景気の回復は順調であり、先行き次第に明るさを増していくものとみてよい。このような回復過程に入った景気が、今後も着実な成長を続けていくようその歩みを注意ぶかく見まもり、停滞過熱いずれの危険に対してもそれを早く予知し、財政、金融面及び産業政策による適切な誘導を行っていくことが大切である。もちろん景気が回復しても、消費者物価の騰貴や、中小企業の倒産等構造的原因に根ざした問題は直ちに改善されるわけではない。経済の長期的な発展のためには、需給の調整を中心とする景気対策と構造的対策との両面が合わせて行われなくてはならない。以下で、日本経済の発展のあとを少し長期的に分析し、持続的成長の条件を検討しよう。