昭和38年

年次経済報告

先進国への道

経済企画庁


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昭和37年度の日本経済

中小企業

設備投資の停滞

 ここ数年の高成長過程で中小企業の設備投資は活発であったが、37年度は景気調整の影響による投資の手控えと金融機関からの借り入れ難から前年とほぼ同水準に留まった。中小企業金融公庫の調査によると、中小企業の設備投資動向は、 第3-8表 に示すように、34年度は対前年比55%増、35年度は40%増、36年度は13%増と鈍化傾向を示したが、37年度は前年度とほぼ同水準に留まった。このように沈滞化した37年度の中小企業の設備投資の動きのなかからいくつかの特徴点を挙げると、第1は景況の推移に従って37年度の投資見込みが変化をみせたことである。37年2月調査では前年比8%の増加が見込まれていたものが、37年8月調査及び38年2月調査ではほとんど「横ばい」へとかわっている。第2は30~99人の中位層と200~299人の上位層の投資減少が目立つことである。特に200~299人の上位層のなかには金属・機械関係などが多いことは、今回の調整過程でこれらの業種が比較的影響を受けたことが反映されている。第3は業種間の相違である。石油石炭製品、輸送用機器、化学、窯業などの中小企業は前年度に引き続いて活発な投資を行ったが、逆に紙パルプ、ゴム、皮革、電気機器、家具装備品などは景況の不振により大幅な減少をみせている。第4は投資内容と目的の変化である。土地、機械、装置などの投資の比重が低下し、単なる生産能力の拡充よりも競争力及び労働力不足対応策としての近代化、合理化、新製品のための投資、更には福利厚生施設に対する比重が高まった。

第3-8表 中小企業の設備投資(製造業)

 このように37年度の中小企業の設備投資は前年度とほぼ同水準に留まったが、金融緩和による資金事情の好転と、景気回復の明るさが強まるに従って、中小企業の投資意欲は再び高まり始めた。38年2月に実施された同金融公庫の調査によると38年度の中小企業の投資計画は37年度より23%上回ることが報告されている。これは大企業の38年度の投資計画の対前年増加率7%を上回るものであり、近代化を急ぐ中小企業の投資意欲が極めて根強く、さかんであるかを示している。

 38年に入って、景気回復の影響は次第に中小企業にも及びつつあるが、一方、貿易自由化の促進、労働力の不足、大企業と中小企業の販売競争の激化など、中小企業をとりまく諸環境は厳しさを加えている。また物価安定上からも中小企業に対する近代化の要請は高まっている。このため中小企業は更に近代化を促進し、それによる生産性の向上をより一層図ることが大きな課題となってきた。中小企業者自身の努力と共に国民経済的視野に立ち、それが円滑に促進されるような方策が採られる必要があろう。


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