昭和38年

年次経済報告

先進国への道

経済企画庁


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先進国への道

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経済白書の発表に当って

 昭和38年度年次経済報告は、昭和37年度を中心とする経済動向を分析し、景気調整から回復への実態を明らかにすると共に、今後日本経済を一層先進国にふさわしい姿に発展させていくために解決しなければならない課題をとりあげたものであります。

 昭和37年度の日本経済は、上半期では36年9月に実施された景気調整策の影響で、工業生産や卸売物価が下落し、なだらかな景気調整過程をたどりました。しかしこの間に、国際収支は著しく改善し、37年夏には均衡を取り戻したため、10月には景気調整策が解除され、その後景気は緩やかに回復を始めました。過去の景気調整期と比較しましても、今回は生産の低下、卸売物価の下落、雇用の停滞などはいずれも小幅で、景気調整の影響を比較的軽微にやめることができました。これは海外景気が好転したこと、調整に伴う各種の摩擦を和らげるための諸政策が弾力的に行われたことなど、いろいろな原因によるものと考えられます。しかし、その反面、景気調整期にもかかわらず消費者物価が上昇を続け、また景気回復の初期に経常収支が赤字となるなどの問題もあります。これらの点にも、十分注意しつつ、安定的な経済の回復が望まれるのであります。

 しかし、我々の課題は、単に景気の回復を図ることだけには止まりません。日本経済は引き続く高成長によって、経済規模も先進国に近づき、IMF8条国への移行、OECDへの加盟など今後世界経済との関係も一段と密接化してまいりますから、封鎖的な経済体制の弊を取り去り、一層国際社会の一員としてふさわしい姿を整えていく必要があります。そのためには経済のたち遅れた部面を改善し、ひずみを是正するなど多くの面で地固めを行っていくことが大切であります。

 本年度の報告は、この点の分析に特に力点をおいております。この長期的な課題の解決のためには政府としても、消費者物価の安定、社会資本の拡充、生活環境施設の改善、社会保障の充実等に一層努力をなし、国民全体の協力によって繁栄の道を歩み続けたいと祈念しております。

昭和38年7月16日 宮沢 喜一 ( 経済企画庁長官 )


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