昭和37年
年次経済報告
景気循環の変ぼう
経済企画庁
昭和36年度の日本経済
国民生活
概況
昭和36年度の所得、消費は、名目では近年にない顕著な増加となった。しかし消費者物価の上昇が特に激しいため、実質的な所得、消費の増加率は、ここ数年の伸び率とほとんど差がなかった。また設備投資の強成長持続によって、国民総支出に占める個人消費の割合は前年に引き続き低下した。
国民各層の生活をみると、物価騰貴が所得増加に好影響を与えた経営者、個人業主、農家等の所得消費の伸びが大きかったが、都市勤労者は物価騰貴の影響で実質所得増加率は前年よりも低くまた年金生活者等の低額所得層の生活も物価高騰によりかなり影響を受けたものと思われる。一方生活保護世帯は保護基準の引き上げによってかなりの改善がみられた。
貯蓄率は物価騰貴の中でも経営者、個人業主及び高所得勤労者層など所得増加率の高い分野で引き続き増加したが、低所得勤労者層では貯蓄率の低下がみられた。
消費の内容をみると、都市では耐久消費財の購入が再び増勢をつよめ、特に農村における耐久消費財購入の増加は前年度に続いて目ざましく、これが農家消費の高上昇を支える1つの要因となった。
一方これまで最も遅れていた住宅問題も引き続く土地価格の暴騰、建築費の昂騰等に阻まれて大きな前進をみせるに至らず、また上下水道、環境衛生等の生活環境諸施設や交通難等公共投資の立ち遅れが一層目立つようになった。
以下36年度の国民生活の特徴をみよう。