昭和37年
年次経済報告
景気循環の変ぼう
経済企画庁
昭和36年度の日本経済
労働
景気調整策実施後の賃金の動向
好調であった賃金も、37年に入ってからは景気調整の影響もあって、さすがに増勢は鈍ってきている。定期給与の上昇テンポは労働時間の減少などを反映してかなり鈍化し、上昇率としては年度上期中、年率14~15%であったのがほぼ半減している。「景気調整下の労働実態調査」によってみても、企業はベースアップ率の圧縮をはじめとして賃金調整策を実施しはじめていることは明らかであり、その結果は37年の春季闘争に既に現れている。いぜんとして続く若年層を中心とする求人難に加えて、消費者物価の高騰も続いているため、労組はいずれも前年を上回る5,000円の大幅賃上げを要求したが、景気調整の影響を反映して大きな波乱もなく妥結に至り、消費者物価の前年比9%の大幅上昇は続いたが、賃上げ額は約2,500円で36年春をかなり下回るに至った。中小企業や相対的に景気のよい金属、機械関係では前年に匹敵する賃上げが実施されたが、大勢としては賃上げ率は、6年の14%を下回って11%となっている。求人難を反映して著しく上昇を強めてきた初任給についても、上昇率には頭打ちの様相がみえている。「景気調整下の労働実態調査」によれば、37年4月の初任給の上昇率は、中学、高校いずれも36年の上昇率を1ポイント以上下回っている。
消費者物価は引き続き上昇する一方、賃金は景気調整の影響で次第に上昇が鈍化してきているため、実質賃金の上昇率はかなり鈍ってきている。このように景気調整の賃金面への影響は次第に波及してきているが、「景気調整下の労働実態調査」によれば、夏季ボーナスの減額を予想している企業が44%に及んでいる。定期給与、特に基準内給与の大幅上昇によって賃金が次第に硬直性を増している反面で、臨時給与が調整機能をより強くもたされるに至っているので、今後の推移が注目されるところである。