昭和37年
年次経済報告
景気循環の変ぼう
経済企画庁
昭和36年度の日本経済
中小企業
中小企業の経営
利益率の低下
大蔵省調べの法人企業統計によって中小企業(全産業資本金200~999万円)の収益状況をみると、売上高の増加率(前年同期比)は1~3月4%減、4~6月11%増、7~9月20%増と増勢をたどったが、10~12月には9%増に鈍化している。それに伴って利益率も 第3-10表 にみるように低下傾向を示し、10~12月には前年同期を下回るに至った。
また、中小企業庁調べでみても採算悪化の産地数割合は1~3月22%、4~6月17%、7~9月23‰ 10~12月30%と増加しているし、前掲表で明らかなように、利益率の低下した企業割合も増加している。この利益率低下の要因をみると、経費の増加によるものが8割弱に達し支払い利息の増加と共に、その割合は漸次高まってきている。
つまり、労働力不足によって拍車をかけられた人件費の増嵩や、手形受取率の増大、サイトの長期化に伴う割引金利の増加などが、受注の減少と重なって、中小企業の収益力を低下させているとみられよう。
小零細企業の経営状況
前記中小企業金融公庫の調査は、その貸し付け先企業を対象とし、卸小売業をふくんでいないし、大蔵省法人企業統計も資本金200万円以上なので、ここで卸小売業を中心とした小零細企業の経営状況に触れておこう。
国民金融公庫調べによって従業員規模別の売上高の伸び率をみると( 第3-11表 )、全体では30人を境にして格段の開きがみられる。また全体としては、1~9人規模と10~29人規模の伸び率は、ほぼ同率であるが、製造業、卸、小売業、サービス業とも1~9人という零細企業の伸び率が、相対的にかなり低いことが特徴的である。
36年下期の売上高が前年同期より増加している企業数割合は、製造業59%(前年同期66%)、卸売業70%(75%)、小売業61%(62%)、サービス業53%(50%)で、全体としては60%であるが、35年下期(63%)より低まっているから、売上高の増勢は幾分鈍化したとみられよう。
一方、売上高に対する営業利益の割合をみると、35年下期には10%以下のものが全業種で約3割あったが、36年下期には12%に減少し、10%を越えるものの割合が増加している。これは消費支出の増加がまだ36年では衰えていないためといえよう。しかし、金融引き締めの影響はこれら小零細企業にも資金繰りの悪化を招いている。資金繰りが苦しいというものは前年下期には全体で4%程度であったのが約2割に増加している。このような小零細企業の資金繰り悪化の原因として、代金回収不良(33%)が最も多いのに次いで、設備買い入れによるものが30%を占めていることが注目される。