昭和37年

年次経済報告

景気循環の変ぼう

経済企画庁


[次節] [目次] [年次リスト]

昭和36年度の日本経済

貿易

 3年続きの繁栄を謳歌した我が国経済も、その拡大テンポが速すぎたために、36年度はついに国際収支の大幅赤字を招来した。年度間の赤字額は総合収支で436百万ドルに達したが、これは次のような事情に基づくものであった。まず第1は、輸入が急増したことである。国内経済の活況に伴って、原燃料の増大が著しかったほか、盛んな設備投資を反映して、機械類の輸入も大幅に増加した。第2に、輸出が停滞したことである。輸出は、昭和35年秋以降横ばい状態となり、この傾向は、36年末まで持続した。そのほか貿易外経常収支の赤字幅が拡大したこと、資本収支の黒字幅が前年度より縮小したことも、36年度の赤字幅を大きくした要因であった。

 国際収支の赤字が特に大幅であったのは36年5月から10月にかけての間であり、この間の赤字累積額は529百万ドルに達している。このような情勢から、36年9月には、国際収支改善対策が打ち出され、これを境に我が国経済は景気調整への道をたどるに至った。調整策の浸透につれて、国際収支の赤字も36年末ごろからは漸次縮小の方向に向かった。

 国際収支が改善に向かった第1の原因は、輸入の減少である。調整策によって国内の生産動向が落ち着いたのに伴い、輸入は原燃料を中心に減少に転じた。第2に、輸出が漸増しはじめたことである。これは対米輸出が増勢を持続し、また36年はじめから停滞を続けていた東南アジア向け、大洋州向けなどの輸出も年末にかけて上向きに転じたからである。なお緊急対策として、アメリカ市中銀行から年度内に合計233百万ドルの特別借り入れを行ったことも国際収支困難を切りぬけるための役割を果たした。さらにIMFからは305百万ドルのスタンド・バイ・クレジットを受けた。

 輸入の平静化、輸出の漸増という傾向は、37年に入っても持続しており、貿易為替収支も、季節修正値では、年度末からほぼ均衡を回復するに至った。

外国為替収支

 36年度の国際収支は、総合収支で436百万ドルの赤字であり、34年度の 387 百万ドル黒字、36年度の636百万ドル黒字に比べて大幅な悪化を示した。

 貿易収支が前年度の3百万ドルの黒字から864百万ドルの赤字に転じたこと、貿易外収支が66百万ドル赤字幅を拡大したこと、資本収支も、アメリカ市中銀行からの特別借り入れ233百万ドルがあったにもかかわらず、黒字幅が前年度より220百万ドル縮小したという事情が重なったためである。この結果、外貨準備高は、36年3月末の1,997百万ドルから37年3月末は1,561百万ドルとなった。

 年度間の推移をみると総合収支の赤字が特に大幅であったのは、5月から10月にかけての間であった。経常収支は既に36年1月から赤字に転じ、毎月大幅な赤字を続けていたが、短期資本の流入が大きかったために、総合収支では黒字を続けていた。ところが5月になると、輸入規模が一段と拡大して貿易収支の赤字が月1億ドルを、越えるようになった上に、資本収支の黒字幅も短期資本の流入が減少したために著しく小幅となり、総合収支は赤字に転じるに至った。5月から10月にかけての赤字合計は529百万ドルに達している。ここに至って、9月に国際収支改善対策が打ち出され、総合収支も、漸次改善の方向に向かった。

 即ち輸入が減少に転じ、一方輸出も11月ごろから漸次増大しはじめた。また、アメリカ市中銀行からの特別借り入れが行われたことも、国際収支の逆調を緩和するのに役立ち、36年末ごろから、総合収支尻は、従来の赤字累積傾向から脱却した。

第1-1表 外国為替収支

第1-2図 経常収支の推移


[次節] [目次] [年次リスト]