昭和34年
年次経済報告
速やかな景気回復と今後の課題
経済企画庁
各論
労働
むすび
前述したように今次景気後退の雇用賃金への影響は比較的軽微に終わり、景気の回復とともに次第に好転している。また長期的には雇用構造の近代化も進んでいる。しかし石炭産業の合理化はなお今後の問題として残されており、駐留軍労務者の整理や、技術革新による産業構造の変化に伴う離職者が景気動向とは無関係に今後も発生することが予想される。これらの短期間に発生する離職者に対しては住宅の確保、失業対策事業の軌道的な実施、職業斡旋の強化、職業再訓練等を通じて失業期間を最短に縮めるとともに、再就職時の労働条件の低下を防止することが必要であろう。
また、離職、再就職の経路を通じて漸次労働条件の低下をきたし、職安登録日雇に沈殿するおそれのある臨時工や中小企業の高令労働者層には社会的保障を強化しながら、産業の新しい労働需要に対応するように職業の再訓練を実施するとともに、臨時工の本工化を促進することが必要であろう。
さらに今次の一循環を通じて著しく膨張した小企業の低賃金労働者は、今後多就業貧困世帯増大の基盤となるおそれがあるので、中小企業についても設備、経営の全般にわたる近代化、新しい技術に対応する技術訓練の援助等を通じて労働生産性を上げ、最低賃金制とあいまって賃金を改善していくことが最も重要な方向といえるであろう。最近における若年低賃金労働に対する需給基調に若干の変化があらわれていることはこのような施策を推進する好機が到来したことを示すものであろう。