昭和32年
年次経済報告
速すぎた拡大とその反省
経済企画庁
各論
建設
活況を呈した建築活動
昭和31年度における建築投資は、30年度後半から活発になってきた動きに、産業用設備投資の盛行に伴う工場建築投資の急上昇、さらには住宅投資の好調とに支えられて近来にない大幅な増大を示した。すなわち、着工延べ面積は12714千坪で前年度より20%増、工事費予定額にして4,065億円と30%の増加をみせ、朝鮮動乱以来最高の水準を示した。
このように活発な動きを示した31年度の建築投資の内容をまず建築主別にみると、国及び地方公共団体の発注はほとんど横ばいに推移したが、民間建築は大幅に増大し、なかでも法人発注はめざましく伸び、延べ面積で36%、工事費予算額で57%の増加をみせた。また構造別では木造が延べ面積で13%増であったのに対し、鉄筋コンクリート造38%、鉄骨造72%、その他37%と不燃建築の増加が目立ち、このうち鉱工業用建築が鉄骨造増加の80%、鉄筋コンクリート造でもその増加の40%近くを占めていることから、民間建築、なかんづく工場建築投資増大の特徴をみることができる。
先に述べたように31年度の建築投資は工場建築の増大と住宅投資の好調に支えられたのであるが、用途別に着工延べ面積をみると、産業用建築ではサービス業用19%、商業用12%の増加に対して鉱工業用建築の伸びはめざましく65%の増加をみせ、工事費予定額では倍増して、この部門における設備投資の増大を反映し、工場の新設が近来にない規模で行われたことを裏書きしている。一方住宅建設については、延べ面積で居住専用が16%増、産業併用が10%増と前年度に引き続き依然増加し、新築戸数は約40万戸と推定され前年度より3万戸の増加を示し、これに増築戸数を加えると、当初の43万戸の建設計画はほぼ達成せられたものと考えられる。
これを年間を通じてみると、上半期における建築投資の増加は住宅建設による影響が大きく、下半期の増大は工場建築によるところが大きかった。すなわち、住宅投資は31年7~9月期をピークとして下り坂となり、延べ面積の増加率では前年同期に比して5%前後となってきたが、これに比べると工場建築投資は堅調な推移を示して32年度に引き継がれた。