昭和31年
年次経済報告
経済企画庁
建設
新規建設活動の概況
昭和30年における新規建設活動推計額は、 第51表 にみるごとく約9,030億円である。この推計は、財政支出関係については予算額、または事業計画、公共事業関係については資金計画、建築関係については工事費予定額より推計したものであり、建築関係を除けば次年度への繰越や、前年度よりの繰込などが考慮されていないから、必ずしも実積とは一致しない点に注意を要する。それ故最近の新規建設活動推計額をみると、29年度で減退し、30年度ではやや回復しているが29年度は28年度からの繰込みが多かったと考えられるので実際には最近3ヵ年はほぼ横ばいで毎年9,000億円程度の実積を維持しているものといえよう。
しかしながら、これを部門別にみると大きな相違がある。30年度においては建築部門が前年に比して10%の伸びを示しているのに反し、公共事業は28年度を頂点として、以降年々事業を縮小している。電源開発事業も水力開発は峠を越して漸減している。また安全保障諸費の支出による事業は、30年度においては営繕関係工事を残すのみで、道路、港湾等の土木工事は従来の後始末程度であったので、防衛関係工事も減少している。つまり公共事業、電源開発(水力開発)、防衛関係工事などの事業量が縮小したにもかかわらず、建築活動の活況に支えられて、新規建設活動は前年並みであったとみられる。
また30年度の新規建設活動の動きを時期的にみると、上半期においては予算成立の遅延と前年から続いた民間建築投資の停滞のために極めて不振であったが、下半期に入ると30年度予算による事業が集中し、加えて民間建築投資も産業設備投資の活発化に伴って急激に上昇したため好調に向った。ことに31年に入ってからの上昇は著しく、それも建築部門において目立った。