昭和30年
年次経済報告
経済企画庁
建設
むずび
昭和29年度の建設活動については以上の通りであるが、日本経済の現状から建設部門の問題として、次の二点が考えられる。
第一に、公共建設投資は建設投資全体の約3分の2を占め、国土の開発保全、公益事業施設の整備、住生活の確保など経済基盤育成の目的を有しているが、日本経済発展のためにこれらの公共建設投資と他の投資との均衡をいかにはかるか、また公共建設投資全体の投資効率をいかに高めるかが問題であろう。例えば戦後災害が激増し、公共事業費(国費分のみ)に占める災害復旧費の比率は、昭和1-10年では平均1割、11-20年では平均3割、21-29年では平均4割と次第に増加してきて、一般公共事業費を圧迫している。このような条件のなかで国土の保全と開発をいかに調整するかが問題であろう。
第二に、以上のような要請にもかかわらず、「総説」及び「労働」の項で述べられたように、失業者吸収の面から建設活動に期待される面も少なくない。こうした問題にあたって、公共建設の一部を事業種類としても、地域的にも弾力性のあるものとする一方、その運用と事業内容に十分の配慮が必要とされるであろう。