昭和29年

年次経済報告

―地固めの時―

経済企画庁


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各論

財政

昭和28年度予算の性格

予算の規模

戦後の我が国財政は逐年膨張を続けてきた。これを一般会計予算の規模についてみると、25年度に若干の減少をみたほかは、毎年かなりの増加を示し、28年度には遂に1兆272億円に達した。また、これを物価指数で換算した実質額規模でみても、24年度の安定計画実施以後縮小傾向にあったものが、27年度の補正を契機に拡大の方向に転じ、28年度も引き続き若干の増大を示した。ただ国民所得に対する比率では、所得の著しい増大のために26年度以降ほぼ同水準に止まっている。

第42表 一般会計予算規模の比較

歳出

かかる規模の予算の内容をみると 第59図 のごとくであり、以下の諸点が注目される。

第59図 一般会計歳出予算主要経費別構成累年比較

(1)社会労働関係費、公共事業費、地方財政費等は前年度に引き続き増加を示し、しかも全体のなかで大きな比重を占めている。これらの経費のうち、社会労働関係費では新たに支出されることとなった旧軍人等恩給費が、公共事業費では相ついで発生した災害に対する復旧費がそれぞれ多額に上っている。また地方財政費の増大は後にみるごとき地方財政の膨張、その自主的財源の貧困を反映したものである。

(2)27年度に独立の回復に伴って増大した防衛関係費は、28年度には若干減少した。ただし前年度からの繰越が巨額に上ったこと、予算外の債務負担行為が認めれたこと等を併せ考えれば、実質的には前年度を上回る額になる。

(3)一般会計からの出資及び投資は26年度以降急速に減少している。もっともこれはインベントリー・ファイナンスが、27年度には大幅に、28年度には全額がそれぞれ削減されたことによるもので、その他の出投資額はほぼ前年度と同水準にあり、また一般会計外からの投資を含めた財政投資の総額ではむしろ毎年かなり増大している。

次に予算を使途別にみた場合、一般会計歳出総額中に占める職員給与費の割合は、26年度8%、27年度9%、28年度11%と次第に増大している。28年度は前年度に比し286億円増加で、これに特別会計及び政府機関を加えるとその増加額は780億円に及ぶ。さらに人件費に向かう部分が多い公共事業費、地方財政費等が前述のごとくかなり増額しているので、28年度財政における人件費的支出は前年度に比し相当増加したものと思われる。

以上のごとく経費配分の面では、総体に網羅的で、前年度予算の繰越分を含め実質的にみるとほとんど大部分の費目が増額されており、総花的な性格が強い。なかんずく社会労働関係費、地方財政費、公共事業費あるいは人件費等零細に分割されるものの増加が大きく、特に一般会計において消費的色彩の濃い経費の増大が著しい。

歳入

このように増大した経費は、いかに賄われたであろうか。次に歳入面をみよう。一般会計では戦後の各年と同じく租税収入が大宗であるが、ただ税種目の構成では相対的に間接税の比率が増大傾向にある。これは27年以降の消費水準の上昇で消費税の増収が可能となったことにもよるが、一方直接税の負担がかなり高率でありその軽減合理化の要請に基づいて減税が実施されたためでもある。(28年度の税法上の減税額は1,052億円)このように一般会計の財源は主として租税等によったが、28年度の財源調達で見落とすことのできないのは、財政投資関係資金のそれである。すなわち前年度の補正予算の際に採用された蓄積資金の放出(計画額556億円)を引き続き行うとともに、さらに減税国債、公社債などの公債を新たに発行(計画額360億円)したことである。かくして27年度補正予算において従来の均衡方式を脱した財政は、28年度において財源調達の面でより積極的な方策がおし進められたのである。

収支尻

右にみてきたような予算の収支を反映して28年度の予算構造上の財政資金対民間収支は628億円の撤布超過となり、国際収支の反映である外国為替資金特別会計を除くと、実に1,492億円の撤布超過がみこまれたのである。従って予算の実行に伴い国民経済にある程度のインフレ的影響をもつものと予想された。しかるに年度中の実際の財政収支は逆に949億円に及ぶ大幅の引揚超過となった。では何故かかる開きを生じたのであろうか。次にこのような結果を示した財政収支を検討してみよう。


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