昭和29年

年次経済報告

―地固めの時―

経済企画庁


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各論

建設

建設投資の今後の問題

こうした建設投資の増大は、建設工事の効率化という点で多くの好結果をもたらしていることはもちろんであるが、しかしまだ幾多の問題を残している。例えば、最近電源開発が次第に奥地に入り、大規模化したのに工期を短縮して経済ベースにのせうるようになったのは、ひとえに機械化のたまものといえる。すなわち、昭和13~16年当時と最近建設のダム式発電所の建設費についてみると、 ①ダム、水路費の比率が、機械化によって最近のものは2、3割方減じていること、 ②金利が増大したにもかかわらず建設利息は工期の短縮によってほとんど変化をみせていないこと、 ③また資材費とキロワット当たり建設費の関係からみれば、前者の上昇率に対し、後者の上昇率は設計技術の進歩もあるが3分の2程度であることなどから、建設工事の機械化の効果を推測し得るのであるが、一方で、 ①一般的に建設業の資本不足により機械化がなお不十分であること、 ②建設機械ことに輸入機械に対する不馴れなどから機械を操作しうる熟練工が不足していること、 ③建設機械が国産化の過程にあるため性能の低いものがあること、などの面では問題が残されている。また、公共事業についても、補修的工事を別として新設工事には総花的傾向が強いために投資効果が薄い点が指摘されている。すなわち、一ヶ所一年当たりの工事費が少なく、工期が長期にわたるために、計画の完成前に災害に見舞われたり、効率的な機械化ができないばかりでなく、建設業の機械化の障害ともなっていると考えられる。しかしその反面では公共事業の大規模化、機械化は現場雇用拡大の鈍化という社会的問題に当面せざるを得ないであろう。


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