海外経済報告(平成10年10月四半期報)

参考図表

概観

1.主要国の経済動向をみると(図1、図2)、アメリカの景気は拡大しているものの、株価下落等により経済の先行きに対する不透明感がみられはじめている。ヨーロッパの景気は、総じて拡大している。アジアの景気は、後退色がさらに強まっている。

アメリカでは、実質GDP(前期比年率)は98年1~3月期5.5%増の後、4~6月期は1.8%増となり、景気は拡大しているものの、株価下落等により経済の先行きに対する不透明感がみられはじめている。中南米の景気は、メキシコで景気の拡大テンポが鈍化し、ブラジルで減速している。

ヨーロッパでは、ドイツの景気は、拡大している(4~6月期実質GDP前期比年率0.4%増)。フランスでは、景気は拡大している(同2.8%増)。イギリスでは、景気の拡大テンポは緩やかになっている(同2.0%増)。イタリアでは、景気は緩やかに改善している(同1.7%増)。中・東ヨーロッパの景気は、総じて拡大を続けている。ロシアでは、景気は後退している。

アジアでは、中国の景気の拡大テンポは鈍化している。韓国では、景気は後退している。アセアンをみると、インドネシア、タイ、マレイシア、フィリピンともに景気は後退している。

2.国際金融・商品の動向をみると、7~9月期の米ドルは、総じて減価した(図3)。その他通貨では、中南米など一部新興諸国の通貨が総じて減価した。一方、アジア通貨は総じて安定した動きとなっている。国際商品市況は、7月以降8月末まで下落基調で推移した後、9月初めに上昇し、その後はほぼ横ばいで推移した。原油価格(北海ブレント・スポット価格)は、産油国による減産の効果が表れ、全体として強含んだ。

(備考)

本報告では、北米、西ヨーロッパ諸国、オーストラリアの指標の変化率は、特に断りのない限り四半期データは季節調整値前期比年率、月次データは同前月比である。また、中南米、中・東ヨーロッパ、ロシア、アジア諸国の指標は、前年同期(月)比である。

1 南北アメリカ アメリカ、利下げ

アメリカ:景気は拡大しているものの、株価下落等により経済の先行きに対する不透明感がみられはじめている。雇用は拡大し、物価は安定している。

アメリカでは、実質GDP(前期比年率)は、1~3月期5.5%増の後、4~6月期は1.8%増となり、景気は拡大しているものの、株価下落等により経済の先行きに対する不透明感がみられはじめている。個人消費は、4~6月期6.1%増、7月前月比年率3.5%減の後、8月同6.2%増と増加している。設備投資は、4~6月期12.8%増となった。非軍需資本財受注(航空機・同部品を除く)は、7月前月比1.6%減となった後、8月は同2.4%増と増加している。住宅投資は、4~6月期15.0%増と増加した。住宅着工件数は8月前月比5.5%減と減少しているものの、引き続き高水準にある。在庫投資は、4~6月期増加率寄与度マイナス2.7%と、マイナスに転じた。

鉱工業生産は、このところ伸びに鈍化がみられる。雇用は、拡大している。失業率も低水準で推移している。物価は、安定した動きとなっている。

経常収支赤字は、4~6月期565億ドルと前期から拡大し、GDP比でも2.7%とマイナス幅が拡大した。その後、7月の財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は209億ドルと、前月から4億ドル拡大した。

金融面の動向をみると、9月29日に連邦公開市場委員会(FOMC)では、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.25%引き下げ、5.25%とした。7月から9月の動向は、短期金利(TB3カ月物)、長期金利(国債30年物)とも、総じて低下した。株価(ダウ平均)は、7月前半は総じて上昇し7月半ばには最高値を更新したが、7月後半から8月にかけては総じて下落し、特に8月末頃は大幅に下落した。その後9月は上下しながらも、やや上昇した(TB3カ月物利回り9月4.73%(6月5.11%)、国債30年物利回り9月5.20%(6月5.70%)、NYダウ工業株平均9月7897.54ドル(6月比-11.00%))。マネーサプライ増加率(97年10~12月期対比年率)をみると、M2は8月7.2%となっている。

カナダ:景気は拡大しているものの、やや減速した。失業率は低下している。

カナダでは、実質GDP(前期比年率)は、98年1~3月期3.4%増の後、4~6月期1.8%増となり、引き続き景気は拡大しているものの、やや減速した。個人消費は、98年4~6月期5.5%増と引き続き拡大している。民間投資では、住宅投資は、4~6月期6.4%減少したが、設備投資は、4~6月期11.5%増加した。在庫投資は、4~6月期の実質GDP成長率への寄与度は在庫調整が進んだ結果マイナス1.9%となった。

生産は98年6月前月比0.2%減、7月同1.4%減となった。失業率はこのところ低下傾向にあり、8月は8.3%となった。物価は安定しており、消費者物価上昇率は、7月前年同月比1.0%、8月同0.8%に留まっている。経常収支赤字は、4~6月期42.3億加ドル(GDP比1.9%)と、赤字幅はやや縮小した。財の貿易収支黒字(国際収支ベース)は、7月15.5億加ドルとやや拡大した。

金融面の動向をみると、カナダ銀行は、98年8月下旬に公定歩合を1.0%引き上げ、6.0%としたが、9月下旬には0.25%引き下げ、5.75%とした。

中南米:メキシコの景気は拡大テンポが鈍化している。失業率は低水準で推移している。経常収支赤字は拡大基調にある。ブラジルの景気は減速している。失業率は上昇している。

メキシコでは、実質GDP(前年同期比)は、98年1~3月期6.6%増、4~6月期4.3%増となり、景気拡大テンポが鈍化している。鉱工業生産は98年4~6月期前年同期比5.3%増の後、7月前年同月比5.3%増となった。

失業率は低水準で推移しており、98年8月3.0%となった。物価上昇率は高水準で推移しており、消費者物価上昇率は、98年8月前年同月比15.5%となった。経常収支赤字は、98年4~6月期は35.4億ドルと拡大基調にある。貿易収支は98年8月6.9億ドルの赤字(暫定値)となった。

金融面の動向をみると、アジア危機やロシア経済の混乱等の影響から、為替と株価は下落傾向をみせており、ペソの対ドルレートは、98年9月30日現在、6月末比で12.1%の減価となった。また、株価(IPC指数)は、同16.7%の下落となった。

ブラジルでは、実質GDP(前年同期比)は、97年10~12月期2.2%増、98年1~3月期1.1%増となり、景気は減速している。鉱工業生産は98年4~6月期前年同期比0.2%増の後、7月前年同月比0.4%減となった。

失業率は年初来上昇傾向にあり、98年7月8.0%となった。消費者物価上昇率は、98年8月前年同月比3.6%と落ち着いている。経常収支赤字は98年4~6月期82.2億ドルの後、7月20.0億ドル、8月25.3億ドルとなった。

金融面の動向をみると、アジア危機やロシア経済の混乱等の影響を受け、通貨切下げ不安や外国資本流出懸念などから株価(BOVESPA指数)は下落しており、98年9月30日現在、6月末比で31.9%の下落となった。

2 ヨーロッパ ドイツ、政権交代

ドイツ:景気は拡大している。機械設備投資は増加しており、生産は拡大している。失業率は高水準ながらもやや低下している。物価は安定している。

ドイツでは、景気は拡大している。実質GDPは、4月の付加価値税引上げの影響などから、98年1~3月期前期比年率5.9%増(前年同期比4.3%増)の後、4~6月期同0.4%増(同1.7%増)となった。消費は、個人消費が1~3月期前期比年率3.5%増、4~6月期同2.7%減となり、小売売上数量が4~6月期前期比2.8%減、7月前月比3.7%増、乗用車新規登録台数は7月前年同月比1.0%減、8月同5.2%増となるなど、持ち直している。機械設備投資は、1~3月期前期比年率33.2%増、4~6月期同9.9%減と、ならしてみると増加している。建設投資は、4~6月期前期比年率21.2%減となったものの、新規建設受注数量が4~6月期前期比3.6%増、7月前月比7.3%増となるなど、持ち直しの兆しがみられる。在庫投資のGDP寄与度は、4~6月期は前期比年率4.8%となった。

鉱工業生産は、拡大しており、6月前月比1.2%減、7月同3.8%増となった。製造業新規受注は、7月前月比0.8%増、8月同0.5%増となった。製造業稼働率(旧西独地域)は、3月86.9%から6月87.2%とやや上昇した。

失業率は、高水準ながらもやや低下しており、7月10.9%、8月10.9%、9月10.7%となった。失業者数(季調値)は、9月415.3万人となった。時間あたり賃金上昇率は、7月前年同月比1.5%となった。物価は、消費者物価上昇率が、8月前年同月比0.8%、工業品生産者価格上昇率が、同▲0.8%と安定している。

経常収支は4~6月期27億マルクの黒字となった。輸出は7月前月比3.1%増、輸入は同1.0%減、貿易収支黒字は4~6月366億マルクから、7月は128億マルクと大幅な黒字が続いている。

金融面の動向をみると、9月には、短期金利(コール3か月物)は横ばい、長期金利(公債平均利回り)は低下した。マネーサプライ(M3:97年10~12月期対比年率)は、8月4.7%増となり、目標圏内で推移している(目標圏:3~6%)。

なお、9月27日に総選挙が行われ、82年から16年続いたコール政権に代わり、社会民主党が第一党となった。

フランス:景気は拡大している。生産、消費は拡大しており、設備投資は増加している。失業率は横ばいで推移している。物価は安定している。

フランスでは、98年4~6月期の実質GDPは、個人消費と設備投資が牽引役となり、前期比年率2.8%増となった。個人消費は、実質個人消費が4~6月期前期比年率4.3%増となるなど増加している。工業製品家計消費は、7月前月比4.5%増となった反動で、8月同3.0%減となった。消費者コンフィデンスは、このところ改善している。設備投資は、実質法人固定投資が4~6月期前期比年率7.5%増と増加している。4月に国立統計経済研究所(INSEE)が実施した経営者アンケートによると、98年の設備投資額(名目)は、9%増と見込まれている。

鉱工業生産(建設を除く)は、6月は前月比0.3%減、前年同月比5.3%増となった。経営者アンケート調査によると、受注状況は良好である。失業率は、97年7月をピークに低下してきたが、6月から3カ月連続で11.8%と横ばいで推移している。一方、8月の求職者数は、前月比1.1%増となった。

物価は、安定している。消費者物価上昇率は、8月前年同月比0.7%となった。中間財価格は、6月前年同月比0.7%低下と安定している。

経常収支は、1~3月期517億7500万フラン、4~6月期552億8200万フランの黒字、貿易収支は、4~6月期415億3400万フラン、7月140億7300万フランの黒字となった。

金融面の動向を見ると、短期金利は、安定して推移している。長期金利は、このところ低下している。マネーサプライ(M3)は、7月前年同月比4.5%増となった。

イギリス:景気拡大のテンポは緩やかになっている。個人消費も増加のテンポは緩やかになっている。失業率は低水準で推移している。物価は一時の騰勢は鈍化してきている。

イギリスでは、実質GDPが、98年1~3月期前期比年率2.2%増の後、4~6月期2.0%増となった。4~6月期の需要項目別の寄与度(市場価格ベース)を見ると、個人消費が0.5%成長に寄与している反面、固定投資はマイナス0.4%となった。

個人消費は、増加のテンポは緩やかになっている。実質個人消費が4~6月期前期比年率3.0%増となり、小売売上数量指数は8月前月比0.4%増となった。設備投資は、実質非住宅投資は1~3月期前期比年率14.0%増となり大幅に増加している。住宅投資は、1~3月期の実質住宅投資が前期比年率10.6%増となったが、住宅着工件数が4~6月前期比10.3%減となるなど、足元では鈍化している。生産は、鉱工業生産が6月前月比1.2%増(製造業生産は同0.5%増)、7月同0.1%増(製造業生産は同0.2%増)となった後、8月同0.3%減(製造業生産は同0.5%減)となるなど、鈍化している。失業率は、98年7月4.7%、8月4.6%と低水準で推移している。物価は、消費者物価上昇率が7月前年同月比3.5%、8月同3.3%(住宅ローン利払費を除いた消費者物価上昇率は、7月同2.6%、8月同2.5%)となるなど、一時の騰勢は鈍化してきている。

経常収支は1~3月期5億ポンドの赤字の後、4~6月期は6億ポンドの黒字となった。7月の貿易収支は、14.1億ポンドの赤字となり、赤字幅はやや拡大した。

金融面の動向を見ると、金利はこのところ長期・短期ともに低下している。マネーサプライ(M4)増加率は、7月前年同月比10.0%増、8月同8.8%増となった。

イタリア:景気は緩やかに改善している。設備投資は増加している。失業率は高水準で推移している。物価は安定している。

イタリアでは、4~6月期の実質GDPは、個人消費と設備投資が牽引役となり、前期比年率1.7%増となった。

個人消費は、実質個人消費が4~6月期前期比年率1.4%増、小売売上数量指数は6月前年同月比4.0%増となるなど、増加している。政府消費は、4~6月期前期比年率1.4%増となった。固定投資は、4~6月期同1.9%増となった。

生産は、このところ横ばいで推移している。鉱工業生産は、4~6月前期比0.2%減、7月前月比0.9%増(前年同月比1.6%増)となった。製造業稼働率は、1~3月期78.2%の後、4~6月期は79.5%と、やや上昇した。

失業率は、4月12.5%、7月11.9%と高水準で推移している。物価は、生計費上昇率が7月前年同月比1.8%、8月同1.9%、9月同1.8%と安定している。

経常収支は、4~6月期4.5兆リラの黒字、7月2.7兆リラの赤字となった。貿易収支は、4~6月期13.4兆リラの黒字となった。

中・東ヨーロッパ:ポーランド、ハンガリーでは景気は拡大している。チェッコでは景気は後退している。

ポーランドでは、実質GDPが98年1~3月期前年同期比6.5%増、4~6月期同5.3%増となり、景気は拡大を続けている。鉱工業生産は、7月前年同月比6.1%増、8月同6.1%増となった。失業率は、7月9.6%、8月9.5%と高水準ながら低下してきている。物価上昇率は、消費者物価上昇率で7月前年同月比11.9%、8月同11.3%と高水準ながら低下してきている。経常収支は、1~3月期18.9億ドル、4~6月期5.5億ドルの赤字と赤字幅が縮小した。

ハンガリーでは、実質GDPが98年1~3月期前年同期比4.5%増、4~6月期同5.1%増となり、景気は拡大している。鉱工業生産は、6月前年同月比14.2%増、7月同16.0%増となった。失業率は、7月9.2%、8月9.0%と低下している。物価上昇率は、消費者物価上昇率で7月前年同月比14.1%、8月同13.5%と高水準ながら低下してきている。経常収支は、1~3月期3.8億ドル、4~6月期5.2億ドルの赤字となり、赤字幅は拡大している。

チェッコでは、実質GDPが、98年1~3月期前年同期比0.9%減、4~6月期同2.4%減となり、景気は後退している。鉱工業生産は、6月前年同月比5.0%増、7月同6.1%増となった。失業率は、7月6.1%、8月6.4%と上昇している。物価上昇率は、97年央からの騰勢が鈍化し、消費者物価上昇率で8月前年同月比9.4%となった。経常収支は、1~3月期3.5億ドル、4~6月期1.1億ドルの赤字となり、赤字幅は縮小している。

ロシア:景気は後退している。物価は急騰している。

ロシアでは、実質GDPは、98年4~6月期前年同期比0.9%減、7月前年同月比4.5%減、8月同8.2%減となり、景気は後退している。鉱工業生産も、4~6月期前年同期比1.3%増の後、7月前年同月比9.4%減、8月同11.5%減と大幅に落ち込んでいる。個人消費は、実質民間消費で1~3月期前年同期比3.9%増の後、4~6月期同1.2%増と減少傾向にある。固定投資は、実質総固定投資(政府・民間)で1~3月期前年同期比6.9%減、4~6月期同6.0%減となった。失業率(ILO基準)は、3月末11.4%の後、6月末11.5%、8月末11.5%と横ばいで推移している。

物価は、消費者物価上昇率で8月前年同月比9.6%(前月比3.7%)、9月同52.3%(同38.4%)とルーブル切下げの影響を受け、急騰している。

非CISとの貿易収支(個人業者による「シャトル貿易」を含まない)黒字は、1~3月期36.8億ドル、4~6月47.0億ドルとなった。非CISへの輸出は、1~3月期前年同期比18.6%減の後、4~6月期同10.7%減となった。輸入は、1~3月期同26.0%増の後、4~6月期同7.4%増となった。

財政収支の赤字(国債の利払いを含まない)は、1~3月期3.6%(GDP比)の後、4~6月期4.2%となった。

金融面の動向を見ると、ルーブルは5月下旬よりドルなどに対して減価傾向が強まり、8月17日には実質的な切下げ措置がとられた。また、9月初めには目標相場圏を放棄、変動相場制へと移行した。

3 アジア等 アジア、景気後退色さらに強まる

中国:景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。固定資産投資は増勢を強めている。貿易収支は輸入の減少から大幅な黒字である。

香港:景気は後退している。物価上昇率は低下している。失業率は急速に上昇している。

中国では、実質GDPは、98年1~3月期前年同期比7.2%増の後、1~6月期同7.0%増となり、景気の拡大テンポは鈍化している。鉱工業生産(実質)は、7月前年同月比7.6%増の後、8月は同7.9%増となりやや回復した。

消費は、社会商品小売総額(消費財、実質)をみると、1~6月期前年同期比8.9%増となった。なお名目をみると、1~6月期前年同期比6.8%増の後、エアコンなど夏物商品の好調や食品、薬品などの洪水救援の需要が大きかったことから、7月前年同月比8.1%増、8月同9.3%増とこのところ回復している。固定資産投資(国有部門、名目)は、7月前年同月比22.8%増の後、8月同26.9%増と増勢を強めている。

物価は下落が続いている。消費者物価上昇率をみると、7月前年同月比1.4%下落の後、8月同1.4%下落している。また、小売物価上昇率も下落を続けており、7月前年同月比3.2%の下落、8月同3.3%の下落となっている。ただし、前月比でみると8月は食料品の上昇から消費者物価、小売物価とも上昇している。

貿易収支は、輸入の減少から大幅な黒字であり、4~6月期116.5億ドルの後、7月41.9億ドル、8月46.8億ドルとなった。輸出は、4~6月期前年同期比2.6%増の後、7月前年同月比3.6%増、8月同2.9%減と基調としては弱い。一方輸入は、4~6月期前年同期比1.8%増の後、7月前年同月比6.4%減、8月同1.7%減と低迷している。

金融面の動向をみると、マネーサプライ増加率(M2、期末残)は、7月前年同月比15.5%の後、8月同15.0%となった。人民元レートは、ドルに対してほぼ横ばいで推移している。外貨準備高は、7月末1,406億ドルとなっている。

香港では、実質GDPは1~3月期前年同期比2.8%減の後、4~6月期同5%減となり、景気は後退している。個人消費は、97年10~12月期前年同期比3.0%増の後、1~3月期は同2.5%減と減少に転じた。小売売上高は、4~6月期前年同期比15.3%減、7月前年同月比16.8%減と、衣料、自動車等を中心に大幅な減少が続いている。固定資本形成は10~12月期前年同期比13.8%増の後、1~3月期同2.3%減となった。物価は、消費者物価上昇率が4~6月期前年同期比4.1%の後、7月前年同月比2.7%、8月同2.0%となり、食料品の下落などから低下している。失業率は、4~6月期4.1%の後、7月4.8%、8月5.0%となり急速に上昇している。失業者数は小売、レストラン、建設部門などで多く、8月には17.5万人に達した。貿易収支赤字は、4~6月期45.1億ドルの後、7月5.2億ドル、8月0.9億ドルとなり赤字額は減少している。輸出は、4~6月期前年同期比3.1%減の後、7月前年同月比12.9%減、8月同8.1%減と減少幅は拡大した。一方輸入は、4~6月期前年同期比6.1%減の後、7月前年同月比18.5%減、8月同14.3%減と大幅な減少が続いている。なお、香港政府は98年の経済成長率見通しを、当初の3.5%から▲4%へと大幅に下方修正した(8月28日)。

韓国:景気は後退している。失業率は、大幅に上昇している。物価は、騰勢は鈍化している。貿易収支黒字は、輸入減少により大幅な黒字が続いている。

韓国では、景気は後退している。実質GDPは、98年1~3月期前年同期比3.9%減の後、4~6月期は同6.6%減となった。なお、4~6月期の成長率を内外需別にみると、内需寄与度は25.2%減となり、外需寄与度は18.6%増となった。民間最終消費は、98年1~3月期前年同期比10.6%減だったが、4~6月期は同12.9%減とさらに減少した。投資は、建設投資が98年4~6月期前年同期比13.2%減、設備投資は98年4~6月期同52.4%減、在庫投資は98年4~6月期同6.7%減といずれも大幅なマイナスとなった。

鉱工業生産は、98年4~6月期前年同期比11.7%減の後、7月は前年同月比12.9%減となった。製造業稼働率は、7月63.7%となった。

失業率は、98年4~6月期6.9%の後、7月は7.6%となり、失業者数は、7月は165.1万人で前年同月比246.8%と、大幅に増加している。物価は、騰勢は鈍化しており、消費者物価上昇率が98年7月前年同月比7.3%、8月同6.9%となった。生産者物価上昇率は98年7月前年同月比12.8%の後、8月は同11.8%となった。

国際収支をみると、輸出は減少しており、98年7月前年同月比13.9%減、8月は同10.8%減となった。輸入は更に大幅に減少しており、98年7月前年同月比43.9%減、8月は同37.5%減となった。結果として、貿易収支は98年7月30.7億ドル、8月は26.7億ドルと大幅な黒字となった。経常収支は98年6月32.4億ドルの黒字の後、7月は36.7億ドルの黒字となった。

金融面の動向を見ると、会社債収益率(期中平均)は、高金利状態が是正され98年8月12.4%と、前年とほぼ同水準に戻っている。通貨供給量(M2)の期中平均残高は、98年7月前年同月比19.7%増となっている。

対ドル・レートは経済構造改革への取り組みが評価され、9月29日現在1ドル=1372ウォンとほぼ安定的に推移している。

韓国は、外貨準備高は8月に451億ドルとなるなど危機を脱したが、実体経済の低迷が、健全な金融システムや効率的なコーポレートガバナンスを目指す構造改革への取組を妨げている。

台湾:景気の拡大テンポは鈍化している。

シンガポール: 景気は減速している。

台湾では、景気の拡大テンポは鈍化している。実質GDP成長率は、98年1~3月期前年同期比5.9%の後、98年4~6月期同5.2%となった。個人消費は、4~6月期前年同期比6.8%と、堅調な伸びを続けている。固定資本形成は、民間投資が4~6月期前年同期比19.8%と引き続き高い伸びとなり、4~6月期同7.7%となった。鉱工業生産は、鈍化傾向にあり、98年4~6月期前年同期比4.5%増の後、7月前年同月比2.4%増、8月には同4.6%増となっている。

物価は、消費者物価上昇率が、98年4~6月期前年同期比1.7%、7月前年同月比0.9%、8月同0.4%と低下している。卸売物価上昇率も、98年4~6月期前年同期比2.9%の後、7月前年同月比1.8%、8月同0.8%と低下している。

失業率は、98年半ばまで低下基調となっていたが、4~6月期2.5%の後、7月2.9%、8月3.1%とやや高まりがみられる。

貿易収支は、98年4~6月期13.5億ドルの黒字と小幅な黒字となった後、7月10.5億ドル、8月13.4億ドルとやや黒字幅が拡大している。輸出は98年4~6月期前年同期比7.7%減の後、7月前年同月比16.2%減、8月同1.2%増と減少傾向となっている。一方、輸入も98年4~6月期前年同期比6.9%減の後、7月前年同月比22.0%減、8月10.0%減と減少が続いている。

金融面の動向をみると、マネーサプライ(M2)増加率は、98年4~6月期前年同期比8.2%、7月前年同月比8.0%、8月同8.5%と緩やかな伸びが続いている。なお、中央銀行は、9月に公定歩合を5.25%から5.125%に引き下げた。

シンガポールでは、景気は減速している。実質GDPは、1~3月期前年同期比6.1%増の後、4~6月期同1.6%増となった。製造業生産は1~3月期前年同期比6.1%増、4~6月期同1.0%減の後、エレクトロニクス製品の不振などから7月は前年同月比6.2%減となっている。個人消費は1~3月期前年同期比5.4%増から4~6月期同2.3%増となった。小売販売額(名目)をみると1~3月期前年同期比12.2%減の後、4~6月期同6.8%減、7月前年同月比10.2%減と大幅な減少が続いている。固定資本形成は1~3月期前年同期比10.7%増の後、4~6月期同2.7%減となった。

物価は下落している。消費者物価上昇率は4~6月期前年同期比0.3%の後、7月前年同月比0.4%の下落、8月同0.8%の下落となった。

失業率(季節調整値)は上昇しており、3月2.2%の後、6月は2.3%と高まっている。貿易収支は輸入の大幅な減少から黒字が続いている。貿易収支黒字は4~6月期24.4億ドルの後、7月5.4億ドル、8月7.5億ドルとなった。輸出は、4~6月期前年同期比13.8%減の後、7月前年同月比16.6%減、8月同12.6%減となっている。一方輸入は、4~6月期前年同期比24.8%減の後、7月前年同月比28.8%減、8月同27.9%減と大幅な減少が続いている。経常収支黒字幅は、1~3月期の29.5億ドルから、4~6月期は46.1億ドルに拡大した。

金融面の動向をみると、マネーサプライ(M2)増加率は、6月前年同月比8.1%の後、

7月9.5%とこのところ伸びが高まっている。

アセアン:景気は後退している。物価は、インドネシアでは急騰している。貿易収支は、輸入の大幅なマイナスにより、黒字が続いている。

アセアン各国の動向をみると、インドネシアでは、景気は後退しており、実質GDP成長率は、98年1~3月期前年同期比7.9%減の後、4~6月期同16.5%減と大幅なマイナスとなった。物価は、消費者物価上昇率が、98年1~3月期前年同期比29.7%の後、98年4月~6月期前年同期比52.2%の後、7月前年同月比71.7%、8月同81.0%となり、急騰している。貿易収支(通関ベース)は、98年1~3月期53.1億ドルの黒字の後、4~6月期61.0億ドルの黒字となり、黒字幅は拡大した。輸出は98年1~3月期前年同期比0.9%増、4~6月期同8.6%減と、減少している。輸入は98年1~3月期前年同期比32.4%減、4~6月期同44.4%減と大幅に減少している。金融面では、金利は高水準で推移している。インドネシアは現在、ハビビ新大統領の下で経済再建に取り組んでいるが、政治的不安定性は、海外投資家の対インドネシア投資を踏み止まらせている。

タイでは、景気は後退している。製造業生産指数の動きをみると、98年1~3月期前年同期比16.9%減となった後、4~6月期同15.3%減、7月前年同月比14.0%減と大幅な減少が続いている。物価は、消費者物価上昇率が、98年4~6月期前年同期比10.3%の後、7~9月期同8.1%と低下している。貿易収支(通関ベース)は、98年1~3月期31.3億ドルの黒字から4~6月期26.0億ドルの黒字とやや黒字幅が縮小した。輸出は98年1~3月期前年同期比2.9%減の後、4~6月期同5.3%減、7月前年同月比3.8%減と減少が続いている。一方、輸入も98年1~3月期前年同期比39.8%減の後、4~6月期前年同期比38.2%減、7月前年同月比31.9%減と大幅な減少が続いている。経常収支黒字は、黒字幅がやや縮小し、98年1~3月期には42.1億ドルの黒字の後、4~6月期には28.1億ドルの黒字となった。

マレイシアでは、景気は後退しており、実質GDP成長率は、98年1~3月期前年同期比マイナス2.8%の後、98年4~6月期にはマイナス6.8%となった。鉱工業生産指数は、98年1~3月期前年同期比0.8%減の後、4~6月期同6.0%減、7月前年同月比8.0%減とマイナスの伸びが続いている。物価は、消費者物価上昇率が、98年4~6月期前年同期比5.7%の後、7月前年同月比5.8%、8月同5.6%とほぼ横ばいで推移している。貿易収支(通関ベース)は、黒字が拡大しており、98年1~3月期22.3億ドルの黒字の後、4~6月期34.4億ドルの黒字、7月9.8億ドルの黒字となった。輸出入とも減少しており、輸出は4~6月期前年同期比9.2%減、7月前年同月比13.1%減、輸入は4~6月期前年同期比33.1%減、7月前年同月比31.2%減となっている。金融面では、マネーサプライ(M2)の伸びは急速に鈍化している(98年8月前年同月比7.2%増)。中央銀行は、数度にわたり市場介入金利や法定準備率の引下げを行なっている。なお、9月1日より、非居住者の投機防止を目的とした資本取引規制が導入、さらに9月2日には固定相場制が導入された。

フィリピンでは、実質GDP成長率は、97年に5.1%増となった後、98年1~3月期前年同期比1.7%増、4~6月期同1.2%減と後退している。製造業生産指数は、98年1~3月期前年同期比7.1%増、4~6月期同2.1%減と低下した。物価は、消費者物価上昇率が、98年4~6月期前年同期比9.6%の後、7月前年同月比10.6%と上昇している。貿易収支(通関ベース)は、98年1~3月期12.2億ドルの赤字となった後、4~6月期は2.5億ドルの赤字となり、赤字幅は縮小している。輸出は、エレクトロニクス製品などが好調を維持しているものの、98年4~6月期は前年同期比14.4%増と、拡大幅にやや陰りが見られている。輸入は、98年4~6月期前年同期比17.8%減と、大幅に減少している。

インド:鉱工業生産や輸出が低水準で推移しており、景気の鈍化が続いている。物価上昇率は再び上昇している。貿易収支赤字は高水準となっている。

インドでは、実質GDPは、96年度(4~3月)前年度比7.5%増の後、97年度は天候不順による農業生産の不振と工業生産の伸びの鈍化から、同5.1%増と減速した。

鉱工業生産は、低水準の伸びで推移しており、98年1~3月期前年同期比5.5%増の後、4~6月期は同5.4%増となった。

物価は、97年を通じ上昇率が低下傾向にあったが、農産物を中心とする一次産品価格の上昇により、98年に入って再び上昇している。卸売物価上昇率は1~3月期前年同期比5.2%の後、4~6月期は同6.6%となった。消費者物価上昇率(工業労働者対象)は1~3月期前年同期比9.1%の後、4~6月期は同10.2%となった。

国際収支をみると、輸出(通関、ドル・ベース)は、98年1~3月期前年同期比3.2%減の後、4~6月期同10.4%減となった。輸入は、1~3月期前年同期比2.7%減の後、4~6月期同0.0%増となった。この結果、貿易収支赤字は1~3月期20.0億ドルと前期比横ばいとなった後、4~6月期は24.1億ドルと赤字幅がやや拡大した。

金融面の動向をみると、金利(TB91日物)(期中平均)は、98年1~3月期10.78%と上昇したが、金融緩和策等により4~6月期は9.01%とやや低下した。通貨供給量(M3、期末残高)は、98年6月前年同月比17.8%増の後、8月は同20.4%増となった。

景気の鈍化や核実験後の対インド投資に関する心理的冷え込み等から、ルピーの対ドル為替レートは減価が続いている。

オーストラリア:景気は拡大している。失業率はほぼ横ばいで推移している。消費者物価上昇率は落ち着いている。

オーストラリアでは、実質GDP成長率(平均ベース)は、98年1~3月期前期比年率5.0%増の後、4~6月期同3.1%増となり、景気は拡大している。

消費は、実質民間最終消費支出が、98年4~6月期前期比1.3%増と堅調に推移している。小売売上高は、98年7月前月比2.6%増の後、8月同0.8%減となった。投資は、実質民間設備投資が、98年1~3月期前期比2.0%減の後、4~6月期同3.8%減となった。非住宅建設投資は98年1~3月期に政府から民間へのガスパイプライン売却に伴う投資の増加という特殊要因により前期比60.3%増の後、98年4~6月期同29.3%減となった。また、民間住宅投資は、98年1~3月期前期比5.9%増の後、4~6月期同1.6%増となった。住宅建設許可件数は、98年7月前月比7.5%減の後、8月同6.4%減となった。

失業率は、98年7月8.3%の後8月は8.1%となり、このところほぼ横ばいで推移している。消費者物価上昇率は、98年4~6月期前年同期比0.7%と落ち着いている。経常収支は、98年4~6月期65.2億豪ドルと前期に比べて赤字幅が縮小した。財の輸出は、98年4~6月期前期比5.8%と大幅に増加したが、財の輸入も堅調な国内需要を反映して前期比2.6%と増加した。この結果、財の貿易収支は、98年4~6月期は15.6億豪ドルの赤字となった。サービス収支は2.4億豪ドルの赤字となった。

金融面の動向をみると、長期金利(10年物国債)は、8月末に5.9%となった後、このところやや低下している。オーストラリア・ドルは、98年9月28日現在、対米ドルで6月末比4.1%減価となった。

オーストラリア政府は、総選挙前の経済財政見通しを9月に発表し、98年度(98年7月~99年6月)のGDP成長率見通しを98年5月当初の3.0%から2.75%へ下方修正した。

4 国際金融・商品 ドル、減価

国際金融:ドルは、米株式市場の軟化や米金融緩和観測などから減価した。

国際商品:原油価格は、産油国による減産の効果が表れ、全体として強含んだ。

【国際金融】

98年7~9月期の米ドル(実効相場)は、総じて減価した。対円では、7月後半から8月前半にかけては日米景況感の差異などから増価し、8月半ばには約8年ぶりのドル高円安水準となったが、8月後半以降は8月末の大幅下落など米株式市場の軟化や米金融緩和観測の台頭などから総じて減価した。対マルクでは、これまでロシア金融危機が独経済に与える影響に対する懸念から増価してきたが、この影響が米経済に対しても大きいと認識されてきたこと、および上記米株式市場の軟化や米金融緩和観測の台頭などから減価した。(モルガン銀行発表の米ドル実効相場指数(1990=100)98年9月30日110.9、6月末比1.9%の減価)。内訳でみると、9月30日現在、対円では6月末比1.6%減価、対欧州通貨では対マルクで同7.7%減価、対ポンドで同1.9%減価、対仏フランでは同7.7%減価した。その他通貨では、中南米など一部新興諸国の通貨が総じて減価した。一方、アジア通貨は、フィリピン・ペソが減価基調で推移した他は、タイ・バーツやインドネシア・ルピアなどが対ドルなどで増価し、総じて安定した動きとなっている。

【国際商品市況】

国際商品価格全体では、CRB商品先物指数は、7月以降8月末まで下落基調で推移し77年10月以来の低水準となる195ポイント台を記録した後、9月始めに200台前半へ戻し、その後はほぼ横ばいで推移した。

商品別では、穀物は、豊作予測を受け、総じて弱含みで推移し、下落は9月に入るまで続いた。非鉄金属では、銅が特にアジアを中心とした需要減少を反映し、低水準で推移した。貴金属では、金価格はドル相場の動向を受けながらおおむね弱含みに推移したが、8月下旬以降はロシア通貨危機に端を発する世界的な金融市場の混乱のため、強含んだ。

【石油情勢】

原油価格(北海ブレント・スポット価格)の7月以降の動きをみると、6月下旬にOPEC(石油輸出国機構)総会で合意された減産の効果が表れ、8月まで11ドル台後半から12ドル台前半の間で底堅く推移した。その後9月に入り、8月の減産量が合意をおおむね遵守していることが確認され、また下旬にはハリケーンがメキシコ湾岸の精油所を通過すると見込まれたことなどから強含んだ。