海外経済報告(平成10年4月四半期報)
概観
1.主要国の経済動向をみると(図1、図2)、アメリカの景気は、拡大している。ヨーロッパの景気は、総じて拡大している。アジアの景気は、一部で後退している。
アメリカでは、実質GDP(前期比年率)は97年7~9月期 3.1%増の後、10~12月期には 3.7%増と拡大している。中南米の景気は、メキシコで拡大し、ブラジルで鈍化している。
ヨーロッパでは、ドイツの景気は、回復している(97年10~12月期実質GDP前期比年率 1.1%増)。フランスでは、景気は拡大している(同3.1%増)。イギリスでは、景気の拡大テンポはこのところ緩やかになってきている(同2.5%増)。イタリアでは、景気は緩やかに改善している(同 0.7%増)。なお欧州委員会は、3月25日、EU加盟国15か国のうち11か国を99年1月に開始される通貨統合への当初参加国に推薦した。中・東ヨーロッパの景気は、総じて拡大を続けている。ロシアでは、景気は緩やかに回復している。
アジアでは、中国の景気は拡大している。韓国では、景気は後退している。アセアンをみると、インドネシア、タイでは景気は後退している。
2.国際金融・商品の動向をみると、米ドル(実効相場)は、やや増価した(図3)。アジア通貨は、インドネシア・ルピアを除いてやや持ち直し、直近では小康状態。国際商品市況は、1月おおむね強含んだ後、2月から3月中旬にかけておおむね弱含みで推移し、3月下旬にかけて強含んだ。原油価格(北海ブレント・スポット価格)は、1月から3月中旬にかけて弱含んだ後、3月下旬には強含みでの推移となった。
(備考)
本報告では、北米、西ヨーロッパ諸国、オーストラリアの指標の変化率は、特に断りのない限り四半期データは季節調整値前期比年率、月次データは同前月比である。また、中南米、中・東ヨーロッパ、ロシア、アジア諸国の指標は、前年同期(月)比である。
1 南北アメリカ 北米、景気は拡大している。
アメリカ:景気は拡大している。雇用は拡大し、物価は安定している。株価(ダウ平均)は最高値を更新した。 |
アメリカでは、実質GDP(前期比年率)は97年7~9月期 3.1%増の後、10~12月期には 3.7%増と拡大している。個人消費は、10~12月期 2.5%増の後、1月前月比年率 8.1%増、2月同 4.2%増と増加している。設備投資は、10~12月期 0.8%減となった。非軍需資本財受注(航空機・同部品を除く)は、1月、2月とも増加している。住宅投資は、10~12月期 9.1%増と増加した。住宅着工件数は2月前月比 6.0%増と増加している。在庫投資は、10~12月期は増加率寄与度 1.4%とプラスに転じた。
鉱工業生産は、増加している。雇用は、拡大している。失業率も、低水準で推移している。物価は、安定した動きとなっている。
経常収支赤字は、10~12月期は 456億ドルと前期から拡大し、GDP比でも 2.2%と増加した。その後、1月の財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は 188億ドルと、前月から11億ドル拡大した。
金融面の動向をみると、短期金利(TB3カ月物)は98年1月から3月にかけては、総じてやや低下した。長期金利(国債30年物)は、1月から3月にかけては、やや上下しつつ、ほぼ横ばいで推移した。
株価(ダウ平均)は、1月下旬以降3月にかけ総じて上昇し、3月下旬には最高値を更新した(TB3カ月物利回り98年3月5.16%(97年12月値差 -0.13%)、国債30年物利回り98年3月5.94%(97年12月値差 -0.04%)、NYダウ工業株平均98年3月8709.5ドル(97年12月値比10.3%))。マネーサプライ増加率(97年10~12月期対比年率)をみると、M2は98年2月 8.1%となっている。
クリントン大統領は、1月27日に一般教書を発表した後、2月2日に予算教書、同月10日に大統領経済報告および大統領経済諮問委員会(CEA)報告を議会に提出した。予算教書の財政見通しでは、99年度に財政収支を黒字に転換するとしている。CEA報告の経済見通しでは、実質GDP成長率の見通しは98年、99年ともに第4四半期対比2.0%としている。
議会予算局(CBO)は、3月4日、財政・経済見通しを発表した。同見通しでは、実質GDP成長率は、98年は前年比 2.7%、99年は同 2.0%としている。
カナダ:景気は拡大している。 失業率は低下している。 |
カナダでは、実質GDP(前期比年率)は、97年7~9月期 3.9%増の後、97年10~12月期 3.0%増となり、引き続き景気は拡大している。個人消費は、10~12月期2.3%増と引き続き拡大している。民間投資では、住宅投資は、10~12月期 8.7%増加したが、設備投資は、10~12月期 2.0%減少した。在庫投資は、10~12月期の実質GDP成長率への寄与度は-0.2%となった。
生産は堅調で97年12月前月比 0.9%増となった。失業率はこのところ低下しており、2月は8.6%となった。物価は安定しており、消費者物価上昇率は、98年1月前年同月比1.1%、2月同 1.0%に留まっている。経常収支赤字は、10~12月期62.4億加ドル(GDP比2.9%)と、赤字幅はやや縮小した。財の貿易収支黒字(国際収支ベース)は、98年1月17.0億加ドルとなった。
金融面の動向をみると、カナダ銀行は、公定歩合を98年1月に 0.5%引き上げ 5.0%とした。
なお、カナダ大蔵省は、2月24日、1997/98年度以降3年度連続で財政収支均衡を見込む98年予算案を発表した。
中南米:メキシコの景気は拡大している。失業率は低下している。経常収支赤字は拡大している。ブラジルの景気は鈍化している。97年10月末に政策金利を2倍に引き上げたこと、11月に実施した財政緊縮措置などにより、内需が鈍化している。失業率は上昇している。経常収支赤字は縮小している。 |
メキシコでは、実質GDP(前年同期比)は、97年7~9月期7.9%増、10~12月期6.7%増と、個人消費や投資の増加などにより景気は拡大している。鉱工業生産は97年10~12月期前年同期比 8.5%増の後、98年1月前年同月比 7.6%増と増加が続いている。
失業率は低下基調にあり、98年2月 3.5%となった。物価は依然高水準であるが、低下基調にある。消費者物価上昇率は、98年2月前年同月比15.4%となった。経常収支赤字は10~12月期は、36.2億ドルと拡大している。貿易収支は98年2月 6.4億ドルの赤字(暫定値)となり、赤字幅は拡大している。
ブラジルでは、実質GDP(前年同期比)は、97年7~9月期2.8%増、10~12月期1.9%増となり、景気は鈍化している。鉱工業生産は97年10~12月期前年同期比 0.7%増と伸びが鈍化している。
失業率は上昇しており、98年1月 7.3%となった。消費者物価上昇率は、98年2月前年同月比 4.6%となった。経常収支赤字は10~12月期 111.0億ドルの後、98年1月20.8億ドル、2月16.7億ドルと縮小している。
2 ヨーロッパ 欧州委員会、11か国を通貨統合への当初参加国に推薦
ドイツ:景気は回復している。機械設備投資は増加しており、生産は拡大している。失業率は高水準で推移している。物価は安定している。 |
ドイツでは、実質GDPは、97年7~9月期前期比年率2.9%増(前年同期比2.4%増)、10~12月同1.1%増(同2.4%増)となり、景気は回復している。需要項目別では、個人消費、機械設備投資が成長にプラスに寄与した一方、外需の寄与度はマイナスとなった。個人消費は、10~12月期前期比年率1.7%増、小売売上高は1月前月比3.6%増となるなど、持ち直している。機械設備投資は、10~12月期前期比年率4.2%増と増加している。建設投資は、10~12月期前期比年率2.4%減となり、新規建設受注数量が10~12月期前期比4.9%減となるなど、総じて停滞している。在庫投資のGDP寄与度は、7~9月期に引き続き、10~12月期もプラスとなった。
鉱工業生産は、拡大しており、12月前月比0.2%増、1月同2.5%増となった。製造業新規受注は、1月期前月比3.3%増、2月同0.1%増となった。製造業稼働率(旧西独地域)は、10~12月期87.2%と上昇した。ifo景況感指数(旧西独地域)は、このところ悪化している。
失業率は、高水準で推移しており、1月11.6%、2月11.5%となった。失業者数(季調値)は、2月441.8万人となった。時間あたり賃金上昇率は、1月前年同月比0.8%となった。物価は、消費者物価上昇率が、2月前年同月比1.1%、工業品生産者価格上昇率が、同0.7%と安定している。
経常収支は10~12月期29億マルクの黒字となった。輸出は1月前月比4.3%増、輸入は同10.7%増、貿易収支黒字は12月120億マルクから、1月は84億マルクと縮小した。
金融面の動向をみると、3月には、短期金利(コール3か月物)、長期金利(公債平均利回り)とも横ばいで推移した。マネーサプライ(M3:97年10~12月期対比年率)は、1月3.1%増ののち、2月2.8%増となり、目標圏を下回った(目標圏:3~6%)。
なお、ドイツ政府は3月11日、年次経済報告を発表し、98年の実質GDP成長率の見通しを前年比2.5~3%とした。
フランス:景気は、拡大している。生産、消費は拡大しており、設備投資は回復している。失業率は、高水準で推移している。物価は、安定している。 |
フランスでは、97年10~12月期の実質GDP(前期比年率)は、個人消費と輸出が牽引役となり、前期比年率3.1%増となった。個人消費は、実質個人消費が97年10~12月期前期比年率3.0%増となるなど拡大している。工業製品家計消費は、98年1月に前月比4.2%増と大幅に伸びた反動で、2月は同3.2%減となった。消費者コンフィデンスは、97年11月からやや低下していたが、2月には改善した。設備投資は、実質法人固定投資が97年10~12月期前期比年率0.3%増と回復している。98年1月に国立統計経済研究所(INSEE)が実施した経営者アンケートによると、98年の設備投資額(名目)は、10%増と見込まれている。
鉱工業生産(建設を除く)は、97年12月に前月比2.3%増となった反動で、98年1月は前月比0.9%減、前年同月比7.0%増となった。経営者アンケート調査によると、受注状況は良好である。失業率は、98年1月12.1%、2月12.1%と高水準で推移している。一方、2月の求職者数は、前月比0.2%減となった。
物価は、安定している。消費者物価上昇率は、98年2月前年同月比0.7%となった。中間財価格は、98年2月前年同月比0.5%上昇と安定している。
経常収支は、97年10~12月期646億3400万フランの黒字。貿易収支は、98年1月164億7800万フランの黒字であった。経常収支・貿易収支とも黒字が続いている。
金融面の動向を見ると、短期金利は、安定して推移している。長期金利は、97年10月半ばから低下傾向にある。マネーサプライ(M3)は、98年1月前年同月比3.3%増となった。
イギリス:景気拡大のテンポはこのところ緩やかになってきている。個人消費が拡大を続けている。失業率は低下している。物価はこのところ安定してきている。 |
イギリスでは、実質GDPが、97年7~9月期前期比年率3.6%増の後、97年10~12月期2.5%増となった。10~12月期の需要項目別の寄与度(市場価格ベース)を見ると、個人消費などの内需が成長に寄与している。
個人消費は、増加している。実質個人消費が97年10~12月期前期比年率5.9%増となり、小売売上数量指数は98年2月前月比1.2%減となった。設備投資は、実質非住宅投資は97年10~12月期前期比年率0.3%減となったが、基調としては増加している。住宅投資は、97年10~12月期の実質住宅投資が前期比年率16.3%増となり、住宅着工件数が98年1月前月比4.7%増となるなど、増加している。生産は、鉱工業生産が97年10~12月期前期比0.9%減(製造業生産は同0.5%減)となった後、98年1月前月比0.6%減となるなど、鈍化してきている。失業率は、98年1月5.0%、2月4.9%と低下している。物価は、消費者物価上昇率が98年1月前年同月比3.3%、2月同3.4%(住宅ローン利払費を除いた消費者物価上昇率は、1月同2.5%、2月同2.6%)となるなど、安定してきている。
経常収支は97年7~9月期13.6億ポンドの黒字の後、97年10~12月期は1.2億ポンドの黒字となり、黒字幅が縮小した。98年1月の貿易収支は、11.0億ポンドの赤字となり、赤字幅がやや縮小している。
金融面の動向を見ると、長・短期金利は、このところ横ばいで推移している。マネーサ
プライ(M4)増加率は、98年1月前年同月比10.2%増、2月同9.7%増となった。
なお、98年3月に発表された98年度予算案では、2000年度までに一般政府の財政赤字が均衡化する見通しである。
イタリア:景気は緩やかに改善している。生産は拡大している。失業率は高水準で推移している。物価上昇率は低水準で安定的に推移している。 |
イタリアでは、実質GDPが、97年7~9月期前期比年率2.6%増の後、97年10~12月期では同0.7%増となるなど、景気は緩やかに改善している。
個人消費は、実質個人消費が97年10~12月期前期比年率1.0%減となった。小売売上数量指数が12月前年同月比5.4%増となるなど、緩やかな伸びとなっている。政府消費は、97年10~12月期前期比年率0.1%増となっている。固定投資は97年10~12月期同0.5%減となっている。
生産は、拡大している。鉱工業生産は、97年10~12月前期比1.2%増、98年1月前月比1.0%増(前年同月比6.6%増)となった。製造業稼働率は、97年7~9月期77.7%の後、97年10~12月期79.0%と上昇した。
失業率は、97年10月12.4%、98年1月12.2%と高水準で推移している。物価は、生計費上昇率が97年12月前年同月比1.5%、98年1月同1.6%、2月同1.8%となるなど、低水準で安定的に推移している。
経常収支は、97年11月は1,120億リラの黒字となっている。貿易収支は、97年11月4.0兆リラの黒字となり、貿易黒字幅は依然大幅ながらも縮小傾向にある。
金融面の動向を見ると、長短金利は、このところ緩やかな低下傾向にある。マネーサプライ(M2)増加率は、98年2月前年同月比7.1%となった。
※なお、欧州委員会は3月25日に、EU加盟15か国のうち、11か国を99年1月に開始される通貨統合への当初参加国に推薦した。
中・東ヨーロッパ:ポーランド、ハンガリーでは景気は拡大している。チェッコでは景気は改善している。 |
ポーランドでは、実質GDPが97年7~9月期前年同期比6.9%増、97年通年で前年比7.0%増となり、景気は拡大を続けている。鉱工業生産は、97年10~12月期前年同期比11.2%増、98年1月前年同月比8.1%増となった。失業率は、97年9月10.6%、12月10.5%と高水準ながら低下してきている。物価上昇率は、消費者物価上昇率で97年前年比14.9%、98年2月前年同月比14.2%と高水準ながら低下してきている。経常収支は、97年7~9月期9.6億ドル、10~12月期6.9億ドルの赤字と赤字が縮小傾向にある。
ハンガリーでは、実質GDPが、97年4~6月期前年同期比4.3%増、7~9月期同5.1%増となり、景気は拡大している。鉱工業生産は、97年7~9月期同13.1%増、10~12月期同14.7%増となった。失業率は、97年9月10.3%、12月10.4%と概ね横ばいで推移している。物価上昇率は、消費者物価上昇率で97年前年比18.3%、98年2月前年同月比17.1%と高水準ながら低下してきている。経常収支は、97年4~6月期2.9億ドルの赤字の後、7~9月期0.8億ドルの黒字、10~12月期3.0億ドルの赤字と改善している。
チェッコでは、実質GDPが、97年7~9月期前年同期比0.1%減、10~12月期同2.2%増となり、景気は改善している。鉱工業生産は、97年前年比4.5%増、98年1月前年同月比5.1%増となった。失業率は、97年12月5.2%、98年2月5.6%と上昇基調にある。物価上昇率は、消費者物価上昇率で98年2月前年同月比13.4%となり、97年央から上昇している。経常収支は、97年7~9月期17.0億ドルの赤字、10~12月期8.3億ドルの赤字と赤字が縮小傾向にある。
ロシア:景気は、緩やかに回復している。物価上昇率は、低下している。貿易収支は、黒字が縮小傾向にある。 |
ロシアでは、実質GDPは、96年前年比4.9%減の後、97年同0.4%増、98年1月前年同月比1.3%増と緩やかに回復している。鉱工業生産も、96年前年比4.0%減の後、97年同1.9%増、98年1月前年同月比1.5%増となった。個人消費は、実質民間消費で97年7~9月期前年同期比0.8%増、10月前年同月比3.9%増とゆるやかに回復している。固定投資は、実質総固定投資(政府・民間)で96年前年比18.0%減、97年同5.5%減と減少幅が縮小している。失業率(ILO基準)は、97年6月末9.5%の後、9月末9.1%、10月末8.9%とゆるやかに低下している。
物価上昇率は、消費者物価上昇率で97年前年比11.0%、98年2月前年同月比9.6%(前月比0.9%)と低下している。
貿易収支は、黒字が縮小傾向にある。非CISとの貿易収支(個人業者による「シャトル貿易」を含まない)黒字は、97年4~6月期72.1億ドル、7~9月期69.8億ドル、10~12月期72.9億ドルの黒字となった。非CISへの輸出は、97年4~6月期前年同期比9.7%減の後、7~9月期同3.1%減、10~12月期同 4.7%減と減少している。輸入は、97年4~6月期同1.4%増の後、7~9月期26.9%増、10~12月期同59.0%増と増加している。
また、ルーブルはドルに対して、95年11月上旬以降、目標相場圏内で緩やかに減価を続けている。財政収支の赤字(国債の利払いを含まない)は、96年3.3%(GDP比)の後、97年1~10月期3.6%となった。
3 アジア等 インドネシア、通貨下落により物価急騰
中国:景気は拡大している。生産は堅調に推移している。物価は安定している。貿易収支は大幅な黒字が続いている。 香港:景気は鈍化している。物価上昇率は低下している。失業率はこのところ上昇している。 |
中国では、実質GDPは、97年1~9月期前年同期比9.0%増の後、97年前年比8.8%増となり、景気は拡大を続けている。鉱工業生産(実質)は、98年1月前年同月比11.3%増の後、1~2月は稼働日数の減少などから前年同期比8.0%増となった。
消費は、社会商品小売総額(消費財、実質)をみると、1月前年同月比14.6%増と堅調に推移している。固定資産投資は、97年前年比10.1%増の後、1~2月前年同期比10.2%増と高水準で推移している。
物価は安定しており、消費者物価上昇率をみると1月前年同月比0.3%の後、2月は同0.1%下落している。また小売物価上昇率は、97年10月以降前年同月比でみて下落が続いており、1月は1.5%、2月は1.9%それぞれ下落している。
貿易収支黒字は、97年に輸出の大幅増、輸入の不振から403億ドルの大幅黒字となった後、1月39.9億ドル、2月31.5億ドルと黒字が続いている。輸出は、・アジア向け輸出が不振となっているがアメリカ・ヨーロッパの輸入需要が強いこと、・中国政府の増値税還付率引上げなどの輸出奨励策などにより高い伸びが続いており、1月前年同月比8.8%増、2月同23.9%増となっている。一方輸入は、1月前年同月比12.9%減の後、2月同16.7%増となった。
金融動向をみると、マネーサプライ伸び率(M2、期末残)は、1月末前年同月比17.4%となり97年11月以降やや高まっている(98年の目標圏は16~18%)。人民元レートは、ドルに対してほぼ横ばいで推移している。なお人民銀行は、預金・貸出金利の引下げを実施した(3月25日実施)。また中国政府は、98年のマクロ目標として実質GDP成長率8%、消費者物価上昇率5%を掲げている。なお3月の全人代において朱鎔基副首相が新首相に選出され、3年をめどに国有企業、金融、行政の3つの改革を実行することを表明した。
香港では、実質GDPは97年7~9月期前年同期比5.7%増の後、10~12月期同2.4%増と景気は鈍化している(97年全体の実績は5.2%)。個人消費は、97年7~9月期前年同期比11.6%増の後、10~12月期同4.2%増となった。小売売上高は、・観光客の減少、・金利の上昇、・雇用情勢の悪化などから10~12月期前年同期比2.2%減、1月前年同月比10.9%減と減少している。固定資本形成は7~9月期前年同期比11.8%増の後、10~12月期同5.0%増となった。物価は、旧正月が97年の2月から98年は1月になったことから、消費者物価上昇率が1月前年同月比5.1%と高まった後、2月は同4.5%と低下している。失業率は、97年9月の2.2%をボトムに上昇に転じており、1月2.5%、2月2.9%となった。貿易収支は、10~12月期43.4億ドルの赤字の後、1月は輸入の減少から1.5億ドルの黒字、2月は再び24.3億ドルの赤字となっている。輸出は、10~12月期前年同期比6.8%増の後、1月は中国、日本向け輸出の減少から前年同月比4.2%減、2月同1.4%減となった。一方輸入は、10~12月期前年同期比5.7%増の後、1月前年同月比14.1%減、2月同4.3%増となった。なお98年の経済成長率は、3.5%と97年を大幅に下回る見通しとなっている(香港政府見通し)。
韓国:景気は後退している。物価は高騰している。貿易収支黒字は、輸入減少により大幅に拡大している。失業率は上昇している。 |
韓国では、景気は後退している。実質GDPは、97年7~9月期前年同期比 6.1%増の後、10~12月期は同 3.9%増となった。なお、10~12月期の成長率を内外需別にみると、内需寄与度はマイナス7.1%となり、外需寄与度はプラス11.0%となった。消費は、実質民間最終消費が、10~12月期前年同期比1.0%減と7~9月期4.8%増から大幅に減少した。投資は、実質建設投資が10~12月期前年同期比3.7%増であったが、実質設備投資は7~9月期前年同期比12.7%減の後、10~12月期は同28.2%減と大幅に落ち込んだ。
鉱工業生産は、97年10~12月期前年同期比5.5%増の後、1月は前年同月比10.3%減と減少している。製造業稼働率は、1月68.3%と史上最低水準となった。
失業率は、97年10~12月期2.6%の後、1月は4.5%と上昇しており、失業者数は、12月前年同月比37.4%増となった。物価は、高騰しており、消費者物価上昇率が2月前年同月比9.5%、3月同9.0%となった。生産者物価上昇率は1月前年同月比15.2%の後、2月は同17.7%となった。
国際収支の動向をみると、輸出は国民から集めた金の輸出分の10.5億ドルを含むため2月前年同月比21.6%増となった後、3月も3.2億ドルの金を輸出し、同7.0%増となった。輸入も減少しており、2月前年同月比29.5%減の後、3月は同35.8%減と大幅なマイナスが続いている。これに伴い、貿易収支黒字は2月32.9億ドルから3月37.4億ドルと大幅に拡大している。経常収支は97年12月36.4億ドルの黒字の後、1月は30.3億ドルの黒字となった。
金融面の動向を見ると、会社債収益率(期中平均)は、企業の倒産を受け1月23.4%と大幅に上昇している。通貨供給量(M2)の期中平均残高は、1月前年同月比16.4%となっている。
対ドル・レートは大統領の経済構造改革への強い取り組み姿勢から3月25日現在1ドル=1388ウォンと安定的推移となっている。
財政経済院は韓国の98年1月末の対外債務を短期債務649億ドル、長期債務872億ドルと発表した。また、1月に政府と合意し、これまで各国債権銀行団と返済期限延長交渉を続けていた期間1年未満の銀行中心の民間対外短期債務の内、218億3900万ドルが政府保証を付与した上で繰り延べられることとなった。
韓国政府はIMFとの合意事項である高金利政策の見直しに入る事を明らかにした。
台湾:景気は拡大している。 シンガポール: 景気は堅調に推移している。 |
台湾では、景気は拡大している。実質GDP成長率は、97年7~9月期前年同期比6.9%の後、10~12月期同7.1%となった。個人消費は、10~12月期前年同期比8.1%となっており、堅調な拡大を続けている。固定資本形成は、民間投資が拡大したことから10~12月期前年同期比13.7%と高い伸びとなった。鉱工業生産は、堅調に増加しており、97年10~12月期前年同期比8.4%増の後、98年1月は前年同月比7.1%減となったものの、2月には再び同19.8%増と高い伸びを示した。
物価は、消費者物価が、97年10~12月期前年同期比0.2%の下落、98年1月前年同月比1.8%上昇、2月同0.3%上昇と低水準での推移が続いている。卸売物価は、通貨減価の影響から上昇がみられており、97年10~12月期前年同期比4.1%の後、98年1月前年同月比7.6%上昇、2月同5.3%上昇と高めの推移が続いている。
失業率は、97年半ばから低下基調となっており、10~12月期に2.6%の後、98年1月2.4%、2月2.6%となっている。
貿易収支は、このところ黒字幅が縮小基調となっている。97年10~12月期22.0億ドルの黒字の後、98年1月1.4億ドルの黒字、2月6.1億ドルの赤字となった。輸出は97年10~12月前年同期比6.5%増、98年1月前年同月比26.0%減、2月同12.1%増となった。一方、輸入は97年10~12月期前年同期比11.9%増、98年1月前年同月比 19.0%減、2月同23.2%増となった。
金融面の動向をみると、マネーサプライ(M2)増加率は、97年10~12月期前年同期比7.3%、98年1月前年同月比9.4%、2月同8.5%と緩やかな伸びが続いている。中央銀行はM2の目標レンジを6~12%としている。
シンガポールでは、景気は堅調に推移している。実質GDP成長率は、97年7~9月期前年同期比10.7%のあと、10~12月期同 7.6%と鈍化したものの、97年通年では96年の6.9%から 7.8%となった。個人消費は97年7~9月期前年同期比 8.5%から10~12月期同 5.1%となった。固定資本形成は7~9月期前年同期比22.2%のあと10~12月期同4.9%となった。製造業生産は10~12月期前年同期比 7.8%増のあと、98年1月前年同月比3.9%減となった。
物価は、一時高まったものの再び安定している。消費者物価上昇率は10~12月期前年同期比 2.3%のあと、98年1月前年同月比 1.2%、2月同 0.9%となった。
失業率(季節調整値)は、やや上昇しており、97年9月 1.8%のあと、12月 2.0%となった。
貿易収支は98年に入って黒字に転じている。10~12月期13.6億ドルの赤字のあと、98年1月 3.9億ドル、2月 0.1億ドルのそれぞれ黒字となった。輸出は10~12月期前年同期比 3.9%減のあと、98年1月前年同月比21.8%減、2月同 9.9%増となった。輸入は10~12月期前年同期比 5.1%減のあと、98年1月前年同月比29.0%減、2月同 0.7%増となった。経常収支黒字は7~9月期38.2億ドルから10~12月期29.5億ドルとなった。
金融面の動向をみると、マネーサプライ(M2)増加率は、97年10~12月期前年同期比 8.5%、98年1月前年同月比10.0%と緩やかな伸びとなっている。
(なお、台湾、シンガポールの98年1、2月の主要指標は、旧正月が98年には97年の1月から2月へと替わったため、前年同月比でみると大きく変動している)
アセアン:インドネシア、タイでは、景気は後退している。物価は上昇している。輸出はフィリピンを除き低下している。 |
アセアン各国の動向をみると、インドネシアでは、景気は後退しており、97年の実質GDP成長率は、96年8.0%の後、4.6%となった。物価は、97年同消費者物価上昇率が、97年10~12月前年同期比10.1%の後、単月では98年1月前年同月比18.1%、2月同31.7 %となり、急騰している。貿易収支(通関ベース)は、97年7~9月期36.0億ドルの黒字の後、10~12月期40.5億ドルの黒字となり、黒字幅は拡大した。輸出は97年7~9月期前年同期比10.0%増、10~12月期同 2.2%増となった。輸入は97年7~9月期前年同期比2.6%減、10~12月期同10.3%減と大幅に減少した。金融面では、金利は上昇し、高金利が続いている。為替は大幅に下落し、対外債務の膨張などにより、民間企業の多くは債務不履行状態に陥っている。為替はその後もカレンシーボード制度の導入検討が表明されるなど、IMF支援条件である改革プログラムの進展が遅れていることにより、不安定である。スハルト大統領は3月上旬に7選を果たし2003年まで続投することとなった。
タイでは、景気は後退しており、政府は97年の実質GDP成長率をマイナス0.4%と見込んでいる。製造業生産指数の動きをみると、97年10~12月期前年同期比11.3%減の後、98年1月前年同月比16.4%減と大幅に減少している。物価は、消費者物価上昇率が、97年10~12月期前年同期比7.5%の後、98年1月前年同月比8.6%、2月同8.9%と上昇が続いている。貿易収支(通関ベース)は、97年9月以降黒字に転じており、7~9月期 8.6億ドルの赤字から10~12月期25.0億ドルの黒字、98年1月8.7億ドルの黒字となった。輸出が97年10~12月期前年同期比6.7%増、98年1月前年同月比7.9%減となった一方で、輸入が97年10~12月期同27.5%減、98年1月前年同月比45.1%減と引き続き大幅な減少となった。経常収支は、97年10~12月期に10年ぶりの黒字(28.8億ドル)の黒字に転じ、その後も黒字は拡大している(98年1月は12.3億ドル)。タイでは、97年8月以降、IMFの支援の下で緊縮的な経済運営を続けており、内需は縮小している。通貨は年初には大幅に減価が進んだものの、その後、値を戻し、直近では小康状態にある。
マレイシアでは、実質GDP成長率は、97年7~9月期前年同期比7.4%となった後、10~12月期同6.9%となり、景気は鈍化している。鉱工業生産指数は、97年10~12月期前年同期比10.2%増の後、98年1月には前年同月比2.8%増と伸びが鈍化した。物価は、消費者物価上昇率が、97年10~12月期前年同期比2.7%の後、98年1月前年同月比3.4%、2月同4.4%と上昇している。貿易収支(通関ベース)は、97年7~9月期4.9億ドルの黒字となった後、10~12月期4.4億ドルの黒字、98年1月5.9億ドルの黒字と黒字基調が続いている。輸出入とも減少に転じており、輸出は97年10~12月期前年同期比5.1%減、98年1月前年同月比23.3%減、輸入は97年10~12月期前年同期比7.7%減、98年1月前年同月比32.4%減となっている。通貨は年初には大幅に減価が進んだものの、その後、値を戻し、直近では小康状態にある。
フィリピンでは、実質GDP成長率は、97年7~9月期前年同期比4.9%、10~12月期同4.7%と堅調に推移している。実質GDP成長率は通年では、96年前年比5.7%の後、97年5.1%となった。製造業生産指数は、97年4~6月期前年同期比1.0%増の後、7~9月期同6.6%増、97年11月単月では、前年同月比23.7%増となった。物価は、消費者物価上昇率が、97年7~9月期前年同期比4.9%の後、10~12月期同6.1%、98年2月単月では前年同月比7.4%と上昇している。貿易収支(通関ベース)は、97年7~9月期26.7億ドルの赤字となった後、10~12月期は20.4億ドルの赤字となり、赤字幅は縮小した。輸出は、電子製品などが順調に拡大し、97年10~12月期前年同期比24.0%増と大幅に拡大した。輸入は、97年10~12月期前年同期比8.6%増と増勢が鈍化した。
インド:このところ鉱工業生産や輸出が低水準で推移しており景気は鈍化している。物価上昇率は低下している。貿易収支赤字は拡大している。 |
インドでは、実質GDPは、95年度(4~3月)前年度比7.1%増の後、農業生産が堅調であったものの工業生産の伸びが鈍化したため、96年度同6.8%増(見込み)とやや減速した。
農業生産は、96年度は良好なモンスーン等気候がよく95年度前年度比0.4%減に対し、同3.0%増となった。
鉱工業生産は、低水準の伸びで推移しており、97年7~9月期前年同期比3.4%増の後、10月前年同月比2.4%増、11月同6.1%増となった。
物価は、このところ上昇率が低下傾向にある。卸売物価上昇率は97年7~9月期前年同期比4.0%の後、10月前年同月比3.9%、11月同4.7%となった。消費者物価上昇率(工業労働者対象)は7~9月期前年同期比5.0%の後、10月前年同月比5.5%、11月同4.9%となった。
国際収支をみると、輸出(通関、ドル・ベース)は、97年7~9月期前年同期比7.9%増の後、10~12月期同 0.9%増となった。輸入は、7~9月期前年同期比10.2%増の後、10~12月期同3.2%増となった。この結果、貿易収支赤字は7~9月期10.9億ドルから、10~12月期17.9億ドルへと赤字幅が拡大した。
金融面の動向を見ると、金利(コールレート)(期中平均)は、97年7~9月期5.5%の後、10~12月期は6.9%となった。通貨供給量(M3、期末残高)は、98年1月前年同月比15.8%増となった。
なお、97年12月の国会下院解散に伴い、98年2~3月に下院総選挙が実施された。その結果、インド人民党(BJP)が第1党となり、同党のヴァジパイ議員を首相とする連立内閣が組閣され、3月28日下院で承認された。
オーストラリア:景気の拡大テンポは鈍化している。失業率は改善している。消費者物価上昇率は落ち着いている。経常収支赤字は拡大している。
オーストラリアでは、実質GDP成長率(平均ベース)は、97年7~9月期前期比年率4.5%の後、10~12月期同1.8%と拡大テンポが鈍化した。
消費は、実質民間最終消費が、10~12月期前期比1.5%増と堅調な伸びとなった。小売売上高は、98年1月前月比1.9%増の後、2月同1.0%減となった。投資は、実質民間設備投資が、7~9月期前期比1.2%減の後、10~12月期同3.7%減となった。非住宅建設投資は7~9月期前期比2.9%増の後、10~12月期同6.5%減となった。また、民間住宅投資は、10~12月期前期比1.7%増となった。住宅建設許可件数は、98年1月前月比1.5%減の後、2月同6.7%減となった。
失業率は、1月8.1%の後2月も8.1%となり、このところ改善している。消費者物価上昇率は、10~12月期前年同期比マイナス0.2%と落ち着いている。経常収支は、10~12月期57.4億豪ドルと赤字幅が大幅に拡大した。財の貿易収支は、国内需要の堅調により輸入の伸びが輸出を上回り、10~12月期は1.3億豪ドルの赤字に転じた。サービス収支も3.5億豪ドルの赤字に転じた。
金融面の動向をみると、オーストラリア・ドルは、アジア諸国通貨減価の影響を受け、98年1月初にかけて対米ドルで大幅に減価した後2月にかけて再び増価し、このところほぼ落ち着いた動きとなっている。98年3月31日現在、対米ドルで97年12月末比1.6%増価となった。株価(総合株価指数)は3月24日史上最高値を更新した。
4 国際金融・商品 アジア通貨は、インドネシア・ルピアを除き、やや持ち直した
国際金融:ドルは、やや増価した。 国際商品:原油価格、おおむね弱含みでの推移し、3月下旬にかけて強含みで推移。 |
【国際金融】
米ドル(実効相場)の動向は、やや増価した。対円では、1月に米大統領のスキャンダル問題や日本の金融安定化策への期待の高まりなどから減価したが、2月中旬以降は堅調な米株価に対し不安定な日本の株価や、日本の景気先行き不透明感の深まりなどから総じて増価した。対マルクでも総じて増価した。(モルガン銀行発表の米ドル実効相場指数(1990=100)98年3月31日 111.3、97年12月末比 1.2%の増価)。内訳でみると、98年3月31日現在、対円では97年12月末比 2.0%増価、対欧州通貨では対マルクで同 2.8%増価、対ポンドで同 1.2%減価、対仏フランでは同 3.0%増価した。
なお、アジア通貨は、引き続き減価したインドネシア・ルピアを除き、やや持ち直し、直近では小康状態。
【国際商品市況】
国際商品価格全体では、CRB指数は、1月上旬に弱含んだ後、穀物価格や金価格の上昇などを受け上昇した。2月から3月中旬にかけてはやや強含む場面もあったが、原油価格や穀物価格の下落などからおおむね弱含みで推移した。その後下旬にかけて強含んだ。
商品別では、穀物は1月はおおむね強含んだが、2月は弱含み、3月は上旬に強含んだ後弱含んだ。非鉄金属ではアジアでの需要減少懸念などから弱含んでいた銅が生産削減観測などで3月強含んだ。貴金属では、銀価格が特定投資家の大量購入などにより、2月にかけて9年ぶりの高値となり、金価格はドル安などにより1月は強含み1オンス=300ドルを回復したが、3月にはベルギー中央銀行の金売却などにより再度弱含みでの推移となった。
【石油情勢】
原油価格(北海ブレント・スポット価格)の1月以降の動きをみると、1月は弱含みで推移した後、イラクの大量破壊兵器査察問題でアメリカとの対立が強まった事から下旬にかけてやや強含んだ。その後2月にかけてはイラクとアメリカの対立が緩和したことから弱含みで推移し、1バレル=13ドル台まで下落した。3月に入り、恒常的な供給過剰にたいして、OPEC(石油輸出国機構)が何ら対応策を示せない事もあり弱含みで推移し中旬にかけて、1バレル=11ドル台と9年ぶりの安値となったが、下旬にかけて主要産油国が減産を表明した事から急反発し、強含みの推移となった。