月例経済報告(平成15年6月)

―景気は、おおむね横ばいとなっているが、このところ一部に弱い動きがみられる。―

先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、アメリカ経済やアジア経済等の先行きを巡る不透明感により、我が国の最終需要が引き続き下押しされる懸念が存在している。

平成15年6月17日

内閣府

総論

(我が国経済の基調判断)

景気は、おおむね横ばいとなっているが、このところ一部に弱い動きがみられる。

  • 輸出は横ばいとなっている中で、生産は弱含んでいる。
  • 企業収益は改善のテンポが緩やかになり、設備投資は持ち直しの動きが緩やかになっている。
  • 雇用情勢は、失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
  • 個人消費は、おおむね横ばいで推移している。

先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、アメリカ経済やアジア経済等の先行きを巡る不透明感により、我が国の最終需要が引き続き下押しされる懸念が存在している。

(政策の基本的態度)

政府は、持続的な経済成長を実現するため、引き続き構造改革を推進する。このため、6月中を目途として、経済活性化、国民の安心の確保、持続可能な財政の確立等を目指して、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(仮称)」を取りまとめる。
日本銀行は、6月11日、資産担保証券の買入れの具体的スキームの骨子を取りまとめた。政府は、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びデフレ克服を目指し、引き続き強力かつ総合的な取組を行う。

各論

1.消費・投資などの需要動向

個人消費は、おおむね横ばいで推移している。

個人消費は、収入面での弱い動きが続くなど家計を取り巻く環境が厳しいなか、おおむね横ばいで推移している。この背景としては、消費者マインドが低水準ながら悪化傾向に歯止めがかかりつつあることが挙げられる。需要側統計(家計調査)と供給側統計(鉱工業出荷指数等)を合成した消費総合指数は、乗用車販売台数の減少の影響などから、4月は前月に比べて小幅減少している。
個別の指標をみると、家計調査では、実質消費支出が前月に比べて増加した。一方、販売側の統計をみると、小売業販売額は、2ヶ月連続で前月比減少となった。チェーンストア販売額は、引き続き前年を下回った。百貨店販売額は、気温が低めとなったことや、週末の天候不順により、減少幅が拡大した。新車販売台数は、4月は自動車税のグリーン化などの見直しに伴う駆け込み需要の反動から前年を大きく下回ったが、5月にはそうした要因が一巡したことから減少幅が縮小した。家電販売金額は、主力商品であるパソコンが前年を大幅に下回って推移していることから引き続き前年を下回っている。旅行は、国内旅行は引き続き前年を下回った。海外旅行は重症急性呼吸器症候群(SARS)による手控えなどから減少幅を大幅に拡大している。
個人消費の先行きについては、当面、現状のような推移が続くと見込まれるが、依然として雇用情勢が厳しいことなどから、引き続き留意が必要である。

設備投資は、持ち直しの動きが緩やかになっている。

設備投資は、資本ストック調整の進展や外需の増加等を受けて持ち直してきたが、このところ外需が横ばいとなってきていること等を受けて、持ち直しの動きが緩やかになっている。これを需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、季節調整済前期比で平成14年10-12月期に持ち直しに転じたものの、平成15年1-3月期はやや減少となっている。また、機械設備投資の供給側統計である資本財出荷の4月までの動きをみると、やや弱含んでいる。ソフトウェア投資は、概ね横ばいとなっている。
先行指標や年度計画をみると、日銀短観によれば製造業の15年度設備投資は3年ぶりに前年度比増加に転じる計画となり、設備投資の動きに先行性がみられる設備過剰感も改善の動きが続いている。しかし、機械設備投資の先行指標である機械受注は持ち直しの動きが緩やかになってきており、建設投資の先行指標である建築着工床面積をみると概ね横ばいとなっている。先行きについては当面緩慢なものにとどまると見込まれるが、外需をはじめとする最終需要の先行き不透明が払拭されれば、再び持ち直しに向かうものと見込まれる。

住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。

平成14年度の住宅建設は、貸家は増加したものの、持家、分譲住宅が減少したことから、前年度比2.4%減の114.6万戸となり、2年連続で120万戸を下回る低い水準となった。これは、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下していることが要因であると考えられる。平成15年2月、3月と2ヶ月連続で減少したが、4月は年率116.0万戸に増加した。また、総床面積も同様の動きとなっている。このところの動きをみると、持家は減少幅を縮小し、分譲住宅はおおむね横ばいで推移する中、これまで減少していた貸家の着工が増加したことから、全体としてはおおむね横ばいとなっている。
先行きについては、引き続き消費者の住宅取得マインドが低下しており、このことが住宅着工の下押し要因になるものと見込まれる。

公共投資は、総じて低調に推移している。

公共投資は、国、地方の予算状況を反映して、総じて低調に推移している。
国の平成14年度補正予算では、構造改革推進型の公共投資を計上するなどの予算措置を講じたが、補正後の公共投資は、「改革推進公共投資」特別措置を実施した前年度を大きく下回った。また、平成14年度における地方の投資的経費のうち単独事業費は、地方財政計画では、前年度比10.0%減となっている。
このような状況を反映して、平成14年度においては、平成13年度から繰り越された平成13年度第2次補正予算の下支え効果がみられたものの、公共工事請負金額、公共工事受注額は、平成14年4-6月期以降平成15年1-3月期まで、前年を下回った。なお、大手50社受注額は、平成14年10-12月期のみ前年を上回った。
平成15年度の公共投資の関連予算をみると、国の公共投資関係費においては、前年度比3.7%減と規模を縮減しつつ、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」など重点4分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野へ重点化している。また、地方財政計画においては、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比5.5%減としつつ、計画的な抑制と重点的な配分を行うとしている。
4-6月期の公共投資については、4月、5月の公共工事請負金額なども前年を下回っており、国、地方の予算状況などを踏まえると、引き続き前年を下回るものと考えられる。

輸出入は、ともに横ばいとなっている。貿易・サービス収支の黒字は、やや増加している。

輸出は、アジア向け輸出はこのところ減少していること等から、全体として横ばいとなっている。地域別にみると、アジア向け輸出は、中国向けは堅調であるものの、全体としてはこのところ減少している。アメリカ向け輸出は、自動車の輸出が国内販売台数の動向の推移と見合ったものに留まっており、輸出は横ばいとなっている。EU向け輸出は、新型車の投入にともなう年初来の自動車輸出の増加が一服したことから、このところ減少している。先行きについては、アメリカでは弱い景気回復が続いていることに加え、SARSによるアジア経済への影響等、輸出をめぐる環境が厳しいことから、当面の展開としては横ばいないし弱い動きとなる可能性がある。
輸入は、生産が弱含んでいることに加え、中国からの輸入が横ばいとなっていること等から、全体として横ばいとなっている。地域別にみると、アジアからの輸入は、NIEsからの輸入が減少しているものの、ASEAN、中国からの輸入が横ばいとなっていることから、全体としては横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、航空機等機械機器の輸入増により4月は増加したものの、全体としては弱含んでいる。EUからの輸入は機械機器を中心に減少している。
国際収支をみると、輸出入数量がともに横ばいとなっていることに加え、原油価格が低下していること、海外旅行客の減少等に伴いサービス収支の赤字幅が縮小していることから、貿易・サービス収支の黒字は、やや増加している。

2.企業活動と雇用情勢

生産は、弱含んでいる。

鉱工業生産は、国内最終需要に力強さがみられず、輸出が横ばいとなっていることを背景に、弱含んでいる。在庫は低水準にあるものの、外需をはじめとする最終需要の先行きが不透明であること等を背景に、企業は在庫積み増しに慎重になっており、生産の増加にはつながっていない。
先行きについては、在庫面からの生産下押し圧力は少ないと考えられるものの、国内最終需要は当面低調に推移することが見込まれるほか、アメリカ経済等に関する先行き不透明感を背景に輸出による牽引力もそれ程大きなものとはならないと考えられることから、生産の持ち直しに向けた力は当面弱いものにとどまると見込まれる。なお、製造工業生産予測調査においては、5月、6月ともに増加が見込まれている。
また、第3次産業活動は、弱含んでいる。

企業収益は、改善が続いているが、そのテンポは緩やかになっている。また、企業の業況判断は、緩やかながら、引き続き改善がみられる。倒産件数は、緩やかに減少している。

企業収益の動向を「法人企業統計季報」でみると、人件費削減を中心とする企業のリストラ努力等を背景に、平成15年1-3月期においても前年比で増益が続いているが、季節調整済前期比では減益に転じ、改善のテンポは緩やかになっている。「日銀短観」によると、平成14年度下期から15年度にかけて、前年比二桁の大幅な増益が見込まれている。業種別にみると、製造業では電気機械や鉄鋼を中心に収益が改善し、14年度下期では前年比4割の大幅増益となり、15年度も二桁の増益見込みである。一方、非製造業では14年度下期はわずかな増益幅にとどまるが、15年度には二桁の大幅増益となる見込みである。規模別でみても、大企業・中小企業共に15年度にかけて増益が見込まれている。日本経済新聞の集計によると、上場企業(3月決算)の14年度経常利益は前年同期比で約7割増益と急回復しており、15年度も二桁の増益見込みである。
企業の業況判断について、「日銀短観」をみると、中小企業製造業を中心に緩やかながら引き続き改善がみられるものの、自動車をはじめとする大企業製造業では改善に足踏みがみられる。先行きについては、若干の悪化を見込んでおり、慎重な見方も続いている。
また、企業倒産は、セーフティーネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、緩やかに減少している。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

企業の人件費抑制姿勢などの労働力需要面の要因や、雇用のミスマッチなどの構造的要因から、完全失業率が高水準で推移するなど、厳しい雇用情勢が続いている。
完全失業率は、4月は、前月と同水準の5.4%となった。男女別にみると、男性の失業率が低下する一方で、女性の失業率が上昇している。また、雇用者数は、横ばいで推移している。
新規求人数は、昨年前半から増加傾向にあったが、このところ、横ばいとなっており、有効求人倍率もおおむね横ばいとなっている。製造業の残業時間についても、横ばいとなっている。1-3月期に「残業規制」等の雇用調整を実施した事業所割合は、やや低下した。
賃金の動きをみると、4月の定期給与は前年同月比、前月比とも減少するなど、弱い動きが続いている。

3.物価と金融情勢

国内企業物価は、弱含んでいる。消費者物価は、横ばいとなっている。

国内企業物価は、弱含んでいる。最近の動きを類別にみると、鉄鋼などが上昇しているほか、5月の発泡酒に係る酒税増税の影響により加工食品が上昇しているが、他方で電気機器が引き続き下落しているほか、市況の軟化にともなって石油・石炭製品、化学製品などが下落している。また、輸入物価(円ベース)は、5月は原油価格や為替の影響により、下落している。
企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
消費者物価は、平成12年秋以降弱含んでいたが、原油価格の影響等により、このところ前月比で横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、一般商品は、耐久消費財などが下落しているが、原油価格の影響を受けた石油製品の上昇もあり、「その他工業製品」が上昇している。他方、一般サービスは、個人サービスの下落等により、4月は下落に転じている。この間、企業の低価格戦略には一部変化の兆しも見られる。また、公共料金は、4月の医療保険自己負担割合引き上げ等により、上昇している。
なお、消費者物価は現在横ばいとなっているが、原油価格が下落していることなどの影響も波及すると見られることから、物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

株式相場は、このところ上昇傾向にある。長期金利は、低下傾向で推移している。

株式相場は、5月上中旬は8,000円(日経平均株価)近傍で推移した後、米国株高などを背景にこのところ上昇傾向にある。対米ドル円相場は、5月中旬にかけて115円台まで上昇した後、5月下旬にかけて円安方向に動いた。
短期金利は落ち着いており、長期金利は投資家の旺盛な需要などに支えられ低下傾向で推移している。企業の資金繰り状況に概ね変化はみられず、民間債と国債との流通利回りスプレッドはこのところ縮小している。
マネタリーベースは、日本銀行の潤沢な資金供給などを背景に10%台の高い伸び(日本郵政公社当座預金を除く伸び率は11.9%)が続いている。M2+CDは、昨年末以降伸び率は鈍化している。

4.海外経済

アジアの一部で景気拡大が続いているものの、世界の景気回復力は弱まっている。

アメリカでは、弱い景気回復が続いている。

消費者、企業のマインドは改善している。これを背景に、消費に持ち直しの動きがみられ、また株価が上昇するなど先行き明るい兆しもみられる。
しかしながら、生産は減少を続けており、稼働率はさらに低下している。設備投資は再び減少に転じており、資本財受注も減少した。雇用は減少している。こうした企業部門の弱さが、景気の回復力を弱いものとしている。
また、物価上昇率は低下しており、食料とエネルギーを除いたコア消費者物価は、1966年以来の低い上昇率となっている。
5月下旬に、配当・キャピタルゲイン課税の軽減や、2001年に決定した所得税減税の前倒し実施などを含む3,500億ドル規模(11年間)の減税法案が成立した。

アジアでは、中国、タイ等で景気は拡大が続いているが、韓国、台湾等で減速している。

中国では、投資、輸出を中心に景気は拡大している。タイでは、内外需の堅調な増加から景気は拡大している。マレーシアでは、輸出の伸び鈍化から景気の拡大は緩やかとなっている。韓国、台湾では、消費、投資が鈍化しており景気は減速している。シンガポールでは、生産や輸出が鈍化するなど引き続き景気は減速している。
重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行が中国、台湾で消費等に、ASEAN諸国では観光業に悪影響を及ぼしている。一方、多くの国・地域でアメリカ向け輸出が持ち直している。

ユーロ圏の景気は弱い状態となっており、イギリスでは、景気は減速している。

ユーロ圏では、昨年秋以降のユーロ高の影響などから、輸出が減少傾向にある。ユーロは、このところ増価基調を一層強めており、5月末には対ドルで導入以来の最高値を更新した。企業マインドの悪化が続く中、成長率は低下し、景気は弱い状態となっている。特にドイツでは、成長率が2期連続でマイナスとなり、物価上昇率も低下が続くなど、景気後退に向かいつつある。フランスでは、内需が緩やかに増加していることから、景気は横ばいとなっている。こうした情勢をうけて、欧州中央銀行(ECB)は、6月5日に政策金利(短期買いオペの最低応札金利)を0.5%引き下げ、2.0%とすることを決定した。
イギリスでは、外需の低迷が続くなかで内需の伸びが鈍化しており、景気は減速している。

国際金融情勢等

金融情勢をみると、アメリカの株価は、5月から6月にかけて先行きの景気回復期待等から上昇した。アメリカの長期金利は、5月上旬の連邦公開市場委員会(FOMC)において、インフレ率がさらに低下するリスクに留意するとの認識が示されたこと等から、低下基調で推移した。また、ドルは対ユーロを中心に大幅な減価が続いている。
原油価格は、OPEC総会での減産観測等から5月上旬以降おおむね上昇基調で推移した。

(注)

<個人消費>

消費総合指数(内閣府試算値)は、3月(速報値)季節調整済前月比0.3%減の後、4月(速報値)は同0.4%減となった。なお、ここに掲げた消費総合指数は今月より改定値を採用している。作成方法については近日中に公表予定。
家計調査の全世帯実質消費支出は、3月季節調整済前月比0.4%増の後、4月(速報値)は同1.9%増(前年同月比1.2%減)となった。
家計調査の全世帯実質消費支出(除く自動車、住居、仕送り金等)は、4月(速報値)は季節調整済前月比0.4%増(前年同月比1.1%減)となった。
経済産業省「商業販売統計」の小売業販売額は、3月季調済前月比1.2%減の後、4月(速報値)は同2.3%減(前年同月比2.7%減)となった。また、百貨店販売額は、4月(速報値)は、前年同月比4.8%減(店舗調整後)(季節調整済前月比1.5%減(店舗調整前))となった。
チェーンストア販売額(日本チェーンストア協会調べ)は、3月前年同月比2.0%減(店舗調整後)の後、4月は同2.6%減(店舗調整後)(季節調整済前月比0.1%減(店舗調整前))となった。
乗用車(含軽)新車新規登録・届出台数は、4月前年同月比7.0%減の後、5月(速報値)は同0.8%減となった。
家電販売額(日本電気大型店協会調べ)は、3月前年同月比3.5%減の後、4月は同3.0%減となった。
大手旅行業者13社取扱金額は、3月国内旅行が前年同月比4.6%減、海外旅行が同9.9%減の後、4月国内旅行が同11.1%減、海外旅行が同47.4%減となった。
内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(季節調整済)は、12月前期差1.3ポイント悪化の後、3月同2.0ポイント悪化となった。内閣府「月次消費動向調査」の消費者態度指数(東京都、原数値)は、4月前月差1.7ポイント改善の後、5月同1.3ポイント改善した。

<設備投資>

平成15年1-3月期の設備投資を財務省「法人企業統計季報」(全規模全産業、ソフトウェアを除く)でみると、季節調整済前期比2.0%減(前年同期比3.0%減)となっており、うち製造業では同1.2%減(同5.5%減)、非製造業では同2.4%減(同1.9%減)となっている。
平成15年1-3月期の大中堅企業の設備投資を内閣府「法人企業動向調査」(実績見込)でみると、季節調整済前期比で1.1%減(前年同期比1.9%減)となっており、うち製造業では同2.4%減(同6.7%減)、非製造業では同3.4%減(同%0.1増)となっている。
経済産業省「鉱工業指数」により資本財出荷(除く輸送機械)をみると、3月は季節調整済前月比0.5%増(前年同月比0.3%減)の後、4月は同6.1%減(同0.6%増)となっている。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)により設備投資の動向(ソフトウェアを除く)をみると、大企業の平成15年度設備投資計画は、製造業で前年度比2.9%増、非製造業で同3.1%減となっており、全産業では同0.8%減となっている。また、中小企業では製造業で同11.2%減、非製造業で同15.4%減となっており、全産業では同14.4%減となっている。
経済産業省「特定サービス産業動態統計」でみると、受注ソフトウェア売上高は、2月は前年同月比9.0%減の後、3月は同3.4%減となっている。
機械受注(船舶・電力除く民需)は、3月は季節調整済前月比3.8%増(前年同月比11.7%増)の後、4月は同1.8%減(同4.3%増)となっている。なお、平成15年4-6月期(見通し、3月調査時点)の機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前期比10.5%減(前年同期比5.7%減)と見込まれている。
国土交通省「建築着工統計」により民間非居住用建築物の着工床面積をみると、3月は季節調整済前月比3.5%増の後、4月は同5.2%増となっている。

<住宅建設>

国土交通省「建築着工統計」によると、新設住宅着工総戸数(季節調整済前期比)は、平成14年4-6月期は0.4%増、7-9月期は3.3%減、10-12月期は1.0%減、平成15年1-3月期は1.8%増、4月は5.6%増となっており、うち共同建分譲住宅の着工(同)は、平成14年4-6月期は8.9%減、7-9月期は10.2%減、10-12月期は0.0%増、平成15年1-3月期は2.3%増、4月は27.5%増となった。また、新設住宅着工床面積(同)は、平成14年4-6月期は0.2%減、7-9月期は3.2%減、10-12月期は1.1%減、平成15年1-3月期は1.1%減、4月は5.8%増となった。
消費者の住宅取得マインドを示す指標のひとつである(社)日本リサーチ総合研究所「不動産購買態度指数」をみると、平成12年は、2月128、4月128、6月124、8月118、10月122、12月117、平成13年は、2月118、4月119、6月117、8月110、10月109、12月104、平成14年は、2月104、4月114、6月117、8月114、10月115、12月111、平成15年は、2月110、4月108となった。

<公共投資>

平成14年度の国の一般会計予算(補正後)を前年度補正後予算と比較すると、「改革推進公共投資」特別措置を含めた公共投資関連予算ベースでは15.9%減となっている。なお、平成15年度予算においては、公共投資関係費について、前年度比3.7%減と規模を縮減し、都市の再生や地方の活性化など、「平成15年度予算編成の基本方針」の重点4分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野へ重点化している。
地方の予算をみると、総務省がまとめた都道府県、政令指定都市の普通会計予算額(9月補正後)では、普通建設事業費は前年度比10.1%減、普通建設事業費のうち補助事業費、単独事業費は、それぞれ前年度比11.1%減、10.6%減となっている。なお、平成15年度地方財政対策においては、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比5.5%減とし、計画的な抑制と重点的な配分を行うとしている。また、時事通信社調査によれば、普通建設事業費は、都道府県で前年度比6.1%減、政令指定都市で同5.8%減、中核市で同8.9%減、その他の県庁所在市で同12.8%減となっており、これらを単純合計すると、前年度比6.4%減となっている(骨格予算、暫定予算を編成した地方公共団体を除く)。
公共機関からの1件500万円以上の建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年同月比で3月14.8%減の後、4月は6.1%減となった。同じく大手50社の建設工事受注額は、前年同月比で3月13.2%減の後、4月は8.0%増となった。公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で4月13.0%減の後、5月は16.4%減となった。公共工事出来高(建設総合統計)は、前年同月比で2月10.2%減の後、3月は10.3%減となり、内閣府にて季節調整を実施した結果によると、前月比で2月2.9%増の後、3月は3.8%減となった。

<輸出・輸入・国際収支>

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で3月0.2%増の後、4月は1.3%減(前年同月比7.1%増)となった。また、前期比で平成14年10-12月期は2.0%増の後、1-3月期は1.1%増(前年同期比8.7%増)となっている。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で3月は2.5%増の後、4月は0.8%減(前年同月比5.0%増)となった。また、前期比で平成14年10-12月期は0.7%増の後、1-3月期も0.7%増(前年同期比6.2%増)となっている。
貿易・サービス収支(季節調整値)の黒字は、平成15年3月は6,425億円の後、4月は6,303億円、通関収支差(季節調整値)は、平成15年3月は6,451億円の後、4月は8,025億円となった。

<生産・出荷・在庫>

4月の鉱工業生産指数(季節調整値、確報)は、一般機械や化学工業等が減少したことから、前月比1.5%減となった。
製造工業生産予測調査によると、前月比で、5月は輸送機械や電子部品・デバイス等の増加により2.6%増の後、6月は一般機械や電子部品・デバイス等の増加により1.1%増になると見込まれている。
4月の鉱工業生産者製品在庫指数(季節調整値、確報)は、前月比0.1%減となった。また、4月の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値、確報)は98.1となっている。
第3次産業活動指数(季節調整値)は、3月(速報)前月比0.5%増となった。また、1-3月の平均(3カ月移動平均値)による対3ヶ月前比(同10-12月平均対比)をみると0.4%増となっている。

<企業>

財務省「法人企業統計季報」によると、1-3月期の経常利益は全産業で前年同期比10.0%増、製造業は36.6%増、非製造業は1.2%減となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、平成14年度の経常利益は、全規模・全産業で、上期は前年同期比7.2%の増益、下期は同14.8%の増益、通期では前年比11.3%の増益、平成15年度の経常利益は、全規模・全産業で、上期は前年同期比11.8%の増益、下期は同14.9%の増益、通期では前年比13.5%の増益を見込んでいる。
日本経済新聞社によると、上場企業(金融を除く1,637社)の2003年3月期連結決算を集計した結果、全規模・全産業で経常利益は前年比70.9%の増益、2004年度3月期は同15.0%の増益を見込んでいる。
一方、業況判断について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査、業況水準について「良い」-「悪い」)をみると、大企業は△1%ポイント悪化して△12%ポイント、中小企業は2%ポイント改善して△33%ポイント、全規模合計では2%ポイント改善して△26%ポイントとなった。

<倒産>

企業の倒産については、東京商工リサーチ「倒産月報」によると、5月の企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は1,452件(前年同月比16.0%減)、負債総額は7,889億円(同40.9%減)となっており、帝国データバンク「全国企業倒産集計」によると、企業倒産件数は1,482件(同12.6%減)、負債総額は8,008億円(同26.2%減)となっている。また、大型倒産(負債額10億円以上)は、82件(同25.4%減)となっており、主な大型倒産としては、貸金業のアール・エス・ティー(負債2,124億円)など(東京商工リサーチ調べ)。

<雇用情勢>

総務省「労働力調査」によると、4月の完全失業率(季節調整値)は、男女計で前月比同水準の5.4%となった。完全失業者数(季節調整値)は、男女計で前月差3万人増の362万人となった。
労働力調査により内閣府にて季節調整を実施した結果によると、求職理由別完全失業者数(季節調整値)は、非自発的な離職による者は、前月差8万人減の137万人、自発的な離職による者は、同2万人減の122万人となった。
労働力調査によると、4月の雇用者数(季節調整値)は、男女計で3月前月比0.6%増の後、4月は同0.1%減の5,342万人となった。
労働力調査によると、失業期間1年以上の完全失業者数は1-3月平均112万人となった。完全失業者全体に占める失業期間1年以上の者の割合は1-3月平均31.1%となった。
厚生労働省「職業安定業務統計」の新規求人数は、3月季節調整済前月比0.9%減の後、4月は同0.8%増(前年同月比8.0%増)となった。有効求人数は、3月同0.7%減の後、4月は同0.3%増(同9.2%増)となった。新規求職件数は、3月同7.7%減の後、4月は同3.9%増(同5.4%減)となった。有効求職者数は、3月同0.6%増の後、4月は同0.5%減(同5.5%減)となった。新規求人倍率(季節調整値)は3月1.06倍の後、4月1.03倍となった。有効求人倍率(季節調整値)は、3月0.60倍の後、4月0.60倍となった。
毎月勤労統計調査によると、所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では3月季節調整済前月比0.3%増(前年同月比14.4%増)の後、4月は同0.6%増(同11.1%増)となった。
厚生労働省「労働経済動向調査」によると、雇用調整実施事業所割合は、産業計では10-12月期の23%から1-3月期は22%となった。
毎月勤労統計調査によると、きまって支給する給与は、事業所規模5人以上では3月季節調整済前月比横ばい(前年同月比0.1%増)の後、4月は同0.5%減(同0.4%減)(速報値)となった。現金給与総額は、事業所規模5人以上では4月前年同月比0.6%減(速報値)となった。

<物価>

日本銀行「企業物価指数」の輸出物価(円ベース)は、平成15年5月(速報値)は前月比0.8%の下落(前年同月比3.1%の下落)、3ヶ月前比は0.4%の下落となった。輸入物価(円ベース)は、5月(速報値)は前月比3.0%の下落(前年同月比2.5%下落)、3ヶ月前比は3.3%の下落となった。また、国内企業物価は、5月(速報値)は前月比0.3%の下落(前年同月比1.0%下落)、3ヶ月前比は0.4%の下落となった。
日本銀行「企業向けサービス価格指数」の4月の企業向けサービス価格は前年同月比0.7%の下落(前月比0.5%の下落)となった。
総務省「消費者物価指数(全国)」の生鮮食品を除く総合は、4月は前年同月比0.4%の下落(季節調整済前月比保合い)、2-4月平均の前年同期比は0.6%の下落となった。一般サービスは、4月は前年同月比0.2%の下落、2-4月平均の前年同期比は0.1%の下落となった。一般商品は、4月は前年同月比1.1%の下落、2-4月平均の前年同期比は1.1%の下落となった。公共料金は、4月は前年同月比0.9%の上昇、2-4月平均の前年同期比は0.2%の下落となった。また、「消費者物価指数(東京都区部、中旬速報値)」の生鮮食品を除く総合は、5月は前年同月比0.4%の下落(季節調整済前月比0.1%の下落)、3-5月平均の前年同期比は0.5%の下落となった。

<金融>

無担保コールオーバーナイトレートは、5月は、0.001~0.002%で推移した。3ヶ月物ユーロ円TIBORは、5月は、0.07%台で推移した。10年物国債流通利回りは、5月は、0.5%台~0.6%台で推移した。
東証株価指数(TOPIX)は、5月末は837ポイントとなった。日経平均株価は、5月末は8,424円となった。
対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、5月末は118.35円となった。対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、5月末は140.65円となった。
マネタリーベース(月中平均残高)は、5月(速報)は前年同月比16.7%増となった。5月の日銀当座預金平均残高は27.0兆円となった。M2+CD(月中平均残高)は、前年同月比1.6%増となった(5月速報)。広義流動性は、5月(速報)は前年同月比0.5%減(簡易保険福祉事業団保有金融資産の日本郵政公社への承継による影響を除くと1.7%増)となった。金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、5月(速報)は前年同月比4.7%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.3%減)となった。5月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債型新株予約権付社債の発行はなかった。また、国内公募事業債の起債実績は、10,720億円(銀行起債の普通社債は2,600億円)となった。国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、4月は前月比で短期は0.036%ポイント上昇し、長期は0.150%ポイント上昇したことから、総合では0.080%ポイント上昇し1.690%となった。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、資金繰り判断は横ばい、金融機関の貸出態度は若干改善している。

<景気ウォッチャー調査>

内閣府「景気ウォッチャー調査」の5月の現状判断DIは、前月を0.3ポイント下回り、38.4となった。先行き判断DIは、前月を0.7ポイント上回り、42.6となった。