月例経済報告(平成14年12月)
―景気は、持ち直しに向けた動きが弱まっており、おおむね横ばいで推移している。―
先行きについては、世界経済が緩やかに回復すれば、景気は引き続き持ち直しに向かうことが期待される。一方、アメリカ経済等への先行き懸念や我が国の株価の低迷など、厳しい環境が続いており、我が国の最終需要が引き続き下押しされる懸念が存在している。
平成14年12月18日
内閣府
総論
(我が国経済の基調判断)
景気は、持ち直しに向けた動きが弱まっており、おおむね横ばいで推移している。
- 企業収益は改善しており、設備投資は下げ止まりつつある。
- 雇用情勢は、求人が増加傾向にあるものの、失業率がこれまでの最高水準となるなど、依然として厳しい。
- 個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。
- 輸出は弱含んでおり、生産は横ばいとなっている。
先行きについては、世界経済が緩やかに回復すれば、景気は引き続き持ち直しに向かうことが期待される。一方、アメリカ経済等への先行き懸念や我が国の株価の低迷など、厳しい環境が続いており、我が国の最終需要が引き続き下押しされる懸念が存在している。
(政策の基本的態度)
政府は、先般とりまとめた「改革加速のための総合対応策」を着実に実施している。加えて、現下の金融・経済情勢に応じ構造改革の取組への更なる政策強化を行うことが必要であるとの認識の下、この総合対応策を補完・強化するため、12月12日に「改革加速プログラム」を決定した。これに基づき、財政規律を守りつつ、平成14年度補正予算を編成し、年度を通じた切れ目のない対応を図る。
また、11月29日には、昨年度に引き続き「改革断行予算」を実現するとの方針を示した「平成15年度予算編成の基本方針」を閣議決定した。
デフレ克服及び金融システム安定化に向け、政府・日本銀行は引き続き一体となって強力かつ総合的な取組を行う。
各論
1.消費・投資などの需要動向
平成14年7-9月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)がマイナスに寄与したものの、民間最終消費支出、民間在庫品増加がプラスに寄与したことなどから、前期比で0.8%増(年率3.2%増)となった。また、名目GDPの成長率は前期比で0.4%増となった。
個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。
個人消費は、収入面での弱い動きが続くなど家計を取り巻く環境が厳しい中で、需要側と販売側の動向を総合してみると、年初来、消費支出の動向は横ばいで推移している。全体的な基調の改善につながる動きではないものの、一部の業種や支出項目において増加の動きがみられ、引き続き一部に底固さがみられる。
需要側の動向をみると、昨秋以降底固さがみられる。消費総合指数は3ヶ月前と比べ増加している。支出項目ごとの動向について家計調査をみると、実質消費支出は、前月に大きく増加した反動や、教育や食料などが減少したことなどから、前月に比べて減少した。
販売側の動向をみると、全体的に弱い動きとなっている。小売業販売額は弱い動きが続いている。チェーンストア販売額は、食料品は引き続き前年を上回ったものの、全体では前年を下回った。百貨店販売額は、天候要因もあって衣料品が前年を下回り、全体でも前年を下回った。新車販売台数は、小型乗用車が大幅に増加し引き続き好調に推移したことから、前年を上回った。家電販売金額は、テレビ等が引き続き増加し、パソコンもこのところ減少幅を縮小してきているものの、全体では前年を下回った。旅行は、国内旅行はほぼ前年並みとなり、海外旅行は米国における同時多発テロ事件の影響もあって昨年大きく減少した反動から、前年を大きく上回った。
消費者マインドは、持ち直しの動きがみられたが、足元ではやや弱い動きとなっている。
設備投資は、下げ止まりつつある。
設備投資は、平成13年に入って以降減少が続いてきたが、生産の持ち直し及び企業収益の改善を受けてこのところ下げ止まりつつある。需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、平成13年1-3月期以降減少が続いてきたが、このところ次第に減少幅が縮小してきている。また、機械設備投資の供給側統計である資本財出荷は、横ばいとなっている。なお、これまで堅調に推移してきたソフトウェア投資は、弱含んでいる。
設備投資の今後の動向については、機械設備投資の先行指標である機械受注が平成14年前半において底入れしたものとみられることから、次第に底入れに向かうものとみられる。ただし、機械受注の10-12月期の見通しにみられる回復力の弱さや、日銀短観の平成14年度設備投資計画において減少が見込まれていること等を考慮すれば、底入れした後も低調に推移することが見込まれる。
住宅建設は、緩やかに減少している。
平成13年度の住宅建設は、前年度比3.3%減の117.3万戸となり、平成10年度以来3年ぶりに120万戸を下回る低い水準となった。平成14年度に入って、マンションの着工が減少したこと等から、4-6月期は年率118.0万戸、7-9月期は年率113.0万戸となり、このところ緩やかに減少している。
10月は、持家、貸家、分譲住宅の全てが増加し、特にマンションが大きく増加したことから、年率119.1万戸となった。先行きについては、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、こうしたことが引き続き住宅着工を減少させる要因になるものと見込まれる。
公共投資は、総じて低調に推移している。
平成14年度当初における公共事業関連予算をみると、国、地方とも歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行っていることから、国の施設費を含む公共投資関係費は、前年度比10.7%減、地方の投資的経費のうち単独事業費は、地方財政計画では、前年度比10.0%減となっている。
このような状況を反映して、公共投資は、総じて低調に推移している。平成14年度に入って、今年度に繰り越された平成13年度第2次補正予算の下支え効果がみられたものの、4-6月期は引き続き前年を下回り、7-9月期も前年を下回った。このところの動きをみると、公共工事出来高が6月以降4ヶ月連続で前月比増加となっている。
10-12月期の公共投資については、10月、11月の公共工事請負金額も前年を下回っており、国、地方の予算状況を踏まえると、引き続き前年を下回るものと考えられる。
なお、「改革加速プログラム」(12月12日決定)を受けて編成する補正予算においては、構造改革推進型の公共投資に国費ベースで1.5兆円程度(事業規模で2.6兆円程度)を計上するなどの予算措置を講じることとしている。
輸出は、弱含んでいる。輸入は、増加している。貿易・サービス収支の黒字は、やや縮小している。
輸出は、IT関連などの最終需要の伸びが世界的に鈍化するなかで、年初来の在庫積み増しの動きに一服感がみられており、電気機器を中心にこのところ弱含んでいる。地域別にみると、アジア向け輸出は、各品目及び全体としてもおおむね横ばいとなっている。アメリカ向け輸出は、自動車などの輸送用機械が横ばい、一般機械、電気機器などが弱含んでおり、全体として弱含んでいる。EU向け輸出は、ユーロ圏において景気が減速しつつあること等を背景に、減少している。今後については、世界の景気回復に弱い動きがみられていることに留意する必要がある。
輸入は、生産が横ばいとなっていることを背景にIT関連等の機械機器輸入が鈍化しているものの、鉱物性燃料等の輸入が増加していることから、全体として増加している。地域別にみると、アジアからの輸入は、金属・同製品、原料品等を中心に増加している。EUからの輸入は横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、10月は米国西海岸地区における港湾ストライキの影響により急減したものの、基調としてみれば、おおむね横ばい圏内の動きとなっている。
国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、輸入数量が増加するなか、輸出数量が弱含んでいることから、やや縮小している。
2.企業活動と雇用情勢
生産は、横ばいとなっている。
鉱工業生産は、在庫調整が終了していること等を背景に3四半期連続で増加してきた。しかし、このところ輸出が弱含んでいること等を反映し、生産は横ばいとなっている。
また、世界経済の先行き懸念の高まり等、留意すべき点もある。なお、製造工業生産予測調査によると11月は減少、12月は増加が見込まれている。
一方、第3次産業活動の動向をみると、おおむね横ばいで推移している。
企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、緩やかながら、引き続き改善がみられる。倒産件数は、減少している。
「法人企業統計季報」によると、平成13年7-9月期以降、電機機械等の製造業を中心に大幅な減益となっていた企業収益は、平成14年7-9月期には、売上高は引き続き減収となったものの、企業のリストラ努力等により増益に転じた。また、日銀短観によると、下期については大幅な増益を見込んでいる。
企業の業況判断について、日銀短観をみると、中小企業では低い水準にあり、依然厳しさがみられるものの、製造業を中心に緩やかながら、引き続き改善がみられる。先行きについては、若干の悪化を見込んでおり、慎重な見方が出てきている。
また、11月の倒産件数は、東京商工リサーチ調べで1,435件となるなど、減少している。
雇用情勢は、依然として厳しい。求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでの最高水準となり、賃金も弱い動きが続いている。
10月の完全失業率は、前月比0.1%ポイント上昇し5.5%と、過去最高となった昨年12月と並んだ。完全失業者について求職理由別にみると、最も多い非自発的な離職による者は微減となり、10月は自発的な離職による者が増加した。完全失業者全体に占める失業期間1年以上の者の割合は、若干低下した。雇用者数については、3ヶ月連続で前月比減少となり、弱含んでいる。
新規求人数は、引き続き増加傾向にある。有効求人倍率については、引き続き緩やかに上昇している。製造業の残業時間については、生産の動きを反映し2ヶ月連続で前月比減少し、増加傾向が弱まっている。企業の雇用過剰感は、若干低下したものの、依然として高い水準にある。7-9月期に「残業規制」等の雇用調整を実施した事業所割合は、低下している。
賃金の動きをみると、定期給与は前月比で増加したものの、前年同月比では減少が続いており、弱い動きが続いている。
3.物価と金融情勢
国内卸売物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、弱含んでいる。
輸入物価は、このところ契約通貨ベース、円ベースともに上昇しているが、足元では、為替の影響により、円ベースでは下落している。国内卸売物価は、横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、電力・都市ガス・水道、電気機器などが下落しているものの、在庫調整の進展により鉄鋼、パルプ・紙・同製品が上昇しているほか、輸入価格の上昇により石油・石炭の上昇幅が拡大している。また、企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
消費者物価は、平成12年秋以降弱含んでいる。最近の動きを類別にみると、一般サービスは横ばいとなっているものの、その他工業製品の下落幅拡大や耐久消費財の下落などにより一般商品が下落しているほか、公共料金の下落幅が拡大している。
こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。
金融情勢をみると、株式相場は、11月下旬に9,200円台(日経平均株価)まで上昇した後、下落している。長期金利は、0.9%台~1.0%台の水準で推移している。
短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、日本銀行による金融緩和措置を反映して、0.001~0.002%で推移した。2、3ヶ月物は、ほぼ横ばいで推移した。長期金利は、国債増発懸念の後退等を受け、10月中旬より低下し、11月上旬に0.9%台となった後、0.9%台~1.0%台の水準で横ばいで推移した。
株式相場は、11月中旬に、日経平均株価、TOPIXとも下落し、89年以降の最安値を更新した。その後、米国株価の上昇を受けて11月下旬に9,200円台(日経平均株価)まで上昇したが、12月に入って下落している。
対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、10月下旬から11月中旬にかけて、125円台から119円台まで上昇し、12月上旬にかけて125円台まで下落した後、122円台から123円台で推移している。対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、10月上旬から11月下旬にかけて、120円台から123円台で推移し、12月に入り125円台まで下落した後、123円台から125円台で推移している。
マネタリーベース(月中平均残高)は、日本銀行の潤沢な資金供給など(11月日銀当座預金平均残高18.1兆円)を背景に、約2割の伸びとなっている。(11月:前年同月比21.8%)。M2+CD(月中平均残高)は、このところ、3%台前半で推移している(11月速報:前年同月比3.2%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、96年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷等を背景に、依然低調に推移している(主要行の14年度中間決算時点の貸出残高計は13年度決算時と比べ5.5%減となった)。貸出金利は、金融緩和等を背景に、昨年初来低下傾向で推移して来たが、このところ横ばい圏で推移している。企業の資金繰りの状況は横ばいとなっており、民間債と国債との流通利回りスプレッドはほぼ横ばいで推移している。
4.海外経済
世界の景気は回復に弱い動きがみられる。
世界の景気は回復に弱い動きがみられる。
アメリカでは、景気の回復力が弱まっている。個人消費の伸びは鈍化傾向が続いている。住宅建設は高い水準にある。設備投資は機械設備等を中心に持ち直しに向けた動きがみられる。生産は減少している。雇用はほぼ横ばいとなっており、製造業では減少が続いている。また、失業率は上昇している。物価は安定している。
アジアをみると、景気は回復しているものの、一部で回復が緩やかになっている。中国では、景気の拡大テンポは高まっている。韓国では、景気は拡大しているが、内需の伸びに鈍化の動きがみられる。タイでは、景気は拡大している。台湾、マレイシアでは、景気は緩やかに回復している。シンガポールでは、景気の回復は一層緩やかになっている。
ヨーロッパをみると、(1)ユーロ圏では、景気は減速しつつある。ドイツ、フランスでは景気は減速している。(2)イギリスでは、景気は回復の動きが続いているものの、企業景況感は悪化している。
金融情勢をみると、アメリカの株価は、11月は一部企業の決算や業績見通しが市場予想を上回ったことから上昇基調で推移したが、その後大手航空会社の経営破綻等から弱含んだ。アメリカの長期金利、ドルとも11月に強含んだが、その後弱含んだ。
ユーロ圏では、欧州中央銀行(ECB)が、12月5日に政策金利(短期オペの最低応札金利)を0.50%ポイント引下げ、2.75%とした。
国際商品市況をみると、原油価格は、イラクに対する国連査察の開始等を受けて上昇した。
(注)
<個人消費>
消費総合指数(需要側、内閣府試算値、後方3ヶ月移動平均)は、平成14年9月(速報値)季節調整済3ヶ月前比1.0%増の後、10月(速報値)は同1.8%増となった。
消費総合指数の作成方法:総務省「家計調査」から、GDPの個人消費には含まれない「仕送り金」、「修繕費」や、振れが大きい高額消費である「自動車等購入」などを除外した後、世帯数を乗ずるなどしてマクロの消費ベースにする。これに、自動車、家賃、医療費について別途供給側の統計を用いて計算したものを加える。詳細は、ディスカッションペーパー(https://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/menu.html)を参照。
家計調査の全世帯実質消費支出は、9月季節調整済前月比5.1%増の後、10月(速報値)は同2.3%減(前年同月比0.0%)となった。
家計調査の全世帯実質消費支出(除く自動車、住居、仕送り金等)は、10月(速報値)は季節調整済前月比2.7%減(前年同月比1.3%増)となった。
経済産業省「商業販売統計」の小売業販売額は、9月季調済前月比0.0%の後、10月(速報値)は同2.0%減(前年同月比2.8%減)となった。また、百貨店販売額は、10月(速報値)は、前年同月比3.5%減(店舗調整後)(季節調整済前月比5.5%減(店舗調整前))となった。
チェーンストア販売額(日本チェーンストア協会調べ)は、9月前年同月比1.3%減(店舗調整後)の後、10月は同2.7%減(店舗調整後)(季節調整済前月比2.3%減(店舗調整前))となった。
乗用車(含軽)新車新規登録・届出台数は、10月前年同月比6.7%増の後、11月(速報値)は同5.7%増となった。
家電販売額(日本電気大型店協会調べ)は、9月前年同月比1.9%減の後、10月は同2.5%減となった。
大手旅行業者13社取扱金額は、9月国内旅行が前年同月比1.8%減、海外旅行が同22.1%増の後、10月国内旅行が同0.3%増、海外旅行が同89.9%増となった。
内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(季節調整済)は、6月前期差0.9ポイント改善の後、9月同0.3ポイント改善となった。内閣府「月次消費動向調査」の消費者態度指数(東京都、原数値)は、10月前月差1.0ポイント悪化の後、11月同0.6ポイント改善した。
<設備投資>
平成14年7-9月期の設備投資を財務省「法人企業統計季報」(全規模全産業、ソフトウェアを除く)でみると、季節調整済前期比で2.0%減(前年同期比13.9%減)となっており、うち製造業では同4.8%減(同23.1%減)、非製造業では同0.8%減(同8.8%減)となっている。
経済産業省「鉱工業指数」により資本財出荷(除く輸送機械)をみると、季節調整済前月比で9月は4.9%減(前年同期比1.9%減)の後、10月は同1.5%減(同1.1%減)となっている。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)により設備投資の動向(ソフトウェアを除く)をみると、大企業の平成14年度設備投資計画は、製造業で前年度比10.7%減、非製造業で同4.3%減となっており、全産業では同6.8%減となっている。また、中小企業では製造業で同6.6%減、非製造業で同3.2%減となっており、全産業では同4.1%減となっている。
経済産業省「特定サービス産業動態統計」でみると、受注ソフトウェア売上高は、9月は前年同月比3.8%減の後、10月は8.7%減となっている。
機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前月比で9月は12.7%増(前年同月比2.7%減)の後、10月は同4.1%減(同1.9%増)となっている。なお、平成14年10-12月期(見通し、9月調査時点)の機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前期比で6.5%減(前年同期比8.5%減)と見込まれている。
民間からの建設工事受注(50社、非住宅)は、季節調整済前月比で9月は0.4%増(前年同月比8.9%減)の後、10月は同24.3%増(同6.5%増)となっている。
<住宅建設>
国土交通省「建築着工統計」によると、新設住宅着工総戸数(季節調整済前期比)は、平成14年4-6月期は1.4%増、7-9月期は4.2%減、10月は6.8%増となっており、うち共同建分譲住宅の着工(同)は、平成14年4-6月期は6.9%減、7-9月期は14.6%減、10月は30.5%増となった。また、新設住宅着工床面積(同)は、平成14年4-6月期は0.6%増、7-9月期は3.8%減、10月は6.5%増となった。
消費者の住宅取得マインドを示す指標のひとつである(社)日本リサーチ総合研究所「不動産購買態度指数」をみると、平成12年は、2月128、4月128、6月124、8月118、10月122、12月117、平成13年は、2月118、4月119、6月117、8月110、10月109、12月104、平成14年は、2月104、4月114、6月117、8月114、10月115となった。
<公共投資>
平成14年度の国の一般会計予算(当初)をみると、施設費を含む公共投資関係費について、前年度比10.7%減と規模を縮減しつつ、「予算編成の基本方針」の重点7分野に重点化している。
地方の予算をみると、平成14年度地方財政計画では、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比10.0%減としつつ、国の歳出予算と歩を一にして歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行うこととしている。総務省がまとめた都道府県、政令指定都市の当初予算額(普通会計)では、普通建設事業費は、都道府県で前年度比9.8%減、政令指定都市で同13.4%減、両者を合わせると同10.3%減となっている。また、時事通信社調査によれば、普通建設事業費は、都道府県で前年度比9.8%減、政令指定都市で同12.9%減、中核市で同7.8%減、その他の県庁所在市で同12.6%減となっており、これらを単純合計すると、前年度比10.1%減となっている(骨格予算を編成した地方公共団体などを除く)。
公共機関からの1件500万円以上の建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年同月比で8月18.7%減の後、9月は6.2%減となった。同じく大手50社の建設工事受注額は、前年同月比で9月4.0%減の後、10月は7.2%増となった。公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で10月6.4%減の後、11月は8.6%減となった。公共工事出来高(建設総合統計)は、前年同月比で8月5.3%減の後、9月は4.7%減となり、内閣府にて季節調整を実施した結果によると、前月比で8月1.2%増の後、9月は0.6%増となった。
<輸出・輸入・国際収支>
通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で9月5.0%減の後、10月は5.0%増(前年同月比12.5%増)となった。また、前期比で4-6月期7.3%増の後、7-9月期は1.5%減(前年同期比11.9%増)となっている。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で9月3.6%増の後、10月2.0%減(前年同月比1.6%増)となった。また、前期比で4-6月期2.1%増の後、7-9月期は5.4%増(前年同期比7.8%増)となっている。
貿易・サービス収支(季節調整値)の黒字は、9月3,853億円の後、10月は6,084億円となり、通関収支差(季節調整値)は、9月6,083億円の後、10月は8,973億円となった。
<生産・出荷・在庫>
10月の鉱工業生産指数(季節調整値、確報)は、一般機械や輸送機械等が減少したことから、前月比0.2%減となった。
製造工業生産予測調査によると、前月比で11月はその他や一般機械等の減少により0.1%減の後、12月は輸送機械や鉄鋼等の増加により0.6%増になると見込まれている。
10月の鉱工業生産者製品在庫指数(季節調整値、確報)は、前月比0.6%増となった。また、10月の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値、確報)は98.0となっている。
9月の第3次産業活動指数(季節調整値、速報)は、運輸・通信業、不動産業等が減少した結果、前月比0.1%減となった。
<企業>
財務省「法人企業統計季報」によると、7-9月期の経常利益は全産業で前年同期比20.5%増、製造業は48.8%増、非製造業は7.5%増となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、平成14年度の経常利益は、全規模・全産業で、上期は前年同期比5.7%の増益、下期は同16.8%の増益、通期では前年比11.6%の増益を見込んでいる。
一方、業況判断について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(12月調査、業況水準について「良い」-「悪い」)をみると、大企業は2%ポイント改善して△11%ポイント、中小企業は3%ポイント改善して△35%ポイント、全規模合計では2%ポイント改善して△28%ポイントとなった。
<倒産>
企業の倒産については、東京商工リサーチ「倒産月報」によると、11月の企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は1,435件(前年同月比20.8%減)、負債総額は5,704億円(同69.5%減)となっており、帝国データバンク「全国企業倒産集計」によると、企業倒産件数は1,433件(同22.6%減)、負債総額は5,756億円(同69.4%減)となっている。また、大型倒産(負債額10億円以上)は、80件(同42.0%減)となっており、主な大型倒産としては、東証1部上場の中堅ゼネコンの古久根建設(負債429億円)など(東京商工リサーチ調べ)。
<雇用情勢>
総務省「労働力調査」によると、10月の完全失業率(季節調整値)は、男女計で前月比0.1%ポイント上昇し、5.5%となった。完全失業者数(季節調整値)は、男女計で前月差7万人増の370万人となった。
労働力調査により内閣府にて季節調整を実施した結果によると、求職理由別完全失業者数(季節調整値)は、非自発的な離職による者は、前月差4万人減の160万人となった。自発的離職による者は、前月差13万人増の123万人となった。
労働力調査によると、失業期間1年以上の完全失業者数は4-6月平均108万人の後、7~9月平均105万人となった。完全失業者全体に占める失業期間1年以上の者の割合は4-6月平均30.7%の後、7-9月平均29.5%となった。
労働力調査によると、10月の雇用者数(季節調整値)は、男女計で9月前月比0.5%減の後、10月は同0.6%減の5,301万人となった。
厚生労働省「職業安定業務統計」の新規求人数は、9月季節調整済前月比3.7%増の後、10月は同4.2%増(前年同月比10.7%増)となった。有効求人数は、9月同1.9%増の後、10月は同1.2%増(同5.2%増)となった。新規求職件数は、9月同9.7%増の後、10月は同1.5%減(同2.6%増)となった。有効求職者数は、9月同0.3%増の後、10月は同0.2%減(同2.0%増)となった。新規求人倍率(季節調整値)は9月0.93倍の後、10月0.98倍となった。有効求人倍率(季節調整値)は、9月0.55倍の後、10月0.56倍となった。
毎月勤労統計調査によると、所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では9月季節調整済前月比0.1%減(前年同月比12.7%増)の後、10月は同0.6%減(同14.2%増)(速報値)となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」によると、企業の雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では、9月調査の15%ポイントから、12月調査では14%ポイントとなった。製造業では、9月調査の22%ポイントから、12月調査では21%ポイントとなった。非製造業では、9月調査の11%ポイントから、12月調査では10%ポイントとなった。
厚生労働省「労働経済動向調査」によると、雇用調整実施事業所割合は、産業計では4-6月期の27%から7-9月期は25%となった。
毎月勤労統計調査によると、きまって支給する給与は、事業所規模5人以上では9月季節調整済前月比0.3%減(前年同月比1.0%減)の後、10月は同0.2%増(同0.9%減)(速報値)となった。
<物価>
日本銀行「卸売物価指数」の輸出物価(円ベース)は、11月は前月比1.5%の下落(前年同月比保合い)、9-11月平均の3ヶ月前比(6-8月平均対比、以下同じ)は1.0%の上昇となった。輸入物価(円ベース)は、11月は前月比1.2%の下落(前年同月比5.7%上昇)、9-11月平均の3ヶ月前比は3.6%の上昇となった。また、国内卸売物価は、11月は、前月比0.1%の上昇(前年同月比0.3%下落)、3ヶ月前比は保合いとなった。
日本銀行「企業向けサービス価格指数」の10月の企業向けサービス価格は前年同月比0.9%の下落(前月比0.4%上昇)となった。
総務省「消費者物価指数(全国)」の生鮮食品を除く総合は、10月は前年同月比0.9%の下落(季節調整済前月比0.3%下落)、8-10月平均の前年同期比は0.9%の下落となった。一般サービスは、10月は前年同月比0.1%の下落、8-10月平均の前年同期比は保合いとなった。一般商品は、10月は前年同月比1.6%の下落、8-10月平均の前年同期比は1.8%の下落となった。公共料金は、10月は前年同月比0.8%の下落、8-10月平均の前年同期比は0.7%の下落となった。また、「消費者物価指数(東京都区部、中旬速報値)」の生鮮食品を除く総合は、11月は前年同月比0.7%の下落(季節調整済前月比保合い)、9-11月平均の前年同期比は0.8%の下落となった。
<金融>
無担保コールオーバーナイトレートは、11月は、0.001~0.002%で推移した。3ヶ月物ユーロ円TIBORは、11月は、0.07%台~0.08%台で推移した。10年物国債流通利回りは、11月は、0.9%台~1.0%台で推移した。
東証株価指数(TOPIX)は、11月末には892ポイントとなった。日経平均株価は、11月末には9,215円となった。
広義流動性は、11月(速報)は前年同月比1.1%増となった。金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、11月(速報)は前年同月比4.4%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.3%減)となった。主要12行(14年3月期は13行)の貸出残高は14年9月期269.3兆円(14年3月期284.9兆円)となっている(単体ベース、銀行勘定貸出と元本補填契約のある信託勘定貸出の合計)。11月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が100億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は、6,120億円(銀行起債の普通社債は無し)となった。国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、10月は前月比で短期は0.123%ポイント低下し、長期は0.110%ポイント上昇したことから、総合では0.041%ポイント低下し1.609%となった。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、資金繰り判断は横ばい、金融機関の貸出態度は若干悪化している。
<景気ウォッチャー調査>
内閣府「景気ウォッチャー調査」の11月の現状判断DIは、前月を1.4ポイント下回り、36.7となった。先行き判断DIは、前月を1.8ポイント下回り、38.0となった。