月例経済報告(平成14年9月)

―景気は、一部に持ち直しの動きがみられるものの、環境は厳しさを増している。―

先行きについては、景気は持ち直しに向かうことが期待されるが、アメリカ経済等への先行き懸念や我が国の株価の下落など、環境は厳しさを増しており、我が国の最終需要が下押しされる懸念が強まりつつある。

平成14年9月18日

内閣府

総論

(我が国経済の基調判断)

景気は、一部に持ち直しの動きがみられるものの、環境は厳しさを増している。

  • 雇用情勢は、一部に改善への動きがみられるものの、失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
  • 個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。
  • 企業収益は横ばいとなっており、設備投資は下げ止まりの兆しがみられる。
  • 輸出は増加している。生産は持ち直しの動きが緩やかになっている。

先行きについては、景気は持ち直しに向かうことが期待されるが、アメリカ経済等への先行き懸念や我が国の株価の下落など、環境は厳しさを増しており、我が国の最終需要が下押しされる懸念が強まりつつある。

(政策の基本的態度)

政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」を早期に具体化する中で、「金融システム改革」、「税制改革」をはじめとした構造改革の取組を加速し、デフレ克服を進める。

また、デフレ克服に向け、政府・日本銀行は引き続き一体となって強力かつ総合的な取組を行う。

各論

1.消費・投資などの需要動向

平成14年4-6月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、民間企業設備がマイナスに寄与したものの、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)がプラスに寄与したことなどから、前期比で0.6%増(年率2.6%増)となった。また、名目GDPの成長率は前期比で0.1%減となった。

個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。

個人消費は、需要側と販売側の動向を総合してみると、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。所得面で弱い動きが続いていることなどから全体的な基調の改善には至らないものの、消費者マインドに持ち直しの動きがみられることなどから一部の業種や支出項目においては増加の動きがみられる。
需要側の動向をみると、昨秋以降底固さがみられる。消費総合指数は3ヶ月前と比べほぼ横ばいとなっている。支出項目ごとの動向について家計調査をみると、実質消費支出は、一時的な要因による増減がみられるものの、このところの基礎的な支出項目にみられる底固さには変化がない。
販売側の動向をみると、天候等の一時的な要因もあって、全体的に弱い動きとなっている。小売業販売額は弱い動きが続いている。チェーンストア販売額は、食料品が前年並みにとどまったものの、全体では大きく前年を下回った。百貨店販売額は、昨夏以降一進一退を続けているものの、足元で弱含んできている。新車販売台数は、軽乗用車と小型乗用車が引き続き好調に推移し、特に小型乗用車が大きく増加したことから、前年を大きく上回った。家電販売金額は、テレビ等が引き続き増加しているものの、パソコンやエアコンが前年を大きく下回っていることから、全体では前年を大きく下回った。旅行は、国内旅行、海外旅行とも前年を下回っているものの、前月と比べて減少幅を縮小している。
消費者マインドは、依然として水準は低いものの、持ち直しの動きがみられる。

設備投資は、下げ止まりの兆しがみられる。

設備投資は、生産及び企業収益の減少等を背景に平成13年に入って以降減少が続いてきたが、このところ下げ止まりの兆しがみられる。需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、平成13年1-3月期以降減少が続いてきたが、このところ減少幅が縮小している。規模別にみると大中堅企業に比べ中小企業の減少幅の方が大きい。また、機械設備投資の供給側統計である資本財出荷は、平成13年に入って以降減少が続いていたが、このところ下げ止まりつつある。なお、これまで堅調に推移してきたソフトウェア投資は、弱含んでいる。
設備投資の今後の動向については、機械設備投資の先行指標である機械受注が平成13年1-3月期以降減少基調で推移してきたが、底入れから反転に向かいつつあるとみられることから、次第に底入れから反転に向かうものとみられる。ただし、日銀短観の平成14年度設備投資計画において減少が見込まれていることなどを考慮すれば、底入れした後も低調に推移することが見込まれる。

住宅建設は、弱含みとなっている。

平成13年度の住宅建設は、貸家は増加したものの、これまで堅調であったマンションの着工が落ち着いてきたことに加え、公庫持家の着工が大きく水準を下げて推移したこと等から、前年度比3.3%減の117.3万戸と平成10年度以来3年ぶりに120万戸を下回る低い水準となった。平成14年4-6月期についても、年率118.0万戸と120万戸を下回った。
7月は、持家は増加したものの、マンションが大きく減少したことなどから、年率113.6万戸となった。先行きについては、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、こうしたことが引き続き住宅着工を減少させる要因になるものと見込まれる。

公共投資は、総じて低調に推移している。

公共投資は、総じて低調に推移している。平成14年度当初における公共事業関連予算をみると、国、地方とも歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行っていることから、国の施設費を含む公共投資関係費は、前年度比10.7%減、地方の投資的経費のうち単独事業費は、地方財政計画では、前年度比10.0%減となっている。
このような状況の中で、公共工事請負金額、大手50社受注額は、5月に前年を上回るなど今年度に繰り越された平成13年度第2次補正予算の下支え効果がみられたが、4-6月期では、引き続き前年を下回った。
7-9月期の公共投資については、7月の公共工事請負金額も前年を下回っており、国、地方の予算状況を踏まえると、引き続き前年を下回るものと考えられる。

輸出は、アジア向けを中心に増加している。輸入は、緩やかに増加している。貿易・サービス収支の黒字は、増加している。

輸出は、世界的な景気回復を背景に、半導体等電子部品などの電気機器や一般機械が増加、輸送用機器も堅調に推移しており、全体でも増加している。地域別にみると、アジア向け輸出は、電気機器、一般機械、輸送用機器を中心に増加している。アメリカ向け輸出は、電気機器と一般機械を中心に緩やかに増加している。EU向け輸出は、電気機器、輸送用機器を中心に緩やかに増加している。今後については、世界景気の緩やかな回復が、引き続き我が国輸出にとっての増加要因になるとみられるが、アメリカ経済等への先行き懸念が高まりつつあることなどに留意する必要がある。
輸入は、電気機械などにおける生産の持ち直しの動きを背景に、IT関連など機械機器の輸入が増加しており、全体として緩やかに増加している。地域別にみると、アジアからの輸入は、機械機器、化学製品などの輸入が堅調に推移しており、増加している。EUからの輸入は横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、航空機など機械機器の輸入が増加していることを背景に、増加している。
国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加している。輸出数量の増加幅が輸入数量の増加幅を上回っていることが、黒字幅の拡大に寄与している。

2.企業活動と雇用情勢

生産は、持ち直しの動きが緩やかになっている。

鉱工業生産は、輸出が増加していることや在庫調整が終了していること等を背景に2四半期連続で増加してきたが、このところほぼ横ばいで推移しており、持ち直しの動きが緩やかになっている。
また、世界経済の先行き不透明感の高まり等、懸念すべき点もあることには留意する必要がある。なお、製造工業生産予測調査によると8月は増加、9月は減少が見込まれている。
一方、第3次産業活動の動向をみると、おおむね横ばいで推移している。

企業収益は、横ばいとなっている。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に依然厳しさがみられるものの、全体として改善がみられる。倒産件数は、高い水準となっている。

企業収益は、「法人企業統計季報」によると、平成13年7-9月期以降、電機機械などの製造業を中心に大幅な減益となっていた。平成14年4-6月期は製造業で減益幅が大幅に縮小し、全体として減益幅は概ね横ばいとなった。また、日銀短観によると、平成14年度については、上期は概ね横ばい、下期は大幅な増益を見込んでいる。「法人企業動向調査」によると、平成14年4-6月期における大中堅企業の経常利益の判断(前期比「増加」-「減少」)は、「減少」超幅が縮小している。
企業の業況判断について、企業の業況判断について、日銀短観をみると、中小企業を中心に低い水準にあり、依然厳しさがみられるものの、製造業、非製造業とも全ての規模で改善している。先行きについても、中小企業非製造業で若干悪化が見込まれている以外は、改善を見込んでいる。また、「法人企業動向調査」で大中堅企業の業界景気の判断(前期比「上昇」-「下降」)を見ると、「下降」超幅が縮小している。
また、倒産件数は、東京商工リサーチ調べで8月は1,578件となるなど、高い水準となっている。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数が下げ止まるなど、一部に改善への動きがみられるものの、完全失業率が高水準で推移し、賃金も弱い動きが続いている。

7月の完全失業率は、前月比同水準の5.4%となった。完全失業者について求職理由別にみると、最も多い非自発的な離職による者の増加幅は、7月は縮小した。完全失業者全体に占める失業期間1年以上の者の割合は、引き続き増加している。雇用者数については下げ止まっており、前月比で2ヶ月連続増加している。
新規求人数は、増加傾向にある。新規求職件数が同時に大幅に増加したため、新規求人倍率は前月比低下したが、有効求人倍率については、前月比で若干上昇している。製造業の残業時間については、引き続き増加傾向にある。4-6月期に「残業規制」等の雇用調整を実施した事業所割合は、低下している。
賃金の動きをみると、定期給与は前月比で増加したものの、前年同月比では減少が続いている。また、ボーナスを含む特別給与も前年を下回っており、弱い動きが続いている。

3.物価と金融情勢

国内卸売物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、弱含んでいる。

輸入物価は、このところ、契約通貨ベースでは上昇している。円ベースでは円高・ドル安により下落していたが、足元では上昇している。国内卸売物価は、横ばいとなっている。最近の動きをみると、電気機器、非鉄金属が下落している一方、在庫調整の進展により鉄鋼が上昇しているほか、足元では石油・石炭製品などが上昇している。また、企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
消費者物価は、平成12年秋以降弱含んでいる。最近の動きをみると、一般サービスはほぼ横ばいとなっているものの、耐久消費財の下落などにより一般商品は下落していることから、全体としては下落している。
こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

金融情勢をみると、株式相場は、8月下旬以降下落した。長期金利は、8月下旬以降低下した。

短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、8月は、日本銀行による金融緩和措置を反映して、0.001~0.002%で推移した。2、3ヵ月ものは、8月は、概ね横ばいで推移した。長期金利は、8月中旬まで横ばいで推移した後、8月下旬以降は、株価の下落などを背景に債券の需要が高まり、低下した。
株式相場は、8月中旬まで横ばいで推移した後、8月下旬以降は、日米経済の先行き不透明感の高まりなどを背景に、下落した。
対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、7月中旬から8月上旬にかけて、115円台から121円台まで下落し、その後、120円台から117円台で推移した。対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、7月中旬以降、115円台から117円台で推移し、8月中旬に、一時114円台まで上昇した後、115円台から117円台で推移した。
マネタリーベース(月中平均残高)は、日本銀行の潤沢な資金供給など(8月日銀当座預金平均残高15.1兆円)を背景に、2割台の高い伸びとなっているが、伸び率は鈍化している(8月:前年同月比26.1%)。M2+CD(月中平均残高)は、このところ、3%台半ばで推移している(8月速報:前年同月比3.5%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、96年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷等を背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、金融緩和等を背景に、昨年初来低下傾向で推移して来たが、このところ横ばい圏で推移している。企業の資金繰り状況を見るとやや改善の動きが見られ、民間債と国債との流通利回りスプレッドはこのところ横ばいで推移している。

4.海外経済

世界の景気は、緩やかに回復しているものの、アメリカ経済等への先行き懸念が高まりつつある。

世界の景気は、緩やかに回復しているものの、アメリカ経済等への先行き懸念が高まりつつある。
アメリカでは、景気の回復は緩やかになっており、マインド悪化の影響が懸念される。個人消費は耐久財消費を中心にこのところ増加がみられるが、消費者信頼感の低下が続いている。住宅建設は高い水準にある。設備投資は機械設備等を中心に下げ止まっている。生産の増加は緩やかになっており、企業の景況感は低下している。失業率は低下したものの、雇用は、製造業での減少が続くなど、回復は緩やかになっている。物価は安定している。
アジアをみると、景気は回復している。中国では、景気の拡大テンポは高まっている。韓国では、景気は拡大しているが、対米輸出が鈍化している。タイでは、景気は拡大している。台湾、シンガポール、マレイシアでは、景気は回復している。
ヨーロッパをみると、(1)ユーロ圏では、景気は持ち直し傾向にある。ドイツでは、景気は持ち直しの動きが一層弱まっている。また、洪水の悪影響が懸念材料となっている。フランスでは、景気は持ち直し傾向にある。(2)イギリスでは、景気に回復の動きがみられる。
金融情勢をみると、ドルは、8月前半は、13日のFOMCの開催を控え変動がみられたが、その後は概ね横ばいで推移した。アメリカの株価は、企業会計不信の一段落等を受けて8月中旬まで上昇基調で推移したが、その後景気先行き懸念等から下落した。アメリカの長期金利は、8月を通じて、証券市場における米国債への資金シフト等から低下基調で推移した。
国際商品市況をみると、原油価格は、イラクを巡る情勢の緊迫等から上昇基調で推移した。

(注)

<個人消費>

消費総合指数(需要側、内閣府試算値、後方3ヶ月移動平均)は、平成14年6月(速報値)季節調整済3ヶ月前比0.4%増の後、7月(速報値)は同0.1%増となった。
消費総合指数の作成方法:総務省「家計調査」から、GDPの個人消費には含まれない「仕送り金」、「修繕費」や、振れが大きい高額消費である「自動車等購入」などを除外した後、世帯数を乗ずるなどしてマクロの消費ベースにする。これに、自動車、家賃、医療費について別途供給側の統計を用いて計算したものを加える。詳細は、ディスカッションペーパー (https://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/menu.html)を参照。
家計調査の全世帯実質消費支出は、6月季節調整済前月比3.0%増の後、7月(速報値)は同0.3%減(前年同月比1.3%増)となった。
家計調査の全世帯実質消費支出(除く自動車、住居、仕送り金等)は、7月(速報値)は季節調整済前月比0.1%減(前年同月比0.5%増)となった。
経済産業省「商業販売統計」の小売業販売額は、7月(速報値)は季節調整済前月比2.2%減(前年同月比5.3%減)となった。また、百貨店販売額は、7月(速報値)は、前年同月比5.6%減(店舗調整後)(季節調整済前月比7.9%減(店舗調整前))となった。
チェーンストア販売額(日本チェーンストア協会調べ)は、7月は、前年同月比4.6%減(店舗調整後)(季節調整済前月比4.7%減(店舗調整前))となった。
乗用車(含軽)新車新規登録・届出台数は、7月前年同月比0.5%減の後、8月(速報値)は同5.3%増となった。
家電販売額(日本電気大型店協会調べ)は、6月前年同月比6.9%減の後、7月は同12.3%減となった。
大手旅行業者13社取扱金額の7月は、前年同月比で国内旅行が1.7%減、海外旅行が同11.4%減となった。
内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(季節調整済)は、3月前期差1.5ポイント改善の後、6月同0.9ポイント改善となった。

<設備投資>

平成14年4-6月期の設備投資を財務省「法人企業統計季報」(全規模全産業、ソフトウェアを除く)でみると、季節調整済前期比で2.6%減(前年同期比15.5%減)となっており、うち製造業では同3.9%減(同23.7%減)、非製造業では同2.0%減(同10.9%減)となっている。
経済産業省「鉱工業指数」により資本財出荷(除く輸送機械)をみると、季節調整済前月比で6月は7.0%減(前年同期比14.8%減)の後、7月は同1.1%減(同7.6%減)となっている。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)により設備投資の動向(ソフトウェアを除く)をみると、大企業の平成14年度設備投資計画は、製造業で前年度比8.9%減、非製造業で同5.2%減となっており、全産業では同6.7%減となっている。また、中小企業では製造業で同17.4%減、非製造業で同6.7%減となっており、全産業では同9.3%減となっている。
経済産業省「特定サービス産業動態統計」でみると、受注ソフトウェア売上高は、6月は前年同月比0.5%増の後、7月は7.5%減となっている。
機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前月比で6月は2.9%増(前年同月比7.6%減)の後、7月は同1.9%増(同5.8%減)となっている。なお、平成14年7-9月期(見通し、6月調査時点)の機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前期比で3.9%減(前年同期比11.4%減)と見込まれている。
民間からの建設工事受注(50社、非住宅)は、季節調整済前月比で6月は3.7%減(前年同月比19.0%減)の後、7月は同10.2%増(同18.8%減)となっている。

<住宅建設>

国土交通省「建築着工統計」によると、新設住宅着工総戸数(季節調整済前期比)は、平成13年4-6月期は0.9%減、7-9月期は4.0%増、10-12月は3.4%減、平成14年1-3月期は0.0%減、4-6月期は1.4%増、7月は3.1%増となった。内訳をみると、公庫持家の着工(同)は、平成13年4-6月期は20.9%減、7-9月期は4.6%減、10-12月は16.4%減、平成14年1-3月期は25.4%減、4-6月期は12.6%減、7月は11.0%減となり、共同建分譲住宅の着工(同)は、平成13年4-6月期は4.5%増、7-9月期は12.0%増、10-12月は12.3%減、平成14年1-3月期は12.1%増、4-6月期は6.9%減、7月は26.3%減となった。また、新設住宅着工床面積(同)は、平成13年4-6月期は3.3%減、7-9月期は5.8%増、10-12月は3.0%減、平成14年1-3月期は3.6%減、4-6月期は0.6%増、7月は2.3%増となった。
消費者の住宅取得マインドを示す指標のひとつである(社)日本リサーチ総合研究所「不動産購買態度指数」をみると、平成12年は、2月128、4月128、6月124、8月118、10月122、12月117、平成13年は、2月118、4月119、6月117、8月110、10月109、12月104、平成14年は、2月104、4月114、6月117となった。

<公共投資>

平成14年度の国の一般会計予算(当初)をみると、施設費を含む公共投資関係費について、前年度比10.7%減と規模を縮減しつつ、「予算編成の基本方針」の重点7分野に重点化している。
地方の予算をみると、平成14年度地方財政計画では、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比10.0%減としつつ、国の歳出予算と歩を一にして歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行うこととしている。総務省がまとめた都道府県、政令指定都市の当初予算額(普通会計)では、普通建設事業費は、都道府県で前年度比9.8%減、政令指定都市で同13.4%減、両者を合わせると同10.3%減となっている。また、時事通信社調査によれば、普通建設事業費は、都道府県で前年度比9.8%減、政令指定都市で同12.9%減、中核市で同7.8%減、その他の県庁所在市で同12.6%減となっており、これらを単純合計すると、前年度比10.1%減となっている(骨格予算を編成した地方公共団体などを除く)。
公共機関からの1件500万円以上の建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年同月比で6月20.2%減の後、7月は15.2%増となった。同じく大手50社の建設工事受注額は、前年同月比で6月39.2%減の後、7月は11.8%増となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で6月4.8%減の後、7月は4.2%減となった。

<輸出・輸入・国際収支>

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で6月6.1%減の後、7月は2.2%増(前年同月比14.7%増)となった。また、前期比で1-3月期6.4%増の後、4-6月期は7.3%増(前年同期比10.0%増)となっている。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で6月7.5%減の後、7月14.6%増(前年同月比8.0%増)となった。また、前期比で1-3月期1.1%減の後、4-6月期は2.1%増(前年同期比0.8%減)となっている。
貿易・サービス収支(季節調整値)の黒字は、6月7,672億円の後、7月は6,023億円となり、通関収支差(季節調整値)は、6月10,391億円の後、7月は6,724億円となった。

<生産・出荷・在庫>

7月の鉱工業生産指数(季節調整値、確報)は、その他工業や食料品・たばこ工業等が増加したことから、前月比0.1%増となった。
製造工業生産予測調査によると、前月比で8月は電気機械や輸送機械等により4.5%増の後、9月は電気機械や鉄鋼等により2.5%減になると見込まれている。
7月の鉱工業生産者製品在庫指数(季節調整値、確報)は、前月比0.7%増となった。また、7月の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値、確報)は97.6となっている。
6月の第3次産業活動指数(季節調整値、速報)は、サービス業、卸売・小売業、飲食店等が減少した結果、前月比0.3%減となった。

<企業>

財務省「法人企業統計季報」によると、4-6月期の経常利益は全産業で前年同期比16.8%減、製造業は12.6%減、非製造業は18.8%減となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、平成14年度の経常利益は、全規模・全産業で、上期は前年同期比0.2%、下期は同30.2%、通期では前年比16.1%の増益を見込んでいる。また、内閣府「法人企業動向調査」(6月調査)によると、4-6月期の大中堅企業の経常利益の判断(前期比「増加」-「減少」)は、全産業で15%ポイント改善して△9%ポイントとなった。
一方、業況判断について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査、業況水準について「良い」-「悪い」)をみると、大企業は14%ポイント改善して△17%ポイント、中小企業は7%ポイント改善して△39%ポイント、全規模合計では9%ポイント改善して△32%ポイントとなった。また、内閣府「法人企業動向調査」(6月調査)で企業の業界景気の判断(前期比「上昇」-「下降」)をみると、全産業で16%ポイント改善して△19%ポイントとなった。

<倒産>

企業の倒産については、東京商工リサーチ「倒産月報」によると、8月の企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は1,578件(前年同月比2.2%増)、負債総額は10,946億円(同53.6%増)となっており、帝国データバンク「全国企業倒産集計」によると、企業倒産件数は1,562件(同3.1%減)、負債総額は10,592億円(同44.0%増)となっている。また、大型倒産(負債額10億円以上)は、上場企業1件を含む89件(同13.5%減)となっており、主な大型倒産としては、東証1部上場の工作機械メーカーの日立精機(負債504億円)など(東京商工リサーチ調べ)。

<雇用情勢>

総務省「労働力調査」によると、7月の完全失業率(季節調整値)は、男女計で前月比同水準の5.4%となった。完全失業者数(季節調整値)は、男女計で前月差1万人減の360万人となった。求職理由別完全失業者数(原数値)は、非自発的な離職による者は、6月153万人(前年同月差61万人増)の後、7月は142万人(同43万人増)となった。自発的離職による者は、6月117万人(同14万人減)の後、7月は119万人(同5万人増)となった。
労働力調査によると、失業期間1年以上の完全失業者数は1~3月平均103万人の後、4~6月平均108万人となった。完全失業者全体に占める失業期間1年以上の者の割合は1~3月平均28.6%の後、4~6月平均29.0%となった。
労働力調査によると、7月の雇用者数(季節調整値)は、男女計で前月比0.9%増の5,381万人となった。
厚生労働省「職業安定業務統計」の新規求人数は、6月季節調整済前月比4.9%減の後、7月は同8.3%増(前年同月比4.6%増)となった。有効求人数は、6月同0.1%減の後、7月は同4.0%増(同1.0%減)となった。新規求職件数は、6月同6.5%減の後、7月は同16.6%増(同18.8%増)となった。有効求職者数は、6月同1.0%減の後、7月は同1.6%増(同9.1%増)となった。新規求人倍率(季節調整値)は6月0.96倍の後、7月0.89倍となった。有効求人倍率(季節調整値)は、6月0.53倍の後、7月0.54倍となった。
毎月勤労統計調査によると、所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では6月季節調整済前月比同水準(前年同月比3.5%増)の後、7月は同4.1%増(同8.9%増)(速報値)となった。
厚生労働省「労働経済動向調査」によると、雇用調整実施事業所割合は、産業計では1-3月期の31%から4-6月期は27%となった。
毎月勤労統計調査によると、きまって支給する給与は、事業所規模5人以上では6月季節調整済前月比同水準(前年同月比1.8%減)の後、7月は同0.5%増(同1.1%減)(速報値)となった。特別に支払われた給与は、事業所規模5人以上では6月前年同月比5.4%減の後、7月は同12.9%減(速報値)となった。

<物価>

日本銀行「卸売物価指数」の輸出物価(円ベース)は、8月は前月比0.4%の上昇(前年同月比2.7%下落)、6-8月平均の3ヶ月前比(3-5月平均対比、以下同じ)は5.0%の下落となった。輸入物価(円ベース)は、8月は前月比1.2%の上昇(前年同月比2.5%下落)、6-8月平均の3ヶ月前比は3.7%の下落となった。また、国内卸売物価は、8月は、前月比保合い(前年同月比0.9%下落)、3ヶ月前比は保合いとなった(なお、7月から9月まで夏季電力料金適用の影響を考慮する必要がある)。
日本銀行「企業向けサービス価格指数」の7月の企業向けサービス価格は前年同月比1.3%の下落(前月比0.3%下落)となった。
総務省「消費者物価指数(全国)」の生鮮食品を除く総合は、7月は前年同月比0.8%の下落(季節調整済前月比保合い)、5-7月平均の前年同期比は0.8%の下落となった。一般サービスは、7月は前年同月比保合い、5-7月平均の前年同期比は0.1%の下落となった。一般商品は、7月は前年同月比1.8%の下落、5-7月平均の前年同期比は1.8%の下落となった。また、「消費者物価指数(東京都区部、中旬速報値)」の生鮮食品を除く総合は、8月は前年同月比0.9%の下落(季節調整済前月比0.2%上昇)、6-8月平均の前年同期比は1.0%の下落となった。

<金融>

無担保コールオーバーナイトレートは、8月は、0.001~0.002%で推移した。3ヶ月物ユーロ円TIBORは、8月は、0.07~0.08%台で推移した。10年物国債流通利回りは、8月は、1.1%台後半から1.3%台前半で推移した。
東証株価指数(TOPIX)は、8月末には941ポイントとなった。日経平均株価は、8月末には9,619円となった。
広義流動性は、8月(速報)は前年同月比1.5%増となった。金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、8月(速報)は前年同月比4.5%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.4%減)となった。8月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債の発行はなかった。また、国内公募事業債の起債実績は、2,750億円(銀行起債は300億円)となった。国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、7月は前月比で短期は0.157%ポイント上昇し、長期は0.071%ポイント上昇したことから、総合では0.128%ポイント上昇し1.734%となった。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、資金繰り判断、金融機関の貸出態度ともに、やや改善の動きが見られる。

<景気ウォッチャー調査>

内閣府「景気ウォッチャー調査」の8月の現状判断DIは、前月を1.2ポイント上回り、43.6となった。先行き判断DIは、前月を1.2ポイント上回り、46.1となった。