月例経済報告(平成12年3月)

平成12年3月17日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、年末に比べれば持ち直しているものの、収入が低迷していることから、改善傾向の定着には至っていない。住宅建設は、このところやや減少していたが、直近は、一時的な要因もあり、高水準となっている。設備投資は、総じて下げ止まりつつあり、持ち直しの動きが広がっている。公共投資は、事業の実施は前年を下回っているが、着工などには、第二次補正予算などの効果が現れている。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

在庫は、ほぼ調整を終了し、生産は、緩やかに増加している。

雇用情勢は、残業時間や求人の増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

我が国経済は、全体として需要の回復が弱く、厳しい状況をなお脱していない。しかし、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響から、景気は、緩やかな改善が続いている。企業の活動に積極性もみられるようになるなど、自律的回復に向けた動きが徐々に現れている。

政府は、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、21世紀の新たな発展基盤を築くため、経済新生対策を始めとする諸施策を推進する。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、年末に比べれば持ち直しているものの、収入が低迷していることから、改善傾向の定着には至っていない。住宅建設は、このところやや減少していたが、直近は、一時的な要因もあり、高水準となっている。設備投資は、総じて下げ止まりつつあり、持ち直しの動きが広がっている。公共投資は、事業の実施は前年を下回っているが、着工などには、第二次補正予算などの効果が現れている。

11年10~12月期(速報)の実質国内総生産は、前期比1.4%減(年率5.5%減)となり、うち内需寄与度はマイナス1.0%となった。

産業面をみると、在庫は、ほぼ調整を終了し、生産は、緩やかに増加している。企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。

雇用情勢は、残業時間や求人の増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

輸出入は、対アジア輸出入を中心に、増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、基調としては緩やかに減少している。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、2月は下旬にかけて111円台にまで下落したが、月末には110円台までやや上昇した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、2月から3月上旬にかけて横ばいで推移した。長期金利は、2月は上旬にやや上昇した後、3月上旬にかけて横ばいで推移した。株式相場は、2月は上旬に上昇した後、3月上旬にかけて一進一退で推移した。マネーサプライ(M+CD)は、2月は前年同月比2.1%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年7~9月期前期比年率5.7%増の後、10~12月期は同6.9%増(速報値)となった。個人消費は増加している。設備投資は7~9月期の大幅増の反動もあり伸びが鈍化している。住宅投資はこのところ伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。2月の長期金利(30年物国債)は、総じて低下基調で推移した。株価(ダウ平均)は、総じて下落基調で推移した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに拡大している。フランス、イギリスでは、景気は拡大している。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは増加している。イギリスではこのところ伸びが鈍化している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低下している。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに、大幅な増加が続いている。

国際金融市場の2月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価基調で推移した。

国際商品市況の2月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬に215ポイント台まで上昇した後、下旬にかけては下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から上昇基調で推移し、中旬から下旬にかけ一時27ドル割れしたものの、月末には28ドル台後半の水準まで上昇した。

1.国内需要:設備投資は、総じて下げ止まりつつあり、持ち直しの動きが広がっている

実質国内総生産(平成2年基準、速報)の動向をみると、11年7~9月期前期比1.0%減(年率3.9%減)の後、11年10~12月期は同1.4%減(同5.5%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度はマイナス1.0%となり、財貨・サービスの純輸出の寄与度はマイナス0.5%となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比1.6%減、民間企業設備投資は同4.6%増、民間住宅は同5.8%減となった。また、財貨・サービスの輸出は前期比0.4%増、財貨・サービスの輸入は同4.4%増となった。

個人消費は、年末に比べれば持ち直しているものの、収入が低迷していることから、改善傾向の定着には至っていない。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で12月4.0%減の後、1月(速報値)は3.2%減(季節調整済前月比1.6%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比3.0%減、勤労者以外の世帯では同3.4%減となった。形態別にみると、 財、サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比2.8%減、勤労者世帯では同3.0%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で12月5.7%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で12月1.3%減の後、1月(速報値)は2.2%減(季節調整済前月比1.1%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で12月2.1%減の後、1月(速報値)0.7%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で12月5.9%減の後、1月5.8%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で2月(速報値)は4.7%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で1月は9.4%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、1月は前年同月比で国内旅行が1.8%減、海外旅行は13.1%減となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で12月2.3%減の後、1月(速報)は1.8%増(事業所規模30人以上では同2.0%増)となり、うち所定外給与は、1月(速報)は同2.9%増(事業所規模30人以上では同3.3%増)となった。実質賃金は、前年同月比で12月1.0%減の後、1月(速報)は2.9%増(事業所規模30人以上では同3.2%増)となった。なお、11~1月合算の特別給与(速報)は、前年同期比3.4%減(前年は同7.9%減)となった。

住宅建設は、このところやや減少していたが、直近は、一時的な要因もあり、高水準となっている。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で12月は3.0%減(前年同月比0.8%減)となった後、1月は16.4%増(前年同月比16.8%増)の11万3千戸(年率135万戸)となった。1月の着工床面積(季節調整値)は、前月比16.8%増(前年同月比24.6%増)となった。1月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比8.9%増(前年同月比26.9%増)、貸家は同18.0%増(同5.4%増)、分譲住宅は同15.1%増(同21.6%増)となっている。

設備投資は、総じて下げ止まりつつあり、持ち直しの動きが広がっている。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の11年度設備投資計画は、製造業で前年度比10.9%減(9月調査比1.2%下方修正)、非製造業で同10.8%減(同1.8%下方修正)となっており、全産業では同10.8%減(同1.6%下方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比15.5%減(9月調査比1.0%上方修正)、非製造業で同4.0%減(同1.3%上方修正)となり、中小企業では製造業で同25.4%減(同5.2%上方修正)、非製造業で13.3%減(同9.0%上方修正)となっている。

なお、11年10~12月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で0.7%減(うち製造業8.2%減、非製造業2.9%増)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で11年12月は16.1%増(前年同月比14.7%増)の後、12年1月は0.8%増(同21.2%増)となり、基調としては持ち直しの動きが見られる。

なお、1~3月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で1.6%減(前年同期比1.9%増)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、このところ増加しており、1月は季節調整済前月比18.1%増(前年同月比44.9%増)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比18.8%増(前年同月比52.8%増)、非製造業は同15.6%増(同43.0%増)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、事業の実施は前年を下回っているが、着工などには、第二次補正予算などの効果が現れている。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で12月は9.5%増の後、1月は12.6%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で1月は6.1%減の後、2月は1.4%減となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で12月31.9%減の後、1月は2.1%増となった。実質公的固定資本形成は、11年7~9月期に季節調整済前期比8.5%減の後、11年10~12月期は同5.4%減となった。また、実質政府最終消費支出は、11年7~9月期に季節調整済前期比0.9%増の後、11年10~12月期は同0.1%減となった。

2.生産雇用:在庫は、ほぼ調整を終了

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、ほぼ調整を終了し、生産・出荷は、緩やかに増加している。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で12月1.2%減の後、1月(速報)は、輸送機械、化学等が減少したものの、電気機械、一般機械等が増加したことから、0.9%増となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で2月は輸送機械、化学等により2.7%増の後、3月は一般機械、電気機械等により3.2%減となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で12月1.0%減の後、1月(速報)は、資本財、生産財等が増加したことから、2.3%増となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で12月1.5%減の後、1月(速報)は、非鉄金属、繊維等が減少したものの、電気機械、石油・石炭製品等が増加したことから、1.1%増となった。また、1月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は99.3と前月を0.6ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は1月は増加し、在庫は1月は増加した。輸送機械では、生産は2か月連続で減少し、在庫は1月は増加した。化学では、生産は2か月連続で減少し、在庫は2か月連続で増加した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(12月調査、季節調整値)でみると、前月比で11月0.8%増の後、12月(速報)は、金融・保険業が減少したものの、卸売・小売業,飲食店、サービス業等が増加した結果、同0.9%増となった。

雇用情勢は、残業時間や求人の増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、12月0.50倍の後、1月0.52倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、12月0.91倍の後、1月0.96倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、12月は前年同月比0.7%減(前年同月差37万人減)の後、1月は同0.7%減(同40万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、12月前年同月比0.1%減(季節調整済前月比0.1%増)の後、1月(速報)は同0.2%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.4%減)、産業別には製造業では同2.1%減となった。1月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差1万人減の317万人、完全失業率(同)は、12月4.7%の後、1月4.7%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では12月前年同月比10.5%増(季節調整済前月比1.5%増)の後、1月(速報)は同11.3%増(同1.9%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比11.9%増)。

また、労働省「労働経済動向調査」(2月調査)によると、「残業規制」等の雇用調整を実施した事業所割合は、高い水準にあるが、10~12月期もやや低下した。

企業の動向をみると、企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

大企業の動向を「法人企業動向調査」(12月調査、季節調整値)でみると、11年10~12月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」-「減少」)は、いずれも「減少」超幅が縮小した。また、11年10~12月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」-「下降」)は「下降」超幅が縮小した。

一方、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(12月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、11年10~12月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、11年10~12月期は「悪化」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、おおむね横ばいとなっている。

銀行取引停止処分者件数は、1月は935件で前年同月比56.1%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、建設業で72.2%の増加、運輸・通信業で63.6%増加となった。

3.国際収支:輸出は、アジア向けを中心に、増加

輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で12月0.6%増の後、1月は1.4%増(前年同月比6.9%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器、精密機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア等が増加した。

輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で12月0.3%減の後、1月は7.3%減(前年同月比9.1%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(機械機器)、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、12月に7,953億円の黒字の後、1月は1兆460億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、基調としては緩やかに減少している。

1月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、8,561億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が拡大したものの、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、1兆2,655億円となった。投資収支(原数値)は、7,858億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、8,660億円の赤字となった。

2月末の外貨準備高は、前月比13億ドル増加して2,945億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、2月は110円台まで下落した後、3月上旬には106円台まで上昇した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、2月は下旬にかけて111円台まで下落した後、月末から3月上旬にかけて102円台まで上昇した。

4.物価:国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移

国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。

2月の国内卸売物価は、電気機器(集積回路)等が下落したものの、食料用農畜水産物(鶏卵)等が上昇したことから、前月比0.1%の上昇(前年同月比0.1%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで上昇したことに加え、円安から円ベースでは前月比2.9%の上昇(前年同月比3.7%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことに加え、円安から円ベースでは前月比4.3%の上昇(前年同月比6.6%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.8%の上昇(前年同月比0.1%の上昇)となった。

企業向けサービス価格は、1月は前年同月比0.8%の下落(前月比0.4%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は非鉄等は下落したものの、繊維等の上昇により2月は上昇した。2月の動きを品目別にみると、亜鉛地金等は下落したものの、毛糸等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で12月0.1%の下落の後、1月は一般食料工業製品の下落幅の拡大等により0.3%の下落(前月比0.6%の下落、季節調整済前月比0.1%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で12月1.1%の下落の後、1月は0.9%の下落(前月比0.3%の下落、季節調整済前月比保合い)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で1月0.5%の下落の後、2月(中旬速報値)は、繊維製品の下落幅の縮小等により0.4%の下落(前月比0.1%の下落、季節調整済前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で1月1.0%の下落の後、2月(中旬速報値)は0.8%の下落(前月比0.2%の下落、季節調整済前月比保合い)となった。

5.金融財政:株式相場は、2月上旬に上昇した後、一進一退で推移

最近の金融情勢をみると、短期金利は、2月から3月上旬にかけて横ばいで推移した。長期金利は、2月は上旬にやや上昇した後、3月上旬にかけて横ばいで推移した。株式相場は、2月は上旬に上昇した後、3月上旬にかけて一進一退で推移した。M+CDは、2月は前年同月比2.1%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、2月は横ばいで推移した後、月末に上昇したが再び低下し、3月上旬には横ばいで推移した。2、3か月物は、2月から3月上旬にかけて横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債利回りは、2月は上旬にやや上昇した後、3月上旬にかけて横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、1月は前月比で短期は0.045%ポイント低下し、長期は0.074%ポイント低下したことから、総合では0.058%ポイント低下し1.764%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、2月(速報)は前年同月比2.1%増となった。また、広義流動性は、2月(速報)は同2.3%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、2月(速報)は前年同月比6.3%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.5%減)となった。2月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が200億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は1兆835億円(うち銀行起債分2,600億円)となった。

以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

株式市場をみると、日経平均株価は、2月は上旬に上昇した後、3月上旬にかけて一進一退で推移した。

6.海外経済:ドイツの景気、緩やかに拡大

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年7~9月期前期比年率5.7%増の後、10~12月期は同6.9%増(速報値)となった。個人消費は増加している。設備投資は7~9月期の大幅増の反動もあり伸びが鈍化している。住宅投資はこのところ伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は1月前月差38.4万人増の後、2月は同4.3万人増となった。失業率は2月4.1%となった。物価は総じて安定している。1月の消費者物価は前年同月比2.7%の上昇、1月の生産者物価(完成財総合)は同2.5%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。2月の長期金利(30年物国債)は、総じて低下基調で推移した。株価(ダウ平均)は、総じて下落基調で推移した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに拡大している。フランス、イギリスでは、景気は拡大している。10~12月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率2.7%増、フランス同3.6%増(速報値)、イギリスは同3.1%増(改訂値)となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは増加している。イギリスではこのところ伸びが鈍化している(鉱工業生産は、ドイツ1月前月比0.5%増、フランス12月同0.0%増、イギリス1月同0.1%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低下している(失業率は、ドイツ2月10.0%、フランス1月10.5%、イギリス1月4.0%)。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ2月前年同月比1.8%、フランス2月同1.4%、イギリス1月同2.0%)。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに、大幅な増加が続いている。

国際金融市場の2月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価基調で推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、2月29日現在110.1、1月末比1.3%の増価となっている。内訳をみると、2月29日現在、対円では1月末比2.6%増価、対ユーロでは同0.5%増価した。

国際商品市況の2月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬に215ポイント台まで上昇した後、下旬にかけては下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から上昇基調で推移し、中旬から下旬にかけ一時27ドル割れしたものの、月末には28ドル台後半の水準まで上昇した。