付注2-1 潜在労働投入量の推計方法
1 概要
実際の労働投入量(就業者数×労働時間)に対して、潜在的な労働投入量を「経済の過去のトレンドからみて投入され得る平均的な労働投入量」と定義する。両者を比較することで、各時期における実際の労働投入量が中長期的なトレンドと比べて過剰気味か不足気味かを測ることができる。
以下では、本稿における潜在労働投入量(潜在就業者数×潜在労働時間)の推計方法の概要を記す1。
2 データ
厚生労働省「毎月勤労統計調査」、総務省「労働力調査(基本集計)」、「人口推計」等2
3 推計方法
(1)潜在就業者数
潜在就業者数については以下のとおり算出している。
潜在就業者数=(潜在15歳以上人口×潜在労働力率)×(1-構造失業率)
潜在15歳以上人口及び潜在労働力率は、それぞれ総務省「人口推計」、「労働力調査(基本集計)」から得られるデータをHodrick-Prescottフィルター(以下「HPフィルター」という。)により平滑化することで導出している3。構造失業率については、UV分析により得られた値を同様に平滑化することで導出している。
(2)潜在労働時間
厚生労働省「毎月勤労統計調査」のうち、「総実労働時間指数(5人以上の事業所、原数値)」を実数化し季節調整をかけた上で実際の労働時間として用い、これをHPフィルターにより平滑化することで得られたトレンドを潜在労働時間としている3。ただし、5人以上の事業所の結果は、1989年以前について取得できないため、その期間は30人以上の事業所の結果によって外挿している。
1 推計方法の詳細については、経済財政分析ディスカッションペーパー(DP/17-3)及び今週の指標No. 1278、No. 1294、No. 1310を参照されたい。
2 この他、厚生労働省「職業安定業務統計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」も使用。
3 2020年以降のコロナ禍において経済活動が抑制されてきたことから、実際の労働投入量について通常の景気循環とは異なる要因によって変化しており、これを潜在的な労働投入量の推計にそのまま用いると推計手法の特性もあいまって推計結果が歪んでしまう。したがって推計に際しては、足下までの労働関連指標の動向や国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(出生中位(死亡中位))を踏まえて労働参加率及び労働時間の先行きを推計し、コロナ禍の期間の影響を取り除いてトレンドを推計することとしている。