「日本経済2022-2023」刊行にあたって

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内閣府経済財政分析担当では、毎年「日本経済」シリーズを公表し、「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供しています。今回の報告書では、2022年の日本経済の動向を中心にコロナ禍からの回復を振り返るとともに、物価上昇下における家計、企業の動向や課題を分析しています。

第1章では、マクロ経済の動きを概観しています。2022年の我が国経済は民需中心に緩やかな持ち直しの動きとなっています。しかし、ロシアによるウクライナ侵略による国際商品市況の急騰や円安進行が秋ごろまで見られ、輸入物価を通じたコストプッシュ型の物価上昇が生じています。こうした中、賃上げ原資の確保のためにも、企業が価格転嫁を円滑に進め、適切な価格設定を行える環境整備が重要です。また、物価上昇を受けた世界的な金融引締め等により、世界経済の減速が懸念されています。内需の持続的な増加により世界経済の減速を乗り越え、同時に、成長分野への重点的な投資喚起、生産性向上に向けた人的資本投資、貿易や投資関係強化による海外需要取込みを通じて、中長期的な成長力を高めていくことが重要です。

第2章では、個人消費の回復に向けた課題を整理しています。食品・エネルギーを中心とした物価上昇下で、低所得世帯を中心に節約志向が広がっています。感染症下で蓄積された貯蓄には一定程度の消費下支えが期待できるものの、より本質的には、企業が収益を上げ、賃上げの流れが拡大するとともに、構造的な賃上げ環境が実現することが、消費の本格的な回復に向け、鍵となってきます。そのためには、リスキリングの強化やマッチング効率の改善などを通じた労働移動の活性化と人材配置の適正化により、社会全体の労働生産性を高めていくことが重要です。

第3章では、企業部門の動向と海外で稼ぐ力について整理しています。コロナ禍で先送りされていた設備投資は回復していますが、回復は道半ばです。企業の慎重な投資姿勢を、期待成長率を高めることで変え、民間投資の拡大を図るための取組みが重要です。また、貿易収支の安定化に向けたエネルギーの対外依存抑制や、海外への投資から得られた収益を国内経済の成長力強化につなげていくことが課題です。貿易・投資面で海外で稼ぐ力を高める上では、伸びしろの大きい中小企業への人材面での支援や農林水産物・食品の輸出支援体制の整備も進めていく必要があります。

本報告書の分析が日本経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助となれば幸いです。

令和5年2月

内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
村山 裕

※本報告の本文は、原則として2022年12月28日までに入手したデータに基づいている。

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