付注1-1 為替レート関数の推計について

1 考え方

為替レートの変動要因を捕捉するため、平成24年度年次経済財政報告と同様、一物一価の法則に基づく購買力平価説、資産市場の需給に基づくアセット・アプローチ、貨幣需給に基づくマネタリーアプローチを取り入れるため、相対価格比、実質金利差、マネタリーベース比を用いて推計を行った。相対価格はGrossmann and Simpson(2010)に倣い、輸出財価格と輸入財価格を合成して作成した貿易財の卸売物価に近い概念である貿易財価格を使用している。マネタリーベース比については、量的緩和が弾性値に影響を与えている可能性があることから、量的緩和を実施している期間(2001年1-3月期~2006年1-3月期及び2013年1-3月期以降)と実施していない期間を分けて推計している。また、1-1-6図(3)や1-1-7図(1)より、コロナ禍以降、金利差や貿易財価格比と為替レートとの関係性が変化しており、それにより推計結果が不安定になっている可能性があることから、今回はコロナ前までの為替レートと各変数間の関係性により推計を行い、本編図表では、当該推計によって得られたパラメーターに基づいてコロナ禍以降の推計値は作成している。

2 推計の概要

(1)推計式

付注1-1 数式を画像化したもの

Exrate:名目為替レート(円/米ドル)

TGP  :貿易財価格比(日本貿易財価格/アメリカ貿易財価格)×100

PR  :実質金利差(アメリカ実質金利-日本実質金利)

   アメリカ実質金利:アメリカFFレート-アメリカ貿易財価格前年比

   日本実質金利:日本コールレート-日本貿易財価格前年比

MB  :マネタリーベース比(日本マネタリーベース/アメリカマネタリーベース)

D   :量的緩和実施時(2001年1-3月期から06年1-3月期及び2013年1-3月期以降)を1とするダミー変数

貿易財価格:〔(自国輸出物価×自国輸出金額)+(自国輸入物価×自国輸入金額)〕/〔自国輸出金額+自国輸入金額〕

(2)推計結果(調整済み決定係数0.87)

付注1-1 表を画像化したもの

(3)推計期間

1986年第1四半期~2020年第1四半期