「日本経済2021-2022」刊行にあたって
内閣府経済財政分析担当では、毎年「日本経済」シリーズを公表し、「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供しています。今回の報告書では、2021年の日本経済の動向を振り返るとともに、新型コロナウイルス感染症による危機対応から次のステージに向けて変化しつつある企業と家計の動向や課題を分析しています。
第1章では、マクロ経済の動きを概観しています。2021年9月末まで緊急事態宣言等が断続的に発出される中で、景気は力強さを欠いてきました。全ての都道府県において緊急事態宣言等が解除された2021年10月以降、経済社会活動の段階的引上げに伴い、景気は持ち直しの動きがみられています。今後は、感染対策に万全を期し、経済社会活動を継続していく中で、景気が力強さを増していくことが期待されます。ただし、2022年初以降、オミクロン株の感染が拡大しており、感染症による経済への影響には十分注意する必要があります。
第2章では、成長と分配の好循環に向けた企業部門の課題を整理しています。企業収益の持ち直しが続く中で、2021年度の設備投資計画は前年度より増加が見込まれていますが、デジタル化や脱炭素関連投資を通じて、成長力を高めていくことが課題です。こうした中で、デジタル投資の効果を高める「人への投資」の強化に官民を挙げて注力していくことが重要です。
第3章では、成長と分配の好循環に向けた家計部門の課題を整理しています。企業の人手不足感が高まる中、同一企業内の正社員登用や副業・兼業、転職を通じた人材活用は限定的となっています。今後、学びの機会の提供等により、こうした人材の活用や労働移動をさらに後押しする必要があります。また、どのような働き方に対しても十分なセーフティネットが確保されることが重要です。
本報告書の分析が日本経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助となれば幸いです。
令和4年2月
内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
村山 裕
※本報告の本文は、原則として2022年1月14日までに入手したデータに基づいている。