「日本経済2020-2021」刊行にあたって

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内閣府経済財政分析担当では、毎年「日本経済」シリーズを公表し、「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供しています。今回の報告書では、2020年後半から2021年初頭の日本経済の現状を点検するとともに、新型コロナウイルス感染症によって大きく変化した家計と企業の動向や課題を分析しています。

第1章では、マクロ経済の動きを概観しています。2020年後半の日本経済は、輸出と消費の持ち直しに支えられ、2四半期連続の成長を実現しました。しかし、新規感染者数の増加を受けて、本年1月には再び緊急事態宣言が発出されることになり、家計消費は下押しされました。こうした下、需要不足から物価への下押し圧力も続くと見込まれ、感染防止を図りながら、需要水準を押上げることが重要です。

第2章では、雇用動向について詳細に考察しています。昨年4-6月期は女性や非正規雇用を中心に大きな影響が生じましたが、雇用調整助成金等の政策効果や先行きの人手不足を見込んだ企業の合理的な雇用確保の動きもあり、失業率の上昇等は、経済の落ち込みに比べれば抑制的なものとなっています。今後は、感染症の動向を踏まえつつ、こうした守りの政策から攻めの政策、つまり、成長分野への労働移動の促進や労働者のスキルアップを促す環境整備に重点を移していくことが課題となっています。

第3章では、企業収益や倒産動向を整理し、ポストコロナに向けた課題について検討しています。今回は、リーマンショック時とは異なり、業種を問わず中小企業の収益が大幅に減少しましたが、政策支援により、資金繰りは維持され、倒産件数は減少しています。企業の負債比率は、全体としては過去に比べて低位ですが、時短営業や自粛を続けている飲食業等では高い水準となっています。

こうした企業部門の課題の一つは企業数や雇用者のシェアが大きい中小企業の生産性向上です。本章ではそのための方策を検討していますが、一つには無形資産投資(ソフトウェアを含む)の積極化、もう一つは事業承継の促進です。後者の点については、地域銀行の状況を概観しつつ、その役割についても触れています。

本報告書の分析が日本経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助となれば幸いです。

令和3年3月

内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
籠宮 信雄

※本報告の本文は、原則として2021年3月2日までに入手したデータに基づいている。

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