付注2-2 雇用調整助成金等の失業率抑制効果の試算

1 概要

雇用調整助成金等が失業率の上昇を抑制した効果について、厚生労働省の雇用調整助成金等支給実績データ及び雇用調整助成金等の活用に関するサンプル調査、並びに毎月勤労統計調査、労働力調査及び各種アンケート調査を用いて以下のとおり推計した。

2 データ

総務省「労働力調査」、独立行政法人労働政策研究・研修機構「雇用調整の実施と雇用調整助成金の活用に関する調査」、「雇用調整助成金の政策効果に関する研究」、厚生労働省「毎月勤労統計調査」、雇用調整助成金ホームページ、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金ホームページ、令和2年度雇用政策研究会第2回資料。

厚生労働省令和2年度雇用政策研究会第2回資料には、雇用調整助成金等のサンプル調査結果が掲載されている。これは、2020年4月から8月の間に行われた雇用調整助成金及び緊急雇用安定助成金の支給決定について、都道府県労働局ごとに、その4~5%を目安としてサンプルを抽出したもの(サンプル数 58,675件、以下、「厚労省サンプル調査」という。)。

3 推計方法

(1)対象期間全体の休業手当延べ支給日数の算出

厚生労働省の雇用調整助成金ホームページに掲載されている累積支給決定額を、厚労省サンプル調査における支給決定金額を休業等支給日数で除して得られる休業者1人1日当たりの平均支給金額で除すことにより、対象期間における休業手当延べ支給日数を算出。なお、延べ支給日数には、一部受給者(時間単位)も含まれており、潜在的な失業リスクのある者に限定するため、時間単位の休業手当受給者を控除して1日単位の受給者に相当する支給日数を求めた。控除に当たっては、独立行政法人労働政策研究・研修機構「雇用調整の実施と雇用調整助成金等の活用に関する調査」(以下、「JILPTアンケート調査」という。)から得られる、時間単位の休業手当受給者割合(23%)を用いた。

(2)各期の休業手当延べ支給日数の算出

厚生労働省「毎月勤労統計調査」の出勤日数の前年同期差に常用労働者数を乗じたものを、各期の延べ休業日数とみなし、これを対象期間全体の延べ休業日数で除すことにより、各期の休業日数のシェアを算出。(1)の対象期間における休業手当延べ支給日数に当該シェアを乗じることにより、各期の休業手当延べ支給日数を算出した。

(3)各期の雇用調整助成金等利用人数の算出

(2)の各期の延べ休業日数を総務省「労働力調査」の休業者数で除すことにより、各期の1人当たりの平均休業日数を算出。(2)の各期の休業手当延べ支給日数を1人当たりの平均休業日数で除すことにより、各期の雇用調整助成金等の利用人数を算出した。

なお、雇用調整助成金等利用者のうち、教育訓練受講者は雇用削減の対象とならないと想定し、雇用調整助成金等利用人数に、独立行政法人労働政策研究・研修機構「雇用調整助成金の政策効果に関する研究」から得られる、支給対象者に占める教育訓練分の割合(15%)を乗じたものを利用人数全体から除外した。

また、休業支援金・給付金について、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金ホームページに掲載されている累積支給決定件数を各期の雇用調整助成金等の利用人数のシェアで按分したものを、各期の休業支援金・給付金の利用人数とし、各期の雇用調整助成金等の利用人数に加えた。

(4)潜在失業者数の算出

雇用調整助成金等及び休業支援金・給付金の利用者全てが失業者になるものではないと考えられるため、JILPTアンケート調査における、仮に雇用調整助成金の支給を受けられなかった際に雇用を削減するための措置をとったと回答した割合(51%)を、(3)の雇用調整助成金等利用人数に乗じることにより、潜在失業者数を算出した。

(5)失業率抑制効果の算出

(4)の潜在失業者数を各期の実際の労働力人口で除すことで、失業率抑制効果を算出した。