「日本経済2019-2020」刊行にあたって

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内閣府経済財政分析担当では、毎年「日本経済」シリーズを公表し、夏の「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供しています。今回の報告書では、2019年の日本経済の現状を点検するとともに、人口減少下における働き方と我が国の対外経済構造について、その動向や課題を分析しています。

第1章では、最近の日本経済について景気という観点から点検しています。日本経済は、外需の弱さが長期化する中で製造業の活動には弱さがみられるものの、非製造業の活動は底堅く推移しています。そのため、企業収益や雇用・所得といった経済のファンダメンタルズには耐性が感じられ、内需の底堅さを維持する要因となっています。2019年10月には消費税率の10%への引上げも実施されました。品目別・業態別の販売動向等を確認する限り、税率引上げに伴う駆け込み需要とその反動減の大きさは、総じてみれば、前回ほどではないとみられます。ただし、消費者マインドが低い水準にあることなどから、今後の消費動向については引き続き注意が必要です。

第2章では、人口減少が進む中における働き方の変化について考察しています。我が国では、女性や高齢者の労働参加が進んでいますが、海外と比べ、男性の労働時間は未だに長いのが現状です。しかし、労働時間が短い国の生産性がより高いことや、男性の労働時間が短い国では30歳台の女性の就業が進んでいることが示されており、長時間労働是正と女性の就業促進は同時に解決できると示唆されています。2019年に入って労働時間が顕著に減少していますが、これには働き方改革における有給休暇の取得促進が寄与しているとみられます。また、長期の安定的な就業機会確保には、離職・転職を容易にする環境整備が必要なこと、就業調整をしている女性や高齢者の働く意欲を損なわない仕組みの構築が重要なこと等についても指摘しています。

第3章では、今後の人口減少時代を見据えた対外経済構造の変化を分析しています。我が国は世界最大の純債権国であり、その経常収支は、対外資産増加による第一次所得収支黒字に支えられる構造へと変化しています。こうした資産を活かすことで、人口減少下でも豊かさを維持・増進していくことが求められます。そのためには、資産収益力の維持・強化に向けて投資のホームバイアスを解消することやエネルギーや食料といった必須輸入のリスク分散、安定化を図ることが必要となります。

本報告書の分析が日本経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助となれば幸いです。

令和2年2月

内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
増島 稔

※本報告の本文は、原則として2020年1月20日までに入手したデータに基づいている。

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