「日本経済2017-2018」刊行にあたって

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内閣府経済財政分析担当では、毎年「日本経済」シリーズを公表し、夏の「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供しています。今回の報告書では、緩やかな景気回復を続ける日本経済の現状を分析するとともに、平均寿命の伸長や技術革新を反映して多様化することが見込まれる職業キャリアの現状と課題について、及び、企業部門の成長に向けた取組と好循環の確立に向けた課題を分析しています。

第1章では、日本経済の最近の動向や景気回復長期化の背景について分析しています。景気回復が2016年後半から堅調さを増している背景には、海外経済の回復に加え、技術革新の進展等を受けて情報関連財の需要が世界的に増加する中で、日本の輸出や生産が持ち直していることがあります。また、今回の景気回復が長期化している背景には、企業の稼ぐ力の高まりと雇用情勢の継続的な改善に加え、海外経済など良好な外部環境や、訪日外国人の増加等を背景にした地域経済の回復等も寄与していると考えられます。物価の基調的な動向は横ばい圏内にとどまっていますが、物価を取り巻く環境をみると、人手不足感が高まり、経済全体の需給を表すGDPギャップもプラスになるなど局面変化がみられています。今後の持続的な物価上昇のためには、生産性を高めつつ、大幅な賃金の伸びを実現することが課題です。

第2章では、職業キャリアの現状と課題について分析しています。平均寿命の伸長や技術革新等を反映し、今後の職業生活は、ライフステージに合わせて学び直しをしつつ多様な就労経験をするような形に変化していく可能性が高いと考えられます。人工知能の発達など技術革新に伴う就業構造の変化を見据えると、専門的な知識やコミュニケーション能力を強化するため、職業訓練や学び直しの機会を充実させ、職業人生の設計を各自が適切に行うことができるような環境を整備することが課題です。

第3章では、企業部門の成長に向けた取組と好循環の確立に向けた課題について分析しています。技術革新、ライフスタイルの変化、訪日外国人の増加、海外での競争力の強化などを通じて、企業は稼ぐ力を強化していますが、企業の投資行動や賃金分配は慎重化しており、好循環の確立に向けて一層の生産性向上を図ることが課題です。

本報告書の分析が日本経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助となれば幸いです。

平成30年1月

内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
中村 昭裕

※本報告の本文は、原則として2017年12月28日までに入手したデータに基づいている。

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