第1章 日本経済の現状とデフレ脱却に向けた動き(第3節)

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第3節 人口減少・少子高齢化の中での労働市場の変化

今回の景気回復局面においては、実質GDPの増加率が平均して年率1.3%程度の緩やかな伸びとなっているのに対し、労働市場では、有効求人倍率が1.41倍に上昇し、雇用者数が増加する中で失業率も3.1%まで低下するなど(2016年11月)、労働需給は1990年代に匹敵する水準まで改善している(前掲第1-1-1図(1)及び第1-1-2図(1))。また、企業の人手不足感もバブル崩壊後の景気後退局面以降では最も高くなっている。こうしたことから、労働市場における需給の改善は、単に景気回復によるものではなく、人口減少・高齢化に伴う我が国経済の構造変化を反映したものではないかとの見方もある。本節では、今次景気回復局面における労働市場関連の各種指標の顕著な改善の背景について、以下の3点に着目して分析する。

第一は、人口減少・高齢化が各種指標に与える影響である。就業率の高い若年人口の減少は労働需給の引き締まりを加速させるとみられるが、他方で、近年は女性や高齢者の労働参加率が顕著に上昇しているため、双方の要因を考慮する必要がある。

第二は、失業率が大きく低下している背景である。失業率が低下している背景には、人口要因の他に製造業の雇用喪失が一時期よりも小さくなっていることや、非製造業で引き続き雇用が創出されていることがある。

第三は、時間単位でみた労働供給の変化である。近年、一人当たりの労働時間が低下する傾向にあり、マンアワーでみた総労働供給はそれほど伸びていないことや、時間あたりの労働生産性の伸びが低下しつつあることで、労働参加の広がりに対して経済成長が緩やかなものにとどまっている。

最後にまとめとして、こうした分析を踏まえて、今後の労働市場の在り方について考察する。

1 人口構造の変化が労働市場に及ぼす影響

(有効求人倍率の改善)

有効求人倍率は1991年以来の水準まで上昇するなど、労働需給は更に引き締まりの方向で推移している。有効求人倍率の動向を求職・求人者数に分けてみると、求職者数は減少する一方で求人数は増加しており、需給双方の要因から上昇している。求人数が特に増えているのは医療・福祉や卸売・小売、飲食・宿泊といったサービス業であるが、建設業や製造業でも増加している(第1-3-1図(1))。また、地域別に求人の動きをみると、全体として増加傾向にある(第1-3-1図(2))。

有効求人倍率は公共職業安定所における求人及び求職を捉えているものであり、求人・求職の全体像を捉えているわけではない。実際、付図1-3において2015年時点における入職経路としては、民間の求人広告を通じた入職が3割強で最も多く、次いで、縁故による入職者と公共職業安定所を通じた入職者が共に2割強となっている。付図1-4にみるように、民間の求人広告件数や大卒求人数をみても一貫して上昇傾向にあり、雇用情勢の改善を裏付けている。

第1-3-1図 産業・地域別新規求人数の推移
第1-3-1図 産業・地域別新規求人数の推移 のグラフ

(GDP成長率と労働市場関連指標のかい離)

今次の景気回復局面の特徴を捉えるため、第1-3-2図で、GDPと就業者数や有効求人倍率、失業率といった労働市場に関する各種指標の伸びを最近の3回の景気回復局面と比較してみよう。2012年第4四半期以降の就業者数や求人倍率の伸びは、最近3回の景気回復局面と比較すると一番高くなっている。また、失業率の改善の程度も2002年以降の景気拡大期並となっている。特に、リーマン・ショック後の2009年以降の景気回復では、就業者数が約100万人減少するという、いわゆる「ジョブレスリカバリー」であったのに対して、今次回復局面では約190万人就業者数が増加しており、対極的になっている。

一方で、今次回復局面では、就業者の伸びや失業率の改善の程度に比較するとGDPの伸びの力強さに欠ける。以上をまとめると、今次景気回復の特徴として、労働市場において明確な改善が確認できるのに対して、GDPの伸びは緩やかなものにとどまっていることが指摘できる。

第1-3-2図 景気回復局面における労働市場関連指標とGDP
第1-3-2図 景気回復局面における労働市場関連指標とGDP のグラフ

(生産年齢人口が減少する中でも労働力人口・就業者数は増加)

GDPと労働市場指標のかい離の背景の一つとして我が国の急速な少子高齢化による労働力の供給制約が指摘されることが多い。

我が国の15歳以上人口は2010年にピークを迎えそれ以降緩やかに減少しているが、15歳から64歳までの生産年齢人口はそれより13年前の1997年にピークの約8,700万人となって以降急速に減少しており、2015年には約1,000万人少ない約7,700万人となっている。そうした中、我が国の労働力人口は2005年以降減少してきたが、2013年から再び緩やかに増加に転じている(第1-3-3図)。

こうした背景には、人口構成の約3割を占める65歳以上の労働参加率が徐々に高まっていることに加え、65歳未満の女性の労働参加率がこの10年で6.5%ポイント上昇していることがある。こうした労働力人口の増加に伴って、改善が続く雇用環境の中、就業者数についても2013年から増加している。

第1-3-3図 労働力人口と生産年齢人口
第1-3-3図 労働力人口と生産年齢人口 のグラフ

(就業者数の増加によって失業者が160万人減少)

失業者数は、2009年以降、約160万人減少している。失業者は職に就いて就業者となるか、または非労働力化することで減少する1。第1-3-4図では失業者数の減少要因を労働力人口と就業者の増減に要因分解しているが、2012年末までは、就業者の減少が失業者数を押し上げる傾向にある中で、労働力人口の減少(非労働力化)が失業者数を押し下げる方向に寄与していたことが分かる。他方、2013年以降は、前述した労働参加の拡大による就業者数の増加が失業者数を押し下げる方向に寄与する中で、労働力人口の減少の寄与は縮小し、2016年半ば以降は、労働力人口が増加に転じ、就業者数の伸びによって失業者が減少する姿となっている。今回の景気回復局面において、2015年頃までは労働力人口の減少によって失業率が改善していた側面もあったと考えられるが、2016年半ば以降については、生産年齢人口の減少の影響を労働参加率の上昇により、跳ね返す形になっている。

第1-3-4図 失業者数の動向
第1-3-4図 失業者数の動向 のグラフ

(3大都市圏以外では、人口減少による人手不足が顕在化している可能性)

有効求人倍率に対する労働力人口の影響についても、全国平均でみれば、失業者数と同様の傾向がみられる。有効求人倍率の動向を求人数と求職者数の増減に分けてみると、2009年頃から求人数が増加する一方で、求職者数は減少がみられており、ほぼ失業者数の動向に沿った動きとなっている。他方で、第1-3-5図において地域別の動向をみると、南関東と東海・近畿では、2010年以降労働力人口が増加する中、求職者数が減少しているが、それ以外の地域では労働力人口が減少している中で、求職者数も減少しており、人口減少による人手不足が顕在化している可能性がある。

第1-3-5図 地域別の労働力人口、求職者、有効求人倍率の動向
第1-3-5図 地域別の労働力人口、求職者、有効求人倍率の動向 のグラフ

(高齢化による失業率の押下げは限定的)

失業率を年齢別にみると、我が国では新卒一括採用の慣行により若年失業率が諸外国より低いものの、他の年齢に比較すれば若年者の失業率は高く、その後企業に定着していくにつれ減少していく。様々な事情で離職する者が増える50歳代後半には若干上昇するものの、65歳以上では、失業より引退を選び労働市場から退出する層も増えるため再び低くなる(第1-3-6図(1))。

このように年齢によって平均的な失業率の水準は違うため、高齢化によって人口構成が変わればマクロの失業率にも変化が生まれると考えられる。こうした影響をみるため、現実の失業率と、人口構成が変化しなかった場合の失業率を比較してみる2

1980年以降年齢構成が一定と仮定して、現実の年齢ごとの失業率を用いて仮想的な失業率を計算し、現実の失業率と比較すると、実際の失業率が一貫して年齢構成固定失業率を下回っており、その差は徐々に広がっている(第1-3-6図(2))。この背景には、比較的失業率の高い若年層の減少と失業率の低い高年齢層の増加がある。ただし、年齢構成の変化による失業率の低下幅は1980年から2015年の35年間かけて0.2%ポイント程度であり効果は限定的である。

第1-3-6図 失業者率と人口構成の変化
第1-3-6図 失業者率と人口構成の変化 のグラフ

2 失業率低下の背景

(離職確率の減少等により失業率は低下)

失業率低下の背景には、就業者が離職しにくくなったことや、失業者が次の仕事に就きやすくなったことなどが考えられるが、失業者が就業意欲を失うことで職探しをやめる(=就業意欲喪失非労働力化)によっても失業率は低下する。高齢化を背景に定年等を機に労働市場からの退出を選択する層も増加している可能性があり、非労働力化による失業率の低下は必ずしも雇用情勢の改善とはいえないため、労働力のフローを確認することで、失業率低下の背景を検討する。

定義上、全ての人は1就業、1失業、1非労働力(職についておらず、職探しもしていない状態)、の3つの状態間を移動しているため、この3つの状態間の移動確率を計算することで失業率低下の背景を分析することが出来る。第1-3-7図は、そうして計算した各状態間の移動確率を男女別に図示している。

まず、失業状態からの流出状況をみると、男女とも雇用環境の改善を背景に失業から就業に移行する確率(就業確率)が上昇してきていることが確認できる。また、男性ではほぼ一貫して就業確率が失業から非労働力になる確率(非労働力化率)を上回っているが2012年頃その差が縮まった後再び就業確率が上回っている。他方、女性では2013年まで就業確率に比べて非労働力化率が高かったが、最近では両者はほぼ同水準となっている。また、失業への流入をみると、男女とも非労働力状態から失業、就業状態から失業のいずれも低下傾向にある。最後に、就業状態と非労働力状態間の行き来をみると、女性では若干低下傾向にあるものの男性ではほぼ一定している。こうしたことから、失業者数の減少は、主に就業確率が上昇し、離職確率が低下していることによるものであり、高齢化を背景にした非労働力化が主因とはいえない。

就業から失業への流入が減少し、また失業から就業への流出が増加した背景をより詳しく調べるために、雇用動向調査を用いて、製造業、非製造業の入職率・離職率の推移をみてみよう(第1-3-8図)。製造業では、2008年のリーマン・ショックとそれに続く世界的な景気後退によって離職率が大きく上昇するとともに、入職率が大幅に低下している。その後、2010年以降離職率は改善しているものの、入職率は2015年でも2007年以前の水準には戻っておらず、離職率が入職率を上回っている状況が続いている。他方、非製造業では、一貫して入職率・離職率ともに高い傾向がみられる。特に、飲食・宿泊、医療・福祉では新たな雇用が創出されていることがうかがえる。過去の研究事例では、離職者は蓄積された技能を生かすために同じ業種内で職を探す傾向がみられることが指摘されている3。製造業のように、業種全体として就業機会が減少している場合には、離職者が新たな仕事を同じ業界内で見つけることが難しく、結果として失業率が高くなる可能性がある。

以上の点を踏まえて今後の失業率の動向を考察すると、失業への流入については、今後製造業の国内拠点が拡充していくのかどうか、また、非製造業において新たな雇用がどの程度創出されていくか、そして、業種を超えた労働移動が活発化するかどうかが大きな鍵を握っている。他方、失業からの流出については、団塊の世代が既に65歳を過ぎているため、労働市場からの退出による失業者数の減少は一服した可能性がある一方、就業確率の上昇がどの程度失業から就業への流出を押し上げる可能性があるかにかかっている。そこで次に、就業確率を決定する重要な要素である労働市場の効率性について考察する。

第1-3-7図 労働の各状態間の移動状況
第1-3-7図 労働の各状態間の移動状況 のグラフ
第1-3-8図 産業別離職率・入職率
第1-3-8図 産業別離職率・入職率 のグラフ

(労働市場の効率性)

失業率と欠員率を示すUV曲線から推計される構造的・摩擦的失業率は付図1-5にみるように高止まっている。この背景をみるため、第1-3-9図で業種別に企業の人手不足感をみると、長期の景気拡大を背景に有効求人倍率が高まっていた2000年代後半と比較すると、製造業と非製造業で企業の雇用判断に大きなかい離がみられる。

業種別には、福祉・介護等の個人サービスや建設業、運輸業の人手不足感が2000年以降で最も強くなっている一方で、輸送用機械の不足感は2006年~07年とほぼ同水準である。

長期的に人手不足となっている産業に労働者が移動すれば、労働市場全体でみた入職率が上昇し、失業率も更に改善すると考えられる。労働者の流入を促進するための賃金上昇が確認できれば、こうした動きが期待できる。第1-3-10図で、業種別に賃上げ率と欠員率の関係をみると、パートでは、医療・福祉業や飲食サービスで比較的高い賃金上昇がみられるが、一般労働者では、医療・福祉業では1%程度の賃金上昇にとどまっているほか、飲食サービス業等では賃金が下がっているなどはっきりとした賃金上昇の動きはみられない。一般労働者における欠員率が賃上げにつながらない背景としては、他社との競争や消費者の節約志向を前提に販売価格が上げられないことや、制度上自由に価格設定ができないといった事情によって人件費の転嫁が難しいことがあると考えられる。

以上の考察を踏まえると、失業から就業への流出の確率については、一部の産業において恒常的に欠員率が高くなっている中、賃金の引上げが難しくなっていることがあり、生産性の向上や制度の見直しなど構造問題への対処なしには、労働市場の効率性の改善が難しいと考えられる。

第1-3-9図 雇用人員判断DIの推移
第1-3-9図 雇用人員判断DIの推移 のグラフ
第1-3-10図 欠員率と賃上げ率
第1-3-10図 欠員率と賃上げ率 のグラフ

3 労働時間と労働生産性

(短時間労働者の増加により時間でみた労働供給量は減少)

我が国経済における労働投入量を総労働時間(マンアワー)でみてみると、第1-3-11図にみるように、就業者数は増加しているものの、一人当たり労働時間が減少しているため、マクロでは一貫して減少している。マンアワー減少の背景を分析するために、男女別の寄与度分解をした結果を第1-3-12図に示す。これによると男性では生産年齢人口の減少が最も影響が大きく、次に15~64歳の層における就業時間の減少が効いている。女性では、同様に生産年齢人口及び就業時間が減少に寄与するものの、生産年齢人口の就業率が増加に寄与し、全体としてはこのところ緩やかに増加している。

就業時間をより詳しくみるため、第1-3-13図で男女別に労働時間の分布をみてみよう。男性就業者の労働時間を年齢別にみると、全ての年齢層において平均就業時間が減少する傾向がみられる。特に、週間労働時間が40時間未満となる層が増加している。これらは、各年齢層における短時間労働者の増加を示唆していると考えられる。

同時に、長時間労働を行う者の割合も全年齢で減少している。特に、30歳代男性では、週60時間以上の長時間労働を行う者の割合が顕著に減少する中、40~59時間働く層が増加している。ただし、40~50歳代の男性ではそうした長時間労働是正の動きが弱く、年齢によって働き方の変化に差が出ていることに留意が必要である。

このように、男性の労働時間の減少には、短時間労働者の増加と長時間労働の抑制という2つの要因が作用していると考えられる。

他方で、女性では、週29時間以下の就業者の割合が30歳代を除いて増加しており、女性の労働参加の拡大は短時間就労を中心に起きていることが確認できる。

第1-3-11図 マンアワーの推移
第1-3-11図 マンアワーの推移 のグラフ
第1-3-12図 マンアワーの寄与度分解
第1-3-12図 マンアワーの寄与度分解 のグラフ
第1-3-13図 週間就業時間別就業者数
第1-3-13図 週間就業時間別就業者数 のグラフ

(労働生産性の伸び悩み)

第1-3-14図で実質GDPをマンアワーベースの労働投入量で除した労働生産性をみると、2013年以降、過去の景気回復局面と比べて緩やかになっている。こうした労働生産性の伸びの低下の背景については2章で詳しく分析するが、労働市場に関連する要因としては、短時間労働者の比率が増加していることが影響している可能性がある。これは、短時間労働者は一般労働者と比べて相対的に技能習得にかける時間や費用が小さいことによる部分が少なくないと考えられる。国際的に、短時間労働者比率と労働生産性を比較すると、一部の例外はあるものの、一般的に、短時間労働者比率が高まった国で労働生産性が伸び悩んでいる傾向がみられる(付図1-6)。

第1-3-14図 労働生産性の推移
第1-3-14図 労働生産性の推移 のグラフ

(今後の労働市場の課題)

以上の分析から、今回の景気回復局面において、GDPの伸びに比して失業率や就業者数といった労働市場関連指標に顕著な改善がみられている背景として、次の3点が指摘できる。

第一は、人口減少・高齢化が潜在的に労働力人口を下押ししており、有効求人倍率や失業率を改善している可能性がある。ただし、最近では労働参加率の上昇により労働人口が緩やかに増加しており、全国でみればその影響はほぼ相殺されつつある。

第二に、今次景気回復局面における失業率の低下の背景には、就業確率の上昇と離職確率の減少があり、特に製造業での離職確率が落ち着いてきたことに加え、雇用吸収力の高いサービス業における入職確率が増加していることが影響している。

第三に、女性や高齢者を中心に労働参加率が上昇しているために、労働時間の短縮化が進み、就業者数が増加する中マンアワーでみた総労働供給は減少している。加えて、短時間労働者の増加もあってマクロの労働生産性が伸び悩んでいる。

以上の分析を基に、今後の労働供給の制約について考えると、当面は、女性や高齢者の労働参加の拡大はまだ一定程度見込める可能性がある。内閣府(2016)は、働きたいと考えている女性や高齢者の全てが労働参加すればマンアワーでみて2%程度の総労働供給の増加が見込まれるとしている。さらに、税制や社会保険制度上のルールにあわせて労働時間を調整していた層については、中長期的には、制度改革によって労働供給の拡大を期待できる4

しかしながら、労働力人口の減少は不可避であり、生産性の向上とともに今後必要な人材を確保する方策を取る必要に迫られている。国内の労働力が縮小する中で人材を有効活用するためには、労働者の円滑な移動を支援していく必要がある。

労働移動の現状をみると、付図1-7にあるように転職者数は2016年に6年ぶりに290万人台を回復するなど、我が国の転職市場は緩やかに活性化している。また、30歳未満男性では、転職により「1割以上賃金が上がった」とする層が「1割以上賃金が下がった」層を大きく上回っており、若者を中心に前向きな転職が増加している。

厚生労働省の調査によれば、転職の活性化のためには、公的な求人求職情報の提供機能の拡充や、スキルの開発に対する支援、さらにそれを客観的に評価できる仕組みづくりが労使双方から期待されている(第1-3-15図)。職業訓練の更なる充実を図るとともに、求人求職情報の提供方法の見直しや、個人の職業能力の証明となる「ジョブ・カード」の普及が必要である。

さらに転職者からは、企業年金・退職金が不利にならないような制度の改善が必要との声が強い。企業年金や退職金は、現在加入している制度や転職先の制度によっては、退職時に低額の給付が行われてしまうことから、将来的な受給額を勘案し、転職を躊躇する者もいると考えられる。

さらなる人材確保のためには海外にも目を向ける必要がある。グローバル経済の中で高付加価値を生み出していくためには、国籍を問わず多様な価値観や経験、ノウハウ、技術を持った高度人材を確保していく必要がある。高度人材の必要性は各国が認識しており、我が国はグローバルな人材獲得競争にさらされている状況にある。

海外からの高度人材の獲得を企図して2012年から開始されたポイント制による高度人材の認定件数は2016年10月現在で6,298件となっており、日本再興戦略2016(2016年6月2日閣議決定)に掲げられた「2017年末までに5,000人の高度人材認定を目指す。」との目標を前倒しで達成している。今後、更なる活用の拡大が期待される(第1-3-16図)。

第1-3-15図 転職者の採用のために/転職活動のために行政に求めること
第1-3-15図 転職者の採用のために/転職活動のために行政に求めること のグラフ
第1-3-16図 高度外国人材の活用
第1-3-16図 高度外国人材の活用 のグラフ

1 失業者数=労働力人口-就業者数
2 本分析に当たっては太田他(2008)を参照した。
3 阿部(2005)。
4 2016年10月から、501人以上の企業で短時間労働者への被用者保険の適用拡大が実施されており、被扶養認定基準(130万円)以内での就業調整を行っていた被用者保険加入者の配偶者がより長く働く可能性がある。また、2016年12月22日に閣議決定された平成29年度税制改正の大綱では、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しが盛り込まれた。
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