付注1-2-4 2013年以降に実施された賃金引上げに関する施策について
アベノミクスにおいては、「成長と分配の好循環」の実現に向け、賃金の引上げに関する取組を継続的に進めている。具体的には、政労使会議の開催による賃金改定交渉に向けた社会・経済情勢のコンセンサス醸成や、最低賃金の高い水準での引上げを進めるとともに、様々な事業等を展開している。これらは、生産性向上等も念頭においた働き方改革や、新市場など成長分野の拡大に向けた施策と同様に、マクロ経済政策としての色合いの強い取組ともいえる。
賃金引上げに向けた環境づくりとしては、企業を対象に生産性向上のための各種施策も講じてきており、「未来への投資を実現する経済対策」(2016年8月2日閣議決定)においても新たな施策を打ち出したところである。
賃金引上げや生産性向上に関しては、2013年以降、主に以下のような事業等を講じてきている1。
(1)賃金引上げにかかる施策
①非正規雇用の労働者のキャリアアップ事業(キャリアアップ助成金):平成25年度より、有機契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、これらの取組を実施した事業主に対して助成を行う(基本給の賃金規定等を改定し、2%以上増額させた場合等。平成25年度当初予算以降)。
②所得拡大促進税制:給与等支給額を増加させた場合、当該支給増加額について10%の税額控除を認める(平成25年度税制改正)。
③ものづくり・商業サービス新展開支援事業(ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金):国内外のニーズに対応したサービスやものづくりの新事業を創出するため、認定支援機関と連携して、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行う中小企業・小規模事業者の設備投資等を支援する。その際、給与総額を上げたまたは上げる企業について採択審査に加点する(平成27年度補正予算)2。
④地域未来投資促進事業:中小企業・小規模事業者の生産性向上のため、革新的ものづくり・サービスの開発に加え、IT化による業務効率化や、TPPも見据えた海外販路開拓などの新たな需要の創出を補助金等により一体的に支援する。賃上げ・雇用対策に取り組む事業者や、最低賃金引上げの影響を受ける事業者による取組は重点的に支援する(平成28年度第2次補正予算)。
(2)生産性向上にかかる施策3
①生産等設備投資促進税制:国内設備投資を増加させた法人が新たに国内で取得等した機械・装置について、特別償却又は税額控除を行うことを可能にする(平成25年度税制改正)。
②生産性向上設備投資促進税制:先端設備、生産ラインやオペレーションの改善に資する設備等の取得等をした場合に、特別償却または税額控除を行うことを可能にする(平成26年度税制改正)。
③中小企業投資促進税制:中小企業の生産性向上に向けた設備投資を即時償却や税額控除で支援する(平成26年度税制改正)。
④新たな機械装置の投資にかかる固定資産税の特例:中小企業が経営力向上計画の認定を受け、生産性向上に資する機械装置を新たに取得した場合、固定資産税(1.4%)を3年間にわたって2分の1に軽減する(平成28年度税制改正)。