[目次]    [次へ]

「日本経済2012-2013」刊行にあたって

内閣府経済財政分析担当では、毎年末に「日本経済」シリーズを公表し、「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供しています。今回の報告書で特に力点を置いたのは、景気の動きと並行して進行中の厳しい産業調整の姿です。

2012年年央以降、景気が下向きの動きを強めていった背景としては、エコカー補助金の効果が一巡するタイミングで輸出が顕著に減少したことが大きいといえます。そうだとすれば、景気そのものは、自動車の販売が底入れし、中国など海外景気の状況が改善するにつれ、次第に回復へ向かうことが期待されます。もちろん、対外経済環境は依然厳しく、リスクは下方に偏っており、その動向を注意深く見極めていくことが必要と考えています。

こうしたなかで見過ごせないのは、2010年以降、大震災等の影響を別にしても、我が国の輸出の勢いが諸外国と比べて弱いことです。その背景として、円高傾向が続くもとでの電子・電機分野の競争力低下、自動車産業等での海外生産シフトの進展といった要因が指摘できます。我が国の輸出力が弱っていたところへ海外景気の減速が追い打ちをかけたというのが、今回の景気局面の本質ではないでしょうか。

デフレもこうした現象と無縁ではありません。企業にとってデフレの弊害とは、売上価格と仕入価格の差が縮まり利益が出せないことから来ます。現在では2000年代前半と違い賃金デフレは幾分緩和していますが、強まる競争圧力のもとで輸出物価の下落が続き、製造業を中心に利益が圧迫されています。デフレ対策として、金融政策などと並んで交易条件改善へ向けた対応が必要なゆえんです。

製造業のシェアのすう勢的な低下は先進国共通の現象であり、乗り越える道はあるはずです。我が国では、これまでは海外市場の獲得を狙った生産シフトが国内の企業活動を活性化してきた面もあり、そうした強みを活かす一方で、年功的な賃金制度による転職の難しさなど弱みを補っていくことが求められます。

現状は、リーマンショックを経て世界的に比較優位や需要の構造が変化するなかで、厳しい円高等を契機として我が国の産業の在り方が問われているのだといえます。こうした課題に応え、将来の展望を見いだせるようにしていくことが、持続的な成長の実現、デフレの克服のためにも必要です。

本報告書の分析が、日本経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助となれば幸いです。

平成24年12月

内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
西崎 文平

※本報告の本文は、原則として2012年12月14日までに入手したデータに基づいている。

[目次]    [次へ]