付注3-2 景気判断を行う際の経済指標の見方
経済指標が改善しているかどうか、あるいは悪化しているかどうかは、その指標の伸び率をみて判断するが、その際、前年同期からの伸び率をみる場合と前期からの伸び率をみる場合の二通りの見方がある。
多くの指標は、天候、社会慣習などを背景に毎年ほぼ同じような規則的・循環的な変動を示しているため、経済の実勢を判断するためにはこうした季節性を持った動きを除去する必要がある。前年同期との比較はそうした季節性を除去する最も簡便な方法の一つである。
しかしながら、前年同期からの変化は過去一年分の変化の累積であるため、短期的な変化を捉えるために前年同期からの変化をみることは必ずしも適当な方法とはいえない。例えば、図3-3に示した鉱工業生産指数の伸び率の推移をみると、前月比と前年同月比の伸び率は、同じような動きをしているが、前年同月比の方が前月比よりも遅れて変動している。前年同期比の動きは景気の転換点を過ぎた後もしばらく増加あるいは減少を続ける場合があることから、前年同期からの動きだけをみていると景気の転換点の判断が遅れる可能性がある。
したがって、足下の景気情勢を的確に捉えるためには、季節調整を行った上で前期との比較を行うことが有効である。内閣府は、月例経済報告において毎月の景気動向をみているが、このような理由から経済指標の動きについては前月(前期)との比較を基本として景気判断を行っている。
ただし、季節調整済みの系列といっても短期的な変動を全て取り除けているわけではなく、単月の動きでは、基調が変化したのかどうかの判断が困難な場合が多い。このような場合は更に移動平均を取るなどによって、変動を平滑化することで基調的な動きを判断することが必要となる。