「日本経済2006」刊行にあたって
2002年初に始まった今回の景気回復は、長期間にわたって持続しています。この間、民間部門の構造調整の進展と政府による構造改革の加速・強化により、デフレからの脱却が視野に入るなど、新たな成長へ向けた基盤がしっかりしたものになってきました。
経済財政分析担当では、日々変化する経済状況についての様々な分析を行い、月例経済報告等で明らかにしております。このような蓄積を背景として本報告書では2006年における経済動向を概観するとともに、景気の今後の動向をみる上で重要と考えられるいくつかの論点を取り上げ、詳細な分析を行なっています。
本報告書の第1章では今回の景気回復の現状と先行きについて本年秋までの経済指標をもとに概観しています。続く第2章ではこれまで景気回復を牽引してきた好調な企業部門の動向に焦点を当て、生産・出荷・在庫、設備投資、企業収益等の現状を分析するとともに、好調さの一方で同部門が内包する課題について整理を行っています。第3章では2005年の踊り場脱却以降に加速した消費の伸びが2006年半ば頃に鈍化してきた背景について家計部門の所得環境などを踏まえて分析しています。さらに、今後のデフレ脱却について同部門からみた留意点についても確認しています。第4章ではデフレ脱却をめぐる環境について、8月に行われた消費者物価指数の基準改定についての評価を行った上で、物価の先行きについて展望しています。さらに、資産価格に関し、持ち直しがみられる地価動向について分析しています。最後に第5章では金融政策が正常化する過程における金融市場や銀行貸出市場の動向を中心に分析するとともに、経済正常化へ向けた金融政策面での対応について考察を行っています。
本報告書の分析が、日本経済の現状に関する認識を深め、今後の景気動向をみる上での一助になれば幸いです。
平成18年12月
内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
高橋 進