バウチャー入門コーナー
バウチャー入門コーナーQ&A
- Q1 バウチャーとは何ですか。
- Q2 いまなぜバウチャーなのですか。
- Q3 バウチャーの導入はどんな分野で考えられますか。
- Q4 バウチャーは「ばらまき」になりませんか。
- Q5 バウチャーを導入すると、その分野での政府の役割はどう変わりますか。
- Q6 バウチャーについての今後の政府の取り組みを教えてください。
Q1 バウチャーとは何ですか。
A1 バウチャー(voucher)は、一般には証票を意味します。しかし、政策手段としてのバウチャーとは、「教育訓練」や「保育サービス」というように使い道が限定されて、個人が政府から受け取る補助金のことです。具体的な方式としては、事前に利用券(クーポン券ともいいます:クーポン(coupon)とは切符のこと)が支給され、それを使ってサービスを利用するという形もありますが、利用券の代わりにICカードなどで使用限度額を管理する形もあります。また、利用券もカードもなく、サービスを契約ないし利用したあとで、政府から個人に補助金が出る場合でもバウチャーと呼ぶことができます。その意味では、日本育英会の奨学金(低金利の形で補助金が出ている)や雇用保険の制度である教育訓練給付も一種のバウチャーです。
Q2 いまなぜバウチャーなのですか。
A2 これまで、政府の補助金はサービスを提供する側の施設に交付されることが普通でした。その場合、どの施設にどれだけ補助金を投入するかは政府が決めます。公立施設は私立施設より補助金(公費)が多く投入されるのが一般的です。バウチャーを導入すると、政府の補助金は利用者個人に直接交付されることになります。そうすると、利用者が希望する施設を「選択」し、施設の側では選択されるように公立私立を問わず「競争」が強まり、結果として利用者のニーズに沿ったサービスが提供されやすくなります。このような「選択」と「競争」がバウチャーの本質であり、構造改革を進める世界の国々で続々と導入されている理由です。
Q3 バウチャーの導入はどんな分野で考えられますか。
A3 バウチャーは、利用者の選択が重要と思われる政策分野で有効です。世界の例を見ると、学校教育、職業訓練、保育、家事、高齢者介護、住宅などが代表的な分野です。我が国でも、日本育英会の奨学金や教育訓練給付など、バウチャーの一種がすでに導入されている分野があります。
Q4 バウチャーは「ばらまき」になりませんか。
A4 バウチャーは「ばらまき」とは無関係です。なぜならば、バウチャーは使い道が限定された補助金ですから、政策的に重要な目的に絞ることができます。また、バウチャーは個人に対する補助金ですから、個人の所得など置かれている状況を踏まえ、補助金の金額をきめ細かく設定することができます。さらに、バウチャーはサービスを提供する側の競争を強めて効率化を促すので、従来と同じサービスを提供するために必要なコストが削減され、補助金も少なくて済むという効果もあります。
Q5 バウチャーを導入すると、その分野での政府の役割はどう変わりますか。
A5 政府はバウチャーの形で補助金を交付するほかに、引き続き施設で提供されるサービスに関する一定の基準を定め、それが守られているか監視することになります。しかし、バウチャーを導入すると利用者のニーズに合わない施設は選択されにくくなるので、施設自らサービス内容を改善しよういう意欲が出てきます。したがって、政府は利用者の安全に直結する事項などに絞って基準を定めれば十分で、いままでより少ないコストで重要な点を確実に監視できるようになります。
Q6 バウチャーについての今後の政府の取り組みを教えてください。
A6 教育分野では、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(2001年6月)の中で、大学教育について、「個人支援を重視する方向で、公的支援全体を見直す中で、教育を受ける意欲と能力がある人が確実にこれを受けられるよう、奨学金の充実や教育を受ける個人の自助努力を支援する施策を検討する」としています。また、保育サービスについては、「規制改革推進3か年計画」(2001年3月)において、「多様な事業者間の対等な競争の促進等を通じ、保育所に対する援助ではなく、利用者への直接補助方式の導入ができないか、その可否について検討する」としています。