参考1 「選択する未来」委員会報告

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IV 結び

本委員会では、今夏から秋口にかけて、年央の中間整理やその後の議論をベースとした世論調査、アンケート調査、各種提言受付、一般意見募集、シンポジウム開催等を行い、幅広く国民各層の要望、意見等の把握に努めた。その結果、未来に対する希望を抱くことができる様々な情報が得られた。

世論調査は、広く国民一般を対象にした調査として、日本の未来像や、人口や経済や地域社会を巡る課題について質問した30

日本の未来像について、6割超の人々が「暗い」「どちらかといえば暗い」と回答し、「明るい」「どちらかといえば明るい」は3割にとどまった。ただ、20歳代の若い世代では、「明るい」「どちらかといえば明るい」が4割超となるなど、若い世代では将来に対して悲観しない意見がやや多い傾向がみられる。人口が急速に減少することに対して、望ましくなく何らかの対応を講ずるべきと考える人は全体の8割を占め、若い世代でも壮年、高齢の世代でも同様の回答傾向であった。それに続けて、「高齢者に対する政策を抑制して、若い世代に対する政策を拡充する」「若い世代に対する政策を抑制して、高齢者に対する政策を拡充する」を選ぶ質問をしたところ、若い世代ほど前者ではなくて後者を選ぶという結果であった。すなわち、世代間の対立は認められず、支え合いを大切にする傾向が看取される。

また、シンポジウムの参加者に対して、中間整理等の内容を理解していただいた上で、世論調査と同じ質問をしたところ、いくつかの差違が確認された。

人口減少について、世論調査とシンポジウム参加者を比較すると、シンポジウム参加者では「人口減少は仕方がない」等の回答が減少し、「人口の減少は望ましくなく、減少幅が小さくなるよう努力すべき」が大幅に増えて全体の6割を占めた。また、日本の未来像について、世論調査では6割超の人々が「暗い」「どちらかといえば暗い」との回答であったが、シンポジウム参加者では同回答は5割を下回り、「わからない」が世論調査に比して大幅に増加した。すなわち、課題に対する理解の深まりによって、未来像はすでに決まっているのではなく、これからの選択によって決めることができ、これからの選択が重要だとの認識に至るものと考えられる。

人口急減・超高齢化が招来し、日本の経済社会全体が負の連鎖に陥り、地域社会が衰退していくことは避けなければならない。何とか変えていく必要がある、そのための選択を積み重ねていくべきである、と多く人々が望むようになっていくことによって、少しずつしか変わってこなかったこれまでの日本の経済社会が、大きく改革・変革へと踏み出していくことを信じたい。

大事なことは、改革・変革に向けた取組にいますぐとりかかることである。デフレ脱却が視野に入ってきたいまのタイミングが歯車の好転を図り得る好機である。このタイミングを逸して取組を遅延させた場合、そのコスト、代償の大きさは計り知れないものとなる可能性がある。本報告でみてきたように、困難な課題はたくさんあるが、希望が実現できるようにする、いままでやっていなかったことをやってみる、そういう発想で取り組むならば、決して克服できない課題ということではない。

2020年までに残された時間は多くない。2020年のその先の、いまから50年後の未来が、さらにその次の世代の未来へと明るく開かれたものであるよう、いまから始めなければならない。


30 「人口、経済社会等の日本の将来像に関する世論調査」(平成26年8月)
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