第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題

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第1節 人口をめぐる現状と課題

Q5 諸外国における少子化の状況はどのようになっていますか。

A5

図表3-1-5-1 先進諸国における合計特殊出生率の推移
図表3-1-5-2 先進諸国における合計特殊出生率の推移(1990-2010年)

●主な先進諸国における少子化の状況

多くの先進諸国の合計特殊出生率は、1965年前後から低下し、1980年頃までには人口置換水準を下回るまで低下した。1985年頃からは、出生率が回復する国も見られるようになり、1990年頃からは、出生率の動きは国によって特有の動きをみせるようになった。その特徴は、出生率が1.8前後から人口置換水準をわずかに下回る程度にまで回復している国と、出生率が1.5を下回る極めて低水準で推移する国に大別できることである。近年では、出生率が低水準で推移する国において、若干出生率が回復する動きがみられるようになっている。

スウェーデン、フィンランドといった北欧諸国は、比較的高水準の出生率を維持し、少子化の程度は小さい。例えばスウェーデンは、出生率が1960年代にわずかに上昇したのち、1970年代まで次第に低下し1983年には1.61まで低下した。その後は上昇に転じ、1990年には人口置換水準まで再び上昇したが、1990年後半には一転して下降に転じ、1999年には1.5まで低下した。2000年代には再び上昇に転じ、近年では1.9台を超える水準で推移している。

フランスは、西欧諸国において近年比較的高位の出生率を維持している国である。1960年代半ば頃までベビーブームにより出生率が上昇し、1970年末にかけて急激に低下した。1980年代は1.8台を維持し、1993年には1.66まで低下した。1990年後半には上昇に転じ、2000年以降は1.9台まで上昇し、近年では2.0台を維持している。

イギリスは、出生率が1960年代にかけて2.5を超える出生率を維持するが、1970年代には低下し、1980年代はおおむね1.8台で推移した。1990年代には緩やかに低下し、2000年には1.69まで低下するが、その後は回復傾向となり、近年では1.9台で推移している。また、アメリカは、1950年代後半から1960年代前半にベビーブームによる出生率の急激な上昇がみられた。その後、1970年代は低下し、1980年代は1.8台で推移したが、1980年代後半から上昇に転じ、1990年代から2000年代にかけては2.0台で推移している。

ドイツやイタリア、スペインといった南欧諸国は、我が国と同様に出生率の低い国々である。アメリカやイギリスと同様に、出生率が1960年代にかけて上昇したのち、1970年代に急激に人口置換水準を下回った。1990年代後半頃からわずかに上昇するものの、長期にわたって1.5以下で低迷している。

韓国、台湾、香港、シンガポールは、日本より出生率が低い水準で推移している国々である。出生率は、1970年の時点ではいずれの国も我が国の水準を上回っていたが、1980年代にかけて急激に下降し、1990年代以降は1.5以下の水準で緩やかに低下を続けている。香港や台湾の両国は、2000年代以降一時的に1.0を下回る年もあったが、それ以降は上昇に転じており、直近では1.3前後で推移している。

●その他の諸国の状況

ロシアは、アメリカと並び1940~50年代から総人口が1億人を超えていた国だが、戦後半世紀でアメリカほど増加はしていない。1950年に1億280万人であったのが1993年には1億4,884万人となり、それ以降は緩やかに減少を続けている。なお、直近の2010年は1億4,362万人となっている。近年は少子化状況が続いており、1950年代前半は2.85と西欧諸国並みであったのが、1960年代後半頃から人口置換水準を下回るようになり(1965~70年平均:2.02)、直近では1.44(2005~10年平均)と1.5以下で推移している。

ロシアを除く東欧諸国(※1)は、ロシア同様に総人口が1990年代前半にピークを迎え(ピーク時:1991年1億6,268万人)、それ以降は緩やかに減少を続け、直近の2010年は1億5,257万人となっている。また、合計特殊出生率についても、ロシア同様に近年少子化状況が続いている。1950年代は、ルーマニア、ブルガリア等をはじめ6か国が2.5~2.9程度、ポーランド等3か国が3.5程度で推移していたが、1960年代から低下を始め、1990年代前半には大半の国が人口置換水準を下回るようになった。直近では1.3~1.5の水準(2005~10年平均)で推移している。

中国は、総人口が1950年に5億4,378万人であったのが2010年には13億5,982万人と約2.5倍に急増している。一方で合計特殊出生率については大きく低下しており、主な先進諸国と同様の経過をたどっている。1950年代前半は6.11(1950~55年平均)で、1960年代末までは6.0前後で推移していたが、1970年代に入ると一気に低下し、半分以下の水準となった(1975~80年平均は3.01)。1980年代以降は更に水準を下げ、80年代は2.0を多少上回る水準で推移し、それ以降は1.56(1995~00年平均)、1.55(2000~05年平均)、1.63(2005~10年平均)と1.5をわずかに上回る水準で少子化状況が続いている。

インドは、総人口が1950年は3億7,633万人であったのが、2010年には12億563万人と約3.2倍に急増している。合計特殊出生率については、1950年代は5.6~5.9程度で推移していたが、1960年代半ば頃から低下し始め、その後は上昇することなく低下し続けており、近年では2.66(2005~10年平均)で推移している。

シンガポールを除く東南アジア諸国(※2)は、総人口が1950年には1億6,696万人であったのが、2010年には5億9,202万人と増加している。上昇率は1995年頃まで対前年比2.0~2.8%台、それ以降は1.3~1.8%台で推移している。また、合計特殊出生率については、1960年代まで各国5.0~7.0程度の水準を推移していたが、1970年代以降多くの国が減少に転じた。直近ではタイが1.49、ヴェトナムが1.89、マレーシアとミャンマーが2.07、インドネシアが2.5、フィリピンが3.27であり、各国で水準が大きく異なっている。

南米諸国(※3)は、総人口が1950年には1億1,246万人であったのが、2010年には3億9,402万人と増加している。上昇率は80年半ば頃までは対前年比2.0~2.8%台、90年代以降は1.0~1.9%台で推移している。合計特殊出生率については戦後半世紀で減少を続けてきたが、近年はまだ少子化状況に至っていない。1950年代前半は5.66(1950~55年平均)で、1960年代末までは5.0台で推移していたが、それ以降は減少に転じ、直近では2.19(2005~10年平均)となっている。

アフリカ諸国(※4)は、総人口が1950年に2億2,883万人であったのが、2010年には10億3,108万人と急増している。上昇率は対前年比2.0~2.8%台で一貫して推移している。合計特殊出生率については世界的にも高く、戦後半世紀の間で先進諸国ほど低下していない。1950~55年平均が6.6であったのに対し、2005~10年平均は4.88という状況である。

◆脚注◆

(※1)ロシアを除く東欧諸国は、ベラルーシ、ブルガリア、チェコ、ハンガリー、ポーランド、モルドバ、ルーマニア、スロヴァキア、ウクライナの9カ国を指す。

(※2)シンガポールを除く東南アジア諸国は、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、東ティモール、ヴェトナムの10か国を指す。

(※3)南米諸国は、アルゼンチン、ボリヴィア、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、フォークランド諸島、フランス領ギアナ、ガイアナ、パラグアイ、ペルー、スリナム、ウルグアイ、ベネズエラの14カ国を指す。

(※4)アフリカ諸国は、東部(エチオピア、ケニア、モザンピーク等)、中部(コンゴ民主共和国、カメルーン、アンゴラ等)、北部(エジプト、モロッコ、アルジェリア等)、南部(南アフリカ、レソト、ナミビア等)、西部(ナイジェリア、ガーナ、マリ等)の5地域を合わせた58か国を指す。

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