第2章 人口・経済・地域社会の将来像
(10)人口・経済・地域社会をめぐる課題
●人口指標(普通出生率)と経済指標の関係-正の相関性があり、人口・経済・地域の課題への一体的な取組が重要
市区町村単位で出生動向と経済状況との関係を、前述の人口指標(普通出生率)と経済指標でみてみると、約30年前の1980年には両者の関係性はほとんどみられなかったが、近年は正の相関関係が強くなっている。
下図からも分かるとおり、最近時は、経済状態の好不調と出生の多い少ないがかなりはっきりと相関している。
普通出生率が高い地域のうち約6割は、経済指標が過去ないし全国平均よりも上向いている地域となっている。また、経済指標が過去ないし全国平均より上向いている地域のうち約4割の地域は、全国の中で普通出生率が高い地域上位約2割に含まれている。
子どもの数が多い地域社会とは、若者が多い、家庭当たり子ども数が多い、未婚・晩婚が少ない社会であり、そのような地域社会は、内発的で持続的な地域経済と密接に結びついており、両者の地域像は重なる部分が多い。
全国的に人口が減少し出生率が低下していく中、地域の魅力や暮らしやすさが選好され、人が集まり地域経済が活性化している可能性や、地域経済が持続している地域に若者が集まり、出生率が維持されている可能性がある。
こうしたことから、人口、経済、地域社会の課題を一体的に捉えることが非常に重要と考えられる。
●地域の人口規模と人口指標の関係-人口規模が小さい地域は普通出生率が低い
1970年代末から80年代初めにかけて一旦は収まったかにみえた少子化の流れは、その後再び強まって現在に至っている。
市区町村の人口規模別に人口指標(普通出生率)の推移を見てみると、1980年から1990年にかけては、いずれの市区町村も急激に低下した。それ以降は自治体の規模によってばらつきが生じている。人口50万人以上の規模の大きな自治体では、1990年以降の人口指標は比較的緩やかに低下しており、人口3~5万人、5~10万人規模で何とか経済を維持している街の場合、普通出生率の低下も緩和している様子が見られる。
3万人未満の自治体では、1980年から1990年の急低下と同程度の速度でそれ以降も低下しており厳しい状態が続いている。
●人口密度と合計特殊出生率の関係-人口密度が高い地域は合計特殊出生率が低い
市区町村単位で人口密度と合計特殊出生率の関係をみると、東京都区部などの人口稠密な地域では合計特殊出生率が低くなる傾向が強い。人口密度が中程度よりやや低位の地域では合計特殊出生率が高い地域が認められる。人口希薄な地域は合計特殊出生率について大きな値、小さな値をとることはないという傾向にある。