令和4年度年次経済財政報告公表に当たって
政府は、ウィズコロナの考え方の下、経済社会活動を極力継続できるよう取り組んできました。その結果、新型コロナウイルス感染症が経済に与える影響は小さくなり、景気は前向きな動きが続いています。一方で、世界的な脱炭素化の流れの中で、コロナ禍からの世界同時的な景気回復、さらにウクライナ情勢による影響が加わり、我が国経済は約30年ぶりの物価上昇率に直面しています。先行きについても、ウクライナ情勢の長期化に伴う原材料価格の更なる高騰や希少物資の供給懸念、世界的に進む金融政策正常化に伴う金融資本市場の変動など様々な下振れリスクがあります。これらへの対応に万全を期し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとしていく必要があります。
そのためにも、中期的な課題に対応しつつ、新陳代謝と多様性に満ちた裾野の広い経済成長と成長の果実が隅々まで行き渡る「成長と分配の好循環」を早期に実現する必要があります。その実現に向けて創造性を発揮し、付加価値を生み出していく原動力は「人」です。団塊世代が後期高齢者となり始め、今後、高齢化や人口減少が本格化していく中で、人への投資と分配を強化するとともに、雇用形態にかかわらず、個々の希望に応じて多様な働き方を選択できる環境整備を進めることが求められます。
また、世界的に進むデジタル化や脱炭素化という大きな構造変化に対応するため、これまで長期にわたり低迷してきた民間投資を喚起するとともに、官民が連携して計画的で大胆な重点投資を推進し、経済社会の構造を変化に対してより強靱で持続可能なものに変革していくことが重要です。
今、我々に求められているのは、この難局を単に乗り越えるだけでなく、官民が協働して社会課題の解決を力強い成長のエンジンとすることで、持続可能な成長を作る「新しい資本主義」を起動することです。今回で76回目となる本報告が現下の日本経済が直面する課題への対応に関する議論の深化に資することを願ってやみません。
令和4年7月
経済財政政策担当大臣