令和2年度年次経済財政報告公表に当たって

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変革のラストチャンス。新型コロナウイルス感染症の影響により、デジタル化の遅れをはじめとした、我が国経済が抱えてきた長年の課題の数々が浮き彫りになりました。その宿題返しが求められています。こうした強い危機感も含め、副題は「コロナ危機:日本経済変革のラストチャンス」としました。今後、強い決意とスピード感を持って日本経済の変革に挑んでいきます。

令和2年前半の我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、大きく落ち込みました。我が国では、欧米諸国のような強制力を伴うロックダウンは実施しませんでしたが、4月の緊急事態宣言を受けて外出や営業の自粛が進み、国内の経済活動は大幅に抑制されることになりました。また、ロックダウンが行われた諸外国経済の停滞により、我が国の輸出も急減しました。これらの結果、4-6月期の実質GDPはリーマンショック時を超える過去最大の減少となりました。

この間、感染者数の動きに落ち着きがみられるようになったことから5月に緊急事態宣言を解除し、感染拡大防止に努めながら経済社会活動を段階的に引き上げました。したがって、月次の動きを見ていくと、4、5月を底にして、6月以降、経済は持ち直しに転じました。その後は、感染者数の変動による経済活動の振れは見られますが、持ち直しの動きが続いています。

今回の新型コロナウイルスとの闘いはまだ続いています。感染リスクはゼロにはなりませんが、流行が起こっても小さな波に抑え込むことが重要です。また、感染症の拡大防止と経済社会活動の両立という困難な課題を克服するには、「新たな日常」の構築・定着が必須となります。感染拡大防止によって、需要が抑制される面は確かにありますが、ネット配信やデジタル決済、テレワーク等のデジタル技術を活用するなど「新たな日常」を構築し、実践することで需要を生み出し、経済を拡大していくことは十分に可能です。

今回の年次経済財政報告では、感染症によって下押しされた我が国経済の現状を分析すると同時に、コロナ後の経済においてカギとなる働き方改革の進捗確認、女性の正規雇用にみられる「L字カーブ」の解消を含めた継続就業の促進に向けた動き、そして、ネット消費を始めとしたデジタル化の動きと課題について取り上げています。

昭和22年に「経済実相報告書」が公表されて以来、名前は変わりましたが、今回は74回目になります。過去においても、我が国経済が直面する課題をデータに基づいて実証的に分析し、幅広い政策課題について論じてきましたが、今回の報告も、経済の現状認識や政策課題の議論の深化に資することを願ってやみません。

令和2年11月

経済財政政策担当大臣

経済財政政策担当大臣 西村康稔

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