令和元年度年次経済財政報告公表に当たって

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年次経済財政報告は、昭和22年に前身となる「経済実相報告書」が公表されて以来、日本経済が直面する課題をデータに基づいて実証的に分析し、幅広い政策課題について論じてきました。「令和」という新しい時代においても、その役割を追い求め、分析力を一層磨き、日本経済の現状と課題を的確に示す羅針盤でありたいと考えています。

平成の30年間、日本経済はバブル崩壊やデフレ、世界的な金融危機など様々な困難に直面し、それを乗り越える努力を続けてきました。現在、名目GDPは過去最大となる550兆円まで拡大し、企業収益は過去最高、雇用環境も大きく改善し、有効求人倍率は1.6倍を超えて45年ぶりの高水準となっています。

この間、日本経済のグローバル化は大きく進展し、貿易額は平成元年の67兆円から164兆円と2.5倍、海外直接投資は6倍、さらにインバウンド(訪日外国人数)は10倍になっています。こうしたグローバル化の進展や第4次産業革命の技術革新は、「令和」という新しい時代の我が国経済を大きく発展させることが期待されます。その思いを込め、今年の副題は、「『令和』新時代の日本経済」としました。

一方で、平成から令和に引き継がれた課題も多くあります。特に、人口減少・少子高齢化が進む中で、生産性の向上により潜在成長率を高めていくことは喫緊の課題です。また、海外で保護主義的な動きもみられる中、自由貿易体制を維持・発展させ、グローバル化の恩恵を持続的で包摂的な経済発展につなげることも重要な課題です。

本報告では、これらの課題に対応するためには、<1>第4次産業革命が拓く「Society 5.0」を実現し、新たな財・サービスを創出して消費や投資を喚起しつつ生産性を向上させる、<2>人生100年時代を見据え、誰もが幾つになっても活躍できる場を拡げていく、<3>自由貿易体制を維持・発展させ、グローバルな交流を通じて日本の成長力の強化を図っていくことが重要であるというメッセージを打ち出しています。

今年の白書では分析の背景にある経済理論や専門用語を「経済学解説」で詳しく解説するなど、この一冊で基礎知識から最新の経済情勢まで把握できるように構成しています。本報告が、「令和」新時代の日本経済の現状と課題についての様々な議論の深化、進化に資することを願ってやみません。

令和元年7月

経済財政政策担当大臣

経済財政政策担当大臣 茂木敏充

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