第3章 技術革新への対応とその影響

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インターネット上でデジタル化された財・サービスなどの流通が加速する中、こうしたデジタル経済1をベースにした新しい技術革新が近年急速に進展し、経済社会の大きな変化を引き起こしつつある。これらは、モノのインターネット化(Internet of Things、以下「IoT」という。)、ビッグデータ、人工知能(Artificial Intelligence、以下「AI」という。)、ロボットなどの新規技術であり、第4次産業革命とも呼ばれている。

少子高齢化・人口減少が進行する中で、我が国がこうした技術革新に迅速かつ適切に対応できれば、人手不足を克服し、生産性を向上させることで、豊かな国民生活が実現できる。この点からも、第2章で述べたような働き方改革の推進とともに、官民を挙げて技術革新への対応を充実させていくことが重要である。

本章の第1節では、新しい技術革新への対応とその影響という観点から、我が国における生産性の動向を振り返った上で、ICT(情報通信技術)に加え、IoTやAIなどの新規技術の導入が我が国企業の生産性に与える影響を分析する。

第2節では、こうした技術革新が企業のみならず人々の働き方や社会生活をどのように変化させていくのかについて幅広く考察する。その上で、第4次産業革命における技術革新をあらゆる産業や社会生活に取り入れることにより、人々が質の高いサービスを享受し、年齢、性別、地域、言語といった違いを乗り越えて活き活きと快適に暮らすことができる社会であるSociety 5.0(超スマート社会)2の実現及びこれに付随する様々なものをつなげる新たな産業システム(Connected Industries)3の実現を図る必要がある。このための企業及び政府の取組や課題についてまとめる。


(1)本稿では、デジタル経済を「デジタル化された財・サービス、情報、金銭などがインターネットを介して、個人・企業間で流通する経済」と定義する。もっとも、デジタル経済には様々な定義が存在することに留意する必要がある。なお、IoTやAIなどの第4次産業革命における新規技術は、デジタル経済の延長線上にあるものと考えられる。
(2)Society 5.0とは、サイバー空間の積極的な利活用を中心とした取組を通して、新しい価値やサービスが次々と創出され、人々に豊かさをもたらす、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く人類史上5番目の社会である(「経済財政運営と改革の基本方針2017」)。なお、Society 5.0と産業革命との対応については次の通り。農耕社会が第1次産業革命(蒸気機関などの動力の活用)を経て工業社会となり、第2次産業革命(電力・モーターといった動力の革新)と共に工業社会が発展した後、第3次産業革命(コンピュータによる自動化の進展)によって情報社会に移行した。そして現在、第4次産業革命(ビッグデータを基にAIが自ら考え最適な行動をとるといった自律的な最適化の実現)が進展することで、Society 5.0の実現が期待されている。詳細は産業構造審議会(2017)を参照。
(3)モノとモノ、人と機械・システム、人と技術、異なる産業に属する企業と企業、世代を超えた人と人、製造者と消費者など、様々なものをつなげる新しい産業システムを意味する。
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