平成25年度年次経済財政報告公表に当たって
日本経済は2013年に入って持ち直しに転じました。政府は経済政策のレジームを転換し、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」に一体的に取り組んでいます。その結果、市場や家計、企業のマインドが大きく変わり、実体経済の足取りはしっかりしてきています。長年にわたり日本経済を苦しめてきたデフレにも変化が見られます。現在、支出の増加が生産の増加につながり、それが所得の増加をもたらすという経済の好循環の芽が出ています。本報告では、日本経済の現状について分析し、こうした好循環の確立に向けた課題について検討を行いました。
現下の最優先課題は、デフレからの早期脱却と民需主導の持続的な経済成長の実現です。現在芽が出ている経済の好循環を持続的なものとするためには、「三本の矢」を強力に推進し、企業が所得を生む能力、すなわち競争力を高めていく必要があります。「三本の矢」が持続的に効果を発揮するためには、財政健全化への取組も極めて重要です。経済再生が財政健全化を促し、財政健全化の進展が経済再生の一段の進展に寄与するという好循環を目指さなければなりません。
日本企業は、長期化する低成長とデフレの下で萎縮し、設備、研究開発、さらには人材に対する投資や新規事業への挑戦に必ずしも前向きに対応できていませんでした。その競争力を高めるためには、成長戦略を着実に実行に移し、新たな成長分野への挑戦を後押ししていくことが必要です。また、内外の企業から選ばれる国となるよう、企業が活動しやすいビジネス環境を整備しなければなりません。デフレ下で先送りされていた人材への投資を促すとともに、不足していたリスクマネーの供給を拡大することが重要です。厳しい財政制約の下で劣化が進む社会インフラについては、グローバル競争や人口減少への対応が求められています。
長期にわたるデフレと景気低迷を脱し、「再生の10年」を実現するためには、経済の好循環を確かなものとしていくことが不可欠です。本報告がこうした課題に関する幅広い論議の素材となれば幸いです。
平成25年7月
経済財政政策担当大臣