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第3章 グローバル化・人口減少時代の財政の在り方

「百年に一度」といわれる大きなショックであったリーマンショック後の急激な経済情勢の悪化の後、政府による累次の経済対策もあり、我が国経済は緩やかに持ち直してきたものの、財政赤字は大きく拡大した。こうした中で、2011年3月に東日本大震災が発生し、政府は震災からの復旧・復興に、一段の財政出動を通じて取り組んでいる。このための財源は、復興特別増税等により中長期にわたり確保されるが、現時点では、財政赤字の更なる拡大要因となっている。そして、これらの財政赤字により、政府債務残高は大きく増加し、我が国の財政リスクに対する金融市場参加者の関心も高まってきている。

しかしながら、我が国の財政は、リーマンショック以前から、歳出と税収の乖離が大きく、それが政府債務残高の累増をもたらすという構造的な問題を抱えている。すなわち、歳出面では高齢化の進展により社会保障費が一貫して増加する一方、歳入面では景気の低迷や累次の減税政策により税収が低迷している結果、多額の公債発行で歳入不足を賄う状況に陥り、言わば、将来世代のポケットに手を突っ込んで社会保障制度等を支える「いびつな構造」が続いている。先行きについても、持続的かつ安定的な財政や社会保障制度の運営を行っていくには、厳しい状況にある。

こうした中、ヨーロッパでは、リーマンショック以降の財政収支の悪化等から、2010年5月のギリシャの財政危機(ギリシャ政府は2010年4月EUとIMFに金融支援を要請)に端を発した欧州政府債務危機が発生し、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの国債利回りは上昇した。2011年8月以降、ギリシャ国債のデフォルト懸念を契機として、各国の政府債務残高の大きさや財政収支の悪化等が強く意識され、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペインを中心に国債利回りが一段と上昇した。この間、我が国の財政リスクについても金融市場参加者の関心が高まり、国債利回りが上昇するか(財政リスクの伝播の可能性)が注目された。

そこで、本章では、まず、我が国の国債利回りは、低位で安定していることを確認し、その背景を国際資金移動や金融規制等の観点から探る。次に、人口動態に焦点を当てて我が国財政の現状と政府債務残高の変動要因を分析する。加えて、財政支出の増加の主要な要因となっている社会保障費に焦点を当てて、社会保障制度の持続可能性を財政面と制度面から分析する。

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