付注3-1 Alcala and Ciccone (2004)“Trade and Productivity”について

1.概要

第3-1-56図で結果を使用したAlcala, Francisco and Ciccone, Antonio (2004),“Trade and Productivity,” Quarterly Journal of Economics, 119(2), pp.613-646.では、各国の統治状況や地理的条件などをコントロールした上で、対外開放度や人口規模がマクロ生産性の有意な決定要因であることを示している。対外開放度については、先行研究では名目の輸出+輸入を名目GDPで除した名目ベースの対外開放度が過去用いられていたが、名目ベースの場合、対外開放によって貿易財部門の生産性が向上しても、バラッサ・サミュエルソン効果により非貿易財の価格が上昇することから名目GDPが増大して(名目)対外開放度は見かけ上低下する可能性がある。そのため、本論文では購買力平価の実質GDPを対外開放度の算出に用いている。

2.主要な推計式(2段階最小二乗法)

log(労働者一人当たりGDP[購買力平価、米ドル表示])

=(定数項)+β1log(実質ベースの対外開放度※)+β2log(人口規模)+β3log(面積)

 +β4(統治状況)+β5(その他地理変数)+(誤差項)

実質ベースの対外開放度:輸入と輸出の和[米ドル表示]をGDP[購買力平価、米ドル表示]で除した比率。

統治状況:政府の効率性や法の支配など、Kaufmann, Kraay and Zoido-Lobaton (1999)による統治状況についての6指標を平均したもの。

その他地理変数:赤道からの距離、大陸ダミー。

 なお、※を付した変数については生産性向上が貿易の活発化や良好な統治状況に寄与する逆向きの因果によって内生性バイアスが生じる可能性があるので、操作変数を用いている。具体的には、重力モデルによる実質ベースの対外開放度の予測値、人口規模、ヨーロッパの主要5言語を母語とする人口の割合、その他地理的変数を使用。

3.結果

人口規模、地理的条件、統治状況をコントロールした上で、労働生産性の実質ベースの対外開放度に対する弾力性は+ 1.2 程度(標準誤差0.35 程度)となり、貿易は有意で頑健なマクロ生産性の決定要因である。また、実質ベースの対外開放度、地理的条件、統治状況をコントロールした上で、労働生産性は人口規模に対して弾力性が+0.25程度(標準誤差0.1程度)で有意である。

なお、論文中の表VI によると、実質ベースの対外開放度と人口規模はTFPを通じて労働生産性を上昇させている。