付注2-2 リスク資産投資割合のトービットモデルによる推計について

1.概要

 リスク資産投資割合は、家計がリスク資産に投資する比率であるから0%から100%の間の値をとる。したがって、リスク資産投資割合を回帰分析の被説明変数として用いる場合、被説明変数の下限がゼロ、上限が100で制約されることとなる。このような場合、推計式にトービットモデルを用いることにより、説明変数がリスク資産投資割合に与える影響を[1]家計がリスク資産を保有するか否か、及び[2]保有する場合に100%を上限にいくらまで保有するか、という二つの側面を一体として分析することができる。

2.推計方法

 内閣府が実施したアンケート調査「家計の生活と行動に関する調査」から、世帯主が回答者であるものについて、閾値を0及び100としてトービットモデルによる推計を行った。

推計式は以下のとおり。 

推計方法

riski :リスク資産投資割合、c :定数項、(literacyi)v :金融・情報リテラシー

RA :危険回避度、(REstate×ownhouse) :不動産に関するリスク認識と持家ダミーの交差項

(female) :女性ダミー、ln(wealth) :金融資産保有残高の対数値、ln(real) :実物資産保有残高の対数値

ln(disp) :可処分所得の対数値、ln(debt) :負債残高の対数値、(age) :世帯主の年齢

DiSw :学歴ダミー、DiTx :業種ダミー、DiUy :就業形態ダミー

 ダミー変数の定義は、以下のとおり。

(学歴ダミー:DiSw

基準学歴を「高専・短大」とし、そのほか「中卒」、「高卒」、「専修学校」、「大学・大学院」の4つのダミー変数からなる。

(業種ダミー:DiTx

基準業種を「農業、林業、漁業、鉱業、その他」とし、そのほか14業種のダミー変数からなる。

(就業形態ダミー:DiUy

基準業種を「パート、アルバイト、派遣社員、契約社員・嘱託、その他」とし、そのほか「正社員」、「役員」、「自営業主」の3つのダミー変数からなる。

3.推計結果

係数の値
t値
金融リテラシー(基礎) 4.27 (2.72)***
金融リテラシー(上級) 3.11 (3.28)***
情報リテラシー 5.12 (2.03)**
リスク回避度 -1.34×105 (-0.53)
不動産に対するリスク認識×持家ダミー -0.287 (-0.16)
女性ダミー 1.53 (0.26)
金融資産残高の対数値 36.8 (2.59)***
金融資産残高対数値の2乗 -2.22 (-2.09)**
実物資産残高の対数値 10.1 (0.60)
実物資産残高対数値の2乗 -0.432 (-0.38)
可処分所得の対数値 -28.5 (-1.16)
可処分所得対数値の2乗 2.12 (1.01)
負債残高の対数値 17.1 (2.34)***
負債残高対数値の2乗 -1.54 (-2.48)**
年齢 -2.28 (-1.72)*
年齢の2乗/100 2.36 (1.66)*
定数項 -123 (-1.17)
サンプルサイズ 514
F値 -823
Pseudo-R2 0.0519

(備考)

1.

内閣府(2008)「家計の生活と行動に関する調査」により作成。

2.

*、**、*** は変数がそれぞれ10%、5 %、1 %水準で有意であることを示す。

3.

金融リテラシーに関する変数は、van Rooji et al. (2007) を参考に作成。

4.

リスク回避度は、大竹・筒井(2004)を参考に作成。

5.

平均値周りでの符号条件をみると、金融資産、実物資産はプラス、負債残高はマイナスとなっている。可処分所得はマイナスだが、平均よりも高いところではプラスに転じる。