はじめに

日本経済は、バブル崩壊後続いた長期停滞から脱しつつある。2003年度の経済成長率は3%を上回り、失業率は13年ぶりに前年から低下した。2004年央においても家計部門は底堅く、企業部門は改善の動きが広がるなど、景気には前向きの力が働いている。小泉内閣は2004年度までを改革の集中調整期間と位置付け、不良債権問題の解決にめどをつけると同時に、デフレ克服と民間需要主導の持続的な経済成長の実現に向けた改革に取り組んできた。構造改革は、長期にわたって日本経済を下押ししてきた重しの除去に総合的な成果を上げてきたと考えられる。

国際経済面では、近年8%を上回る経済成長を続ける中国を中心として、アジア経済と日本の関係が大転換を遂げている。日本企業の輸出市場、海外生産拠点、低付加価値品の供給元という位置付けをはるかに超えて、財、サービス、資本、労働力に関する密接な関係が構築されつつある。こうした動きが、輸出の増加となって日本の景気にプラスとなっていることは事実である。しかし、重要な点は、こうした新しい関係を21世紀の日本の発展につなげていくために、我々が積極的に取組を行うことである。

本年の年次経済財政報告は、このような問題意識の下に3つの章から分析を進める。

第1章では、日本経済の動向を分析する。基本となる視点は、1消費や投資という民需中心の経済成長がどのように実現しつつあるのか、2構造改革の成果はどのように実り始めているのか、3デフレ克服に向けた現状、そして政策面の課題は何かである。さらに、今後の展望を行い、景気の持続力を検討する。

第2章では、地域経済の再生に向けた展望を行う。日本経済全体を表す経済指標が好転する一方で、地域経済の回復動向にはばらつきがある。本章では、その原因を明らかにし、財政面や規制面における構造改革の取組を分析する。そして、観光などの地域の特性を活かした活性化策についても検討する。

第3章では、日本経済が直面するグローバル化の新たな課題とそのために必要な構造改革について論じる。国際経済関係が一層密接化する中で、企業や家計の行動は大きく変化している。その変化を分析し、どのような経済的影響が生じているのかを検討する。さらに、アジアとの経済連携の在り方、農業、対内直接投資や外国人労働等の分野における課題を整理し、国際経済面から更なる便益を引き出す構造改革を明らかにする。

各章の分析にあたっては、家計、企業、政府のミクロのデータが利用可能な場合には、それに基づいて現実の動きを明らかにするように心がけた。本年度は集中調整期間の仕上げの年であり、来年度は改革の本格的な取組を強める重点強化期間に移る。本報告は、国内外を総合した分析によって、手を緩めることのない構造改革の取組に貢献することを目的としている。

コラム0-1 経済財政諮問会議

経済財政諮問会議とは

経済財政政策に関し、内閣総理大臣のリーダーシップを十全に発揮することを目的として、2001年1月に設置。

現在のメンバー

小泉内閣総理大臣(議長)、細田内閣官房長官、竹中経済財政政策担当大臣、麻生総務大臣、谷垣財務大臣、中川経済産業大臣、福井日本銀行総裁、牛尾治朗(ウシオ電機会長)、奥田碩(トヨタ自動車会長)、本間正明(大阪大学教授)、吉川洋(東京大学教授)

最近の主な活動

2001年5~6月 「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(いわゆる「骨太の方針」)の審議(閣議決定(6/26))
2001年8月 「概算要求基準」の審議(閣議了解(8/10))
2001年9月 「改革工程表」の審議(閣議配布(9/25))
2001年9~10月 「改革先行プログラム」の審議(経済対策関係閣僚会議決定(10/26))
2001年11月 「平成14年度予算編成の基本方針」の審議(閣議決定(12/4))
2001年11月 「緊急対応プログラム」の審議(経済対策関係閣僚会議決定(12/14))
2001年11月~2002年1月 「構造改革と経済財政の中期展望」(いわゆる「改革と展望」)の審議(閣議決定(2002年1/25))
2002年2月 「早急に取り組むべきデフレ対応策」の審議
2002年5~6月 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(いわゆる「基本方針2002」)の審議(閣議決定(6/25))
2002年8月 「15年度予算の全体像」の審議(8/2)
「概算要求基準」の審議(閣議了解(8/7))
2002年10月 「改革加速のための総合対応策」の審議(10/30策定)
2002年11月 「平成15年度予算編成の基本方針」の審議(閣議決定(11/29))
2002年12月 「改革加速プログラム」の審議(経済対策関係閣僚会議決定(12/12))
2002年11月~2003年1月 「構造改革と経済財政の中期展望-2002年度改定」(いわゆる「改革と展望-2002年度改定」)の審議(閣議決定(2003年1/24))
2003年5~6月 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(いわゆる「基本方針2003」)の審議(閣議決定(6/27))
2003年7月 「16年度予算の全体像」の審議(7/29)
2003年8月 「概算要求基準」の審議(閣議了解(8/1))
2003年11月 「平成16年度予算編成の基本方針」の審議(閣議決定(12/5))
2003年12月~2004年1月 「構造改革と経済財政の中期展望-2003年度改定」(いわゆる「改革と展望-2003年度改定」)の審議(閣議決定(2004年1/19))
2004年4~6月 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(いわゆる「基本方針2004」)の審議(閣議決定(6/4))

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経済財政諮問会議
会議配布資料は当日、会議の議事要旨は3日後に掲載