第3節 財政・金融政策の展開(55)
(55) 「平成14年度年次経済財政報告」で使用されたモデルによれば、1990年第1四半期~2003年第1四半期にかけて、円ドルレートに対するマネタリーベースの効果は統計的に有意であった。しかし、推定モデルの逐次残差の累積和が示唆する構造変化と金融政策の変更との関係をチェックした上で区間推定を行ったところ、コールレートが0.4%程度でいったん下げ止まりとなった95年第2四半期以降では、マネタリーベースの効果は有意ではなくなり、ゼロ金利政策を採用した99年第1四半期以降では統計的に有意ではあったものの、期待された関係とは逆の符号となった。他方、四半期データの採用によるサンプル数の問題を考慮し、月次データと四半期データを組み合わせた月次のデータセットを用いて、1997年1月~2003年3月を対象期間として、マネタリーベースのパラメータを推定した。その結果、マネタリーベースの効果は有意となり、かつ、ゼロ金利政策の採用以降、量的緩和政策の採用以降の区間推定で、次第にパラメータの値が上昇する傾向が認められた。また、推定モデルの逐次残差の累積和から、2001年9月の米国同時多発テロ事件を機に強い構造変化が起こっていることが示唆された。米国同時多発テロ事件やイラク戦争の影響等が外国為替市場の動向に影響を与えていたということを意味しているのであろう。