第2章 米国の貿易・投資構造
米国のトランプ大統領は、2025年1月20日の就任直後から大統領令1を用いて、第一次トランプ政権と比較して、より幅広い国及び品目に対して追加関税を課してきた。品目別、国別の関税措置に加え、2025年4月2日には、ほぼ全ての国を対象に、一律10%の基本税率部分と国・地域ごとに異なる上乗せ税率で構成される「相互関税」(Reciprocal Tariff)と称する、広範な関税措置をとった。このような関税措置を米国のような大国が行うことは、米国経済のみならず世界経済全体、ひいては国際貿易体制に大きな影響を与え得るものであり、その動向を注視していく必要がある。
米国の経常収支は、近年、赤字で推移している(第2-1-1図)。2000年から2023年まで財貿易収支と第二次所得収支は赤字、サービス収支と第一次所得収支は黒字で推移してきたが、2024年に第一次所得収支は赤字に転じた。本章では、こうした経常収支の各項目の動向の背景にある構造的な要因について分析を行う。
第1節では、米国の財貿易について、品目別及び相手国別の構造分析を行う。また、米国の財貿易の取引相手国を決定する要因について、国際貿易の重力モデルに基づいた分析を行う。
第2節では、第二次トランプ政権による米国の通商政策について概観した上で、米国の財貿易や物価に与えた影響及び通商政策が潜在的に与え得る影響について分析する。
第3節では、米国のサービス貿易、所得収支や投資構造について分析する。その後、経常赤字と財政赤字との関係について確認した上で、米国において経常赤字と財政赤字が継続する要因について考察する。
第2-1-1図 米国の経常収支

1  Executive Order(行政命令)、Presidential Memorandum(大統領覚書)、Presidential Proclamation(大統領布告)等を指す。