第3章 主要地域の経済動向(第1節)

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第1節 アメリカ経済

アメリカ経済は、世界金融危機後の2009年6月を景気の谷として景気回復を続けてきたが、20年2月に景気の山を迎え、128か月にわたる景気回復局面が終了することとなった。本節では、アメリカ経済の最近の動向を振り返り、今後の見通しとリスク要因について整理する。

アメリカでは、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて3月中旬以降に経済活動の抑制措置が採られたことにより、景気は急速に悪化したが、その後は、経済活動の段階的再開により、持ち直しの動きがみられる。個人消費は、3、4月に大幅に減少したが、その後は持ち直している。住宅着工は、急速に減少したが、その後は持ち直している。設備投資は、1~3月期及び4~6月期において大幅に減少したが、その後は持ち直しの兆しがみられている。労働市場では、3、4月に雇用者数が大幅に減少し、失業率は急速に上昇したが、その後、雇用者数は増加に転じ、失業率は低下している。物価は、4月に急速に低下し、その後は上昇に転じている。

1.アメリカ経済の動向

20年1~3月期、4~6月期の実質経済成長率は、個人消費、民間設備投資、輸出、在庫投資が減少し、それぞれ前期比年率5.0%減、同31.4%減と大幅な減少に転じた(第3-1-1図)。個人消費は、感染症拡大の影響を受け、耐久財、サービスを中心に大幅なマイナス寄与となった。民間設備投資は、感染症拡大による操業停止を背景に、構築物投資及び機械・機器投資が減少した。在庫投資は、1~3月期は卸売業や製造業を中心に、4~6月期は小売業を中心にマイナス寄与となった。純輸出は、輸入の大幅な減少によりプラス寄与となった。政府支出は、経済対策の実施を反映し、プラス寄与となった。

第3-1-1図 アメリカの実質経済成長率

アメリカでは、全米経済研究所(NBER)により1854年以降の景気の山・谷が設定されている。世界金融危機後の09年6月を景気の谷として、景気判断の対象期間である1854年以来最長の景気回復が続いていたが、NBERが20年2月に景気の山を迎えたと認定1したことをもって、景気拡大局面は128か月で終了することとなった(第3-1-2表)。NBERは、2月以降の景気後退について、過去の景気後退とは特徴や動きが異なると指摘しつつも、雇用と生産が過去にない規模で減少し、影響が経済全体に広く及んだことを踏まえると、その期間が短期的なものだったとしても景気後退と判断することが正当化されるとしている。

第3-1-2表 アメリカの景気回復の長さ

(1)個人消費と住宅投資は大幅な減少から持ち直し

(個人消費は大幅な減少から持ち直し)

実質個人消費支出は、20年入り後も緩やかな増加が続いていたが、3、4月は感染症拡大による外出制限などを受け、飲食・宿泊サービスや医療サービス等が大幅に減少した。5月以降は、経済活動が再開し始めたことを背景に、サービス業を中心に持ち直しの動きがみられた(第3-1-3図)。

個人所得についてみると、4、5月において、雇用者報酬等は3月を下回る水準となったが、全体としては3月を上回る水準となった(前掲第2-4-10図)。家計貯蓄率についてみると、感染症拡大への対策として実施された現金給付や失業手当拡充の効果により個人所得は増加した(詳細は第2章第4節「雇用支援策と労働市場の動向」参照)一方、消費が減少したことから、20年4月に、1959年の統計開始以来最高となった(第3-1-4図)。

個人消費の先行きについてみるために先行指標である消費者マインドを確認すると、20年5月以降、経済活動が段階的に再開したことなどから持ち直したが、7月には感染の再拡大を反映して再び低下しており、楽観視できない状況となっている(第3-1-5図)。

第3-1-3図 実質個人消費支出
第3-1-4図 貯蓄率
第3-1-5図 消費者信頼感指数

アメリカ国内の自動車(新車)販売台数をみると、19年半ば以降は、自動車ローン金利やガソリン価格の低下が追い風となり、年換算1,700万台程度を維持していた。しかし、外出制限により購買機会が失われたことから、20年4月には年換算858万台と、世界金融危機時の最低水準である09年2月の同902万台を下回ったが、その後は持ち直し、7月には同1,452万台と、2月の水準の約87%となっている(第3-1-6図、第3-1-7図、第3-1-8図)。全米自動車ディーラー協会の8月4日の試算によれば、20年通年の販売台数は1,300~1,350万台(前年比20~23%減)と予測されている。20年1月~7月の販売台数実績の平均が年換算1,337万台となっていることを踏まえると、8月以降もこれと同程度となることが見込まれているといえる。自動車ローンについてみると、金利は19年前半をピークに低下傾向であり自動車販売には追い風となっている一方、自動車ローンの延滞率が高止まりしており、金融機関の自動車ローンへの貸出態度は足元では厳格化しているなど、自動車ローンが販売台数に与える影響は強弱含む内容となっている(第3-1-9図、第3-1-10図)。

第3-1-6図 自動車販売台数
第3-1-7図 自動車ローン金利
第3-1-8図 ガソリン小売価格
第3-1-9図 自動車ローン延滞率
第3-1-10図 金融機関の貸出態度(自動車ローン)
(住宅着工は急速な減少から持ち直し)

住宅着工件数は、住宅ローン金利の低下等を背景に19年半ば頃から増加し、20年1月には162万件と06年12月以来の高水準まで回復していたが、4月は休業措置により急速に減少した。その後、5月以降は持ち直している(第3-1-11図、第3-1-12図)。先行きについては、先行指標である住宅許可件数及びNAHB住宅市場指数2をみると、感染症の影響により3、4月と大幅に減少したものの、5月以降は経済活動が段階的に再開される中で持ち直しており、今後も持ち直していくことが期待される(第3-1-13図)。

住宅価格についてみると、ケース・シラー住宅価格指数(20都市)の前年比は、19年8月を底に、20年4月まで8か月連続で高まった。5月の前年比は前月を下回ったものの、全体でみれば緩やかな増加傾向となっている(第3-1-14図)。先行きについては、5月において前年比の伸び率が低下した点に関し、調査担当者は一時的なものかどうか不明としており、今後の動向を見極める必要があると考えられる。

第3-1-11図 住宅着工件数
第3-1-12図 住宅ローン金利
第3-1-13図 住宅許可件数・NAHB住宅市場指数
第3-1-14図 ケース・シラー住宅価格指数

(2)企業部門は急速な悪化から持ち直し

(設備投資は下げ止まりの兆し)

民間設備投資は、19年半ば以降、世界経済の減速や米中貿易摩擦に伴う不確実性の高まり等を背景に低迷が続いていたところ、感染症拡大の影響等を受け、20年1~3月期、4~6月期に大幅に減少した(第3-1-15図)。内訳をみると、ウェイトの大きい機械・機器投資の下げ幅が最も大きく、その中でも特に輸送機器投資及び産業機械投資の減少がマイナスに寄与している一方、情報機器投資はテレワークの普及を背景にプラスに寄与している(第3-1-16図)。足下の動きを確認するために地区連邦準備連銀の景況指数(設備投資の現況)を確認すると、4~5月を底に上昇し、8月にはゼロもしくはプラスに転じており、下げ止まりの兆しがみられる(第3-1-17図)。

先行きについては、機械・機器投資の先行指標とされるコア資本財(民間航空機を除いた非国防資本財)受注をみると、4月を底に前年比の減少幅は縮小しており、7~9月期の設備投資については持ち直しに向かうと考えられる(第3-1-18図)。

第3-1-15図 民間設備投資
第3-1-16図 機械・機器設備投資
第3-1-17図 地区連邦準備銀行の景況指数(設備投資の現況)
第3-1-18図 コア資本財受注
(財輸出は大幅な減少から持ち直しの動き)

財輸出は、19年終わりから20年初めにかけておおむね横ばいで推移していたが、感染症の影響により、3月に減少し、続く4、5月は減少幅が大幅に拡大した(第3-1-19図)。前月比で項目別の寄与をみると、4月の減少には資本財、自動車・同部品、消費財と多くの項目でマイナスの寄与が大きかったが、5月には資本財のマイナス寄与が小さくなり、6月にはプラスに転じている(第3-1-20図)。

財輸出の国別の内訳(前年比)をみると、中国向け輸出は、2、3月とマイナスとなった後、4月にはプラスに転じている。カナダ、メキシコ、EUを始めとするその他の国・地域向けの輸出は、3月に減少し、4月及び5月には更に大幅な減少となった(第3-1-21図)。背景には、各国での感染症の拡大による内需の縮小や貿易の停滞の可能性があるとみられる。

先行きについて確認するためにISM製造業の内訳指数である輸出受注をみると、3、4月は大幅に減少したものの、5月以降は徐々に持ち直してきていることが分かる。7月には改善・悪化の境目である50ポイントを超えており、財輸出は持ち直しの動きが続くことが期待される(第3-1-22図)。

第3-1-19図 実質財輸出
第3-1-20図 実質財輸出(項目別寄与度)(前月比)
第3-1-21図 名目財輸出の国別寄与度
第3-1-22図 ISM製造業景況感(輸出受注)
(鉱工業生産は急速な減少から持ち直し)

20年入り後の鉱工業生産は、感染症の影響で多くの工場が操業を停止したことを受け、大幅な落ち込みを示した(第3-1-23図)。3月に前月比4.3%減となった後、翌4月には同12.8%減と、1919年の統計開始以来最大の下落となった。世界金融危機時における最大の下落幅は同4.3%減(08年9月)であり、これを大きく下回る結果となった。

3、4月の鉱工業生産の内訳をみると、耐久財(特に自動車及び同部品、航空機、機械)が大きく減少している(第3-1-24図、第3-1-25図)。自動車及び同部品については、大手自動車メーカー3社が3月19日から5月18日までアメリカ国内での生産を停止しており、3月が前月比29.2%減、4月が同76.2%減となった。航空機については、20年入り後に減少が始まった後、3、4月には更なる減少を示している。背景には、大手航空機メーカーであるボーイングが、新型機の墜落事故後の運航停止を受け、20年1月から同機の生産を停止していた中、3月下旬から4月上旬にかけ、感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けてワシントン州とサウスカロライナ州の組立工場を休止したことがある。機械については、18年末以降、低調な動きが続いていた中で、感染症拡大後は更に減少した。

一方、これらの品目の大幅な落ち込みとは対照的に、コンピュータ・電子機器における減少は小幅にとどまった。その要因としては、感染症拡大防止策として進められたテレワークの普及に後押しされたことが指摘されている。

5月の鉱工業生産は、多くの業種において経済再開の動きがみられ、前月比0.9%増と3か月ぶりの上昇に転じた。続く6月も、増加幅が拡大し、持ち直している。

鉱工業生産の設備稼働率をみると、上述の生産動向を反映し、総合は、20年3月は73.6%、4月は64.2%、製造業は、20年3月は71.4%、4月は60.0%と大幅に低下し(第3-1-26図)、4月は世界金融危機時の最も低い設備稼働率(総合は66.7%(09年6月)、製造業は63.7%(09年6月))を下回った。しかし、5月からは上昇に転じており、6月は68.5%、7月は70.6%と徐々に稼働率が高まってきている。

鉱工業生産の先行きについて確認するために、ISM製造業の内訳指数である新規受注をみると、最も水準が低かった20年4月の21.7から7月には61.5と大きく増加しており、鉱工業生産も持ち直しが続くことが期待される(第3-1-27図)。

第3-1-23図 鉱工業生産指数
第3-1-24図 鉱工業生産指数(前月比寄与度)
第3-1-25図 鉱工業生産指数(業種別)
第3-1-26図 設備稼働率
第3-1-27図 ISM製造業景況感(新規受注)

(3)雇用情勢は急速な悪化から回復

雇用情勢は、20年2月にかけて全体として改善が続いていたが、3月以降、各州において休業措置や外出制限措置が採られ、経済活動が停止したことで、急速に悪化した。非農業部門雇用者数の前月差をみると、20年1、2月は平均で23.3万人増と増加が続いていたが、3月に137万人減と大幅に減少し、4月は2,079万人減と、1939年2月の統計開始以来、最大の減少幅となった(前掲1-2-30図)。

失業者の内訳についてみると、3月以降の失業者の多くが一時帰休(レイオフ3)による失業であることが分かる(第3-1-28図)。しかし、4月下旬以降、経済活動が徐々に再開され、一時帰休とされていた労働者の再雇用が進んだ結果、5月の非農業部門雇用者数前月差は273万人増と増加に転じた。さらに、6月には478万人増と過去最大の増加となり、7月は173万人増、8月は137万人増と、増加幅は縮小したものの、4か月連続の増加となった。

第3-1-28図 失業者の内訳

失業率(U34)は、世界金融危機後、09年10月の10.0%をピークに徐々に低下し、20年2月は3.5%となるなど、約50年ぶりの低水準で推移しており、広義の失業率(U65)も、20年2月において7.0%と低水準となった(第3-1-29図)。しかし、U3は、3月に4.4%と上昇した後、4月に14.7%と、1948年1月の統計開始以来、最高水準を記録した。U6においても同様に、3月に8.7%と上昇した後、4月に22.8%と、1994年1月の統計開始以来、最高水準を記録した。なお、U3は失業者を労働力人口で除すことにより計算されるが、失業した労働者が労働市場から退出し非労働力化した場合は失業者として数えられないため、失業率を押し下げる方向に作用することから、失業率が示す数値よりも労働市場は更に悪化していた可能性がある(第3-1-30図)6。5月の失業率は、一時解雇された労働者の再雇用が進んだことから、U3は13.3%、U6は21.2%と低下に転じ、6月以降もいずれも低下が続いている。先行きについては、今後も失業率は緩やかに低下すると考えられ、9月FOMC会合における参加者の見通しによれば、20年は7.6%、21年は5.5%、22年は4.6%、23年は4.0%となることが見込まれている(前掲2-2-10表)。

第3-1-29図 失業率
第3-1-30図 労働力人口

時間当たり名目賃金の伸びは、19年秋以降、伸びがやや低下していたが、20年3月に前年比3.4%と上昇し、4月は同8.0%と過去最高値を記録した後、5月は同6.6%、6月は同4.9%と低下に転じた(第3-1-31図)。これは、労働市場における構成変化が背景として指摘されている。3、4月の上昇は、相対的に低賃金な業種・職種の労働者が減少したこと、5、6月の低下は、3、4月に一時解雇された労働者の復職により低賃金労働者の割合が増加したことが要因とみられる(第3-1-32図)。労働市場における構成変化の影響を除外した賃金指標である賃金上昇追跡調査(Wage Growth Tracker7をみると、パートタイム労働者では賃金上昇率が低下傾向にあるものの、フルタイム労働者ではおおむね横ばいで推移していることが読み取れる(第3-1-33図)。7月には、パートタイム労働者の割合の上昇幅が緩やかになる中で、時間当たり名目賃金の伸びは前年比4.7%と前月からやや低下し、8月は同4.7%と、7月とほぼ同じ伸びとなった。

第3-1-31図 時間当たり名目賃金の伸び
第3-1-32図 パートタイム労働者の割合
第3-1-33図 賃金上昇追跡調査

(4)物価は急速な低下後に上昇

PCE総合デフレーター及びPCEコアデフレーターの前年比をみると、総合、コアともに、19年12月から20年2月にかけて上昇し、FRBが目標とする2%に近付いた8。その後、3、4月において、感染症拡大を背景とした輸送サービス、飲食・宿泊サービス価格等の下落や原油価格の下落等を背景に急速に低下し、4月時点で総合が0.5%、コアが0.9%となった(前掲第2-2-9図、第3-1-34図)。しかし、5月以降、経済活動の再開等を反映し、総合、コアともに上昇に転じており、7月時点で総合が1.0%、コアが1.3%となっている。一方、変動の大きい項目を除いた刈込平均物価上昇率をみると、20年3月以降下落しており、7月時点では1.64%と、FRBが目標とする2%を下回っている(第3-1-35図)。先行きについては、21年以降上昇することが見込まれ、9月FOMC会合における参加者の見通しによれば、総合は20年に1.2%、21年に1.7%、22年に1.8%、23年に2.0%、コアは20年に1.5%、21年に1.7%、22年に1.8%、23年に2.0%となると見込まれている(前掲2-2-10表)。

第3-1-34図 PCEデフレーター(項目別)
第3-1-35図 刈込平均物価上昇率

(5)財政政策の動向

(財政収支)

アメリカでは、感染症の拡大に伴って累次の対策が成立した。財務省が公表している月次の連邦政府の財政収支では、20年4月以降、財政赤字は大幅に増加しており、6月は単月で過去最大の財政赤字となった(第3-1-36図)。財政収支を歳出と歳入に分けてみてみると、歳入は、4月に前年比55%減、5月に同25%減、6月に同28%減と大幅に減少した後、7月に同124%増となった(第3-1-37図)。4月は例年であれば納税期であるが、感染症対策の一環として納税期限を延長したことから、歳入が前年比でマイナスとなり、延期された一部の税が納付された7月には前年比でプラスとなった。歳出については、感染症の拡大を受けて実施された各種の対策により、4月に前年比161%増、5月に同30%増、6月に同223%増と大幅に増加した(第3-1-38図)。

議会予算局(CBO)は、アメリカの財政赤字は、20年度には3.3兆ドル(対GDP比16.0%)と、19年度の1.0兆ドル(対GDP比4,6%)から大幅に増加し、また、連邦政府債務残高対GDP比についても、20年度末は98%と、19年度末の79%から大幅に増加し、30年度末には109%に達するとの見通し9を示している(第3-1-39図)。

第3-1-36図 連邦政府財政収支
第3-1-37図 連邦政府歳入
第3-1-38図 連邦政府歳出
第3-1-39図 連邦政府の財政収支及び債務残高の見通し

(6)通商政策の動向

18年から続く米中間の貿易摩擦は、両国が19年後半に追加関税措置第4弾を実施するなど緊張が高まっていたが、20年1月に第1段階合意文書への署名がなされ、一旦は落ち着きがみられた。しかし、感染症の拡大等を発端に両国間の緊張は再度高まっている。また、20年前半には、米中間以外においても、アメリカの通商政策にはいくつかの動きがみられた。以下では、20年前半におけるアメリカの通商政策の主な動きについて整理する。

(i)対中国
(第1段階合意を巡る動き)

19年後半に高まっていた米中間の緊張は、両国間での協議の継続により、19年12月13日に第1段階の合意に至り、両国ともに12月15日に実施を予定していた追加関税措置第4弾の発動を見送った。また、20年1月15日には第1段階合意文書への署名が行われ、2月14日には両国が既に発動されていた追加関税措置の一部の関税率を引き下げるなど、緊張の緩和がみられた。

2月28日に公表されたアメリカ通商代表部(USTR:United States Trade Representative)の通商政策に関する年次報告書では、過去の関税措置の一部を維持し、また、中国の対応次第では新たな追加関税措置を行う用意があるとしつつも、中国の産業補助金や国有企業改革といった分野に関し、第2段階の協議を進めていく旨が記載された。5月21日にUSTRと米農務省が共同で公表した声明では、同合意の達成に向けて、ブルーベリーやアボカド等の農産品の対中輸出が可能になったことなどの成果が発表されている。

第1段階合意では、中国がアメリカから財及びサービス輸入を20~21年の2年間で、17年比で2,000億ドル以上増やすことが約束されている。しかし、感染症拡大の影響により貿易が縮小し、アメリカから中国への財輸出は20年2月から3月にかけて大幅に減少した(第3-1-40図)。また、サービス輸出については、20年3月以降実施されている外国人の入国制限措置等により、旅行サービス(19年において中国へのサービス輸出の半分以上を占める(第3-1-41図))が大幅に減少することが予想される。アメリカは、現時点では目標の再交渉について言及していないものの、輸出の増加幅が目標に達していないことが米中対立の悪化につながる可能性がある。

第3-1-40図 中国への財輸出
第3-1-41図 中国へのサービス輸出(2019年)
(感染症の拡大)

20年入り後、米中間の緊張が落ち着きを取り戻しつつあったが、1月半ば以降中国国内で感染症が拡大し、その後世界各国においても感染が拡大した。3月にはアメリカでも感染症が大幅に拡大したことから、トランプ大統領は中国への批判を強め、それに対し中国側も反発を示すなど、感染拡大は米中間の緊張が高まる一因となった。また、アメリカ政府は、世界保健機関(WHO)が中立的な情報提供等の本来の役割を果たさず、中国寄りの対応をしたと批判した上で、4月14日にWHOへの資金の拠出を一時停止することを表明した。5月18日、トランプ大統領は、テドロスWHO事務局長宛ての書簡において、WHOが中国からの独立性を欠いており、30日以内に運営を改善しない場合には、資金拠出を恒久的に凍結し、WHOへの加盟を再考する旨を表明した。5月29日、WHOから脱退する意向をトランプ大統領が表明し、7月6日、1年後の21年7月6日に脱退する旨を正式に公表した。

また、6月3日、米運輸省が中国の航空会社による米中間の定期旅客便の運航を、6月16日から禁止する旨を公表した。これは、中国航空会社は米中間において運航を認められている一方、米航空会社の運航再開については中国政府が未承認であることを受けた措置とみられる。翌4日、中国政府が、米国系航空会社の運航を許可する方針を示し、16日、米運輸省が、米中両政府がそれぞれ週4便の米中航空便の運航を認めると公表した。

(国家安全法の香港への導入に対する制裁措置等)

5月28日、中国の全国人民代表大会において香港国家安全法の制定方針が採択されたことを受け、アメリカ、カナダ、オーストラリア、英国の4か国は同日、共同声明を公表し、国家安全法を香港に導入するという中国政府の決定に対し、懸念の意を表明した。

翌29日、トランプ大統領は記者会見において、中国に対する制裁措置等を公表した。具体的には、(i)香港に対し中国とは別に特別に付与している関税や査証発給等の優遇措置の停止及び一国二制度を損なう中国政府関係者に対する制裁の実施10、(ii)WHOとの関係断絶(前述)、(iii)アメリカの金融システムの健全性を守るため、アメリカに上場している中国企業の慣行の調査11、(iv)アメリカの大学の研究成果を保護するため、潜在的な安全リスクとみなす者について、中国からの入国停止等が表明された。

7月14日、アメリカで「香港自治法」が成立し、前述の(i)のうち「一国二制度を損なう中国政府関係者に対する制裁」に関する規定が正式に定められた。具体的には、政府は、香港の自治を侵害した個人・団体、及びそれら個人・団体と取引を行った金融機関を特定する報告書を、毎年議会に提出し12、大統領は、上記報告書の提出から1年以内に、報告書で特定された個人・団体・金融機関に対する制裁13を発動することとされている。

(中国企業との取引制限措置等)

19年5月15日、アメリカ商務省は、ファーウェイとの取引は安全保障上の脅威があるとして、ファーウェイ本社及び関連企業をエンティティー・リストに追加した14。エンティティー・リストとは、商務省が輸出管理法に基づき作成するものであり、アメリカの国会安全保障及び外交政策上の利益に反する個人・企業が掲載されたリストである。米国企業がエンティティー・リストに追加された事業者に対して製品等を輸出する際は、事前に商務省の許可が必要となる。すなわち、ファーウェイのエンティティー・リストへの追加は、事実上、ファーウェイへの禁輸措置を意味するものである。ただし、既存のネットワーク及び機器の継続的運用等に必要な取引については猶予期間が設けられており、過去複数回にわたり延長されていたが、20年5月15日に商務省は同日が期日であった猶予期間を8月13日まで90日間延長するとともに、同日をもって終了することを示唆した(その後、更なる延長措置はなされていない)。加えて、商務省は、5月15日に上記の輸出管理規制を強化する措置を公表した。従来は、米国以外の国の製品について、米国製品が部品等で含まれる割合が価格ベースで25%未満であれば輸出可能であったところ、本措置により、米国製品が含まれる全ての製品の輸出が禁止されることとなった(ただし、5月15日時点で既に生産を開始している場合には、9月14日まで猶予される)。8月17日には、エンティティー・リストにファーウェイの関連企業38社を追加するとともに、アメリカの技術が用いられた半導体製品について、エンティティー・リストに掲載された企業が第三者を通じて取引することを禁じる(ただし、8月17日時点で既に生産を開始している場合には、9月14日まで猶予される)ことを公表し、ファーウェイへの禁輸措置が強化された。9月15日には、実際に、それまで猶予対象だったものも含め禁輸措置が発効となった。

また、アメリカの連邦政府通信委員会(Federal Communication Commissions)が、連邦政府から補助金を受領するアメリカの通信会社に対し、ファーウェイ及びZTEからの製品の調達を禁止することを19年11月22日に決定しており、その実施時期は未定となっていたが、20年6月30日から発効となった。

さらに、7月14日、商務省は、2019年度国防権限法(National Defense Authorization Act 2019)に基づき、アメリカ政府が、中国企業5社(ファーウェイ、ZTE、ハイテラ、ハイクビジョン、ダーファ)の製品を使用する企業と取引をすることを、8月13日より禁止する旨を公表した15

その他、8月6日には、トランプ大統領が、米国企業に対し、中国系動画アプリを運営するバイトダンス及び中国系メッセージ送受信アプリを運営するテンセントとの取引を45日後に禁止する大統領令に署名するなど、中国企業との取引禁止措置等の動きは広がりをみせている。

(ウイグル人権法の成立)

アメリカの議会では、中国のウイグル自治区の人権侵害をめぐり、少数民族であるウイグル族への弾圧に関与した中国の当局者へ制裁を科すよう求めたウイグル人権法案が上院では5月14日に、下院では5月27日にともに賛成多数で可決され、6月17日、トランプ大統領の署名により成立した。本法律により、アメリカ政府は、弾圧や人権侵害にかかわった人物のリストを作成し議会に報告した上で、それらの人物に査証の発給の停止や資産凍結等の制裁を科すことができるようになる。

また、商務省は、5月22日、中国政府によるウイグル人弾圧を理由に、9企業をエンティティー・リストに追加し16、7月20日には更に11企業を追加した。

9月14日には、アメリカ税関・国境警備局(U.S. Customs and Border Protection)が、同じくウイグル自治区の人権侵害を理由に、同自治区で製造された衣料品や電子部品等の輸入を禁止する旨を公表した。

上記のほか、5月21日にアメリカ政府は、「中国に対する戦略的アプローチ」報告書を公表し、中国の経済・政治・軍事力の拡大が、米国の利益を害し、世界中の国と個人の主権及び尊厳を損なうと指摘、米国政府は、国益を守るため、中国と競争する戦略に転じるとの方針を示すなど、20年前半は米中間に緊張の高まりがみられる局面となった。

(ii)対カナダ、メキシコ
(USMCAの動向)

NAFTAに代わる新協定であるUSMCA17は、18年11月30日にアメリカ、メキシコ、カナダ間で署名された。メキシコでは、19年12月12日18に議会において批准がなされ、アメリカでは、20年1月29日にトランプ大統領の署名をもって批准され、カナダでも、3月13日に議会上院及び総督の裁可を受けて批准された。感染症の世界的な拡大を受け、一部の業界団体や米上院議員の超党派グループ等からは発行の延期を求める要請があったが、USTRは4月24日に7月1日にUSMCAを正式に発効すると発表し、7月1日には実際に発効となった。

(アルミニウムに対する追加関税)

アメリカ政府は、1962年通商拡大法第232条19に基づき、「安全保障上の脅威」を理由として、18年3月より、一部の国・地域を除き20、アメリカへ輸入されるアルミニウムに10%の追加関税を賦課していた。カナダ、メキシコについては、USMCAの批准を進めるため、19年5月20日から適用除外となっていたが、20年8月6日、カナダからのアルミニウムの輸入が増えたとして、8月16日より10%の追加関税を賦課する旨を公表した。9月15日には、USTRは、9月以降にカナダからのアルミニウムの輸入が減少したとして、本追加関税措置を9月1日から遡って撤回する旨を公表した。

(iii)対欧州等
(デジタルサービス税導入を理由とした追加関税)

デジタル課税については、世界的に関心が高まっており、OECDにおいて21年半ばまでに国際的なルールの制定を目指す動きがある一方、独自の課税ルールの導入を進める国もある。フランスでは、19年前半からデジタル課税の独自ルールの審議を進めていたが、これに対しUSTRは、19年7月10日から同国の課税ルールについて調査を開始し、12月2日に報復措置としてフランスからの一部の輸入品に追加関税を課すとした。その後、両国間での協議の結果、20年1月22日に、フランスはデジタル課税の徴収を20年末まで、アメリカは報復関税の発動を当面見送ることで合意したが、USTRは7月10日、21年1月6日までに、フランスから輸入品13億ドル相当(化粧品、ハンドバッグ等)に対し、25%の追加関税を賦課する旨を公表した。

また、フランス以外の国・地域に対しても、独自のデジタル課税への関心の高い国・地域が多いことなどを背景に、USTRは20年6月2日、英国やEU等の10の国・地域21についてデジタル課税の動向を調査対象に追加した。同10の国・地域のうち、イタリア、オーストリア、トルコ、インド、インドネシアが既にデジタル課税を施行しており、その他の国は検討中としている。USTRは、対抗措置を講じる準備があるとしており、今後デジタル課税をめぐってアメリカとの対立が懸念される。

(EUによるエアバス社への補助金を理由とした追加関税)

アメリカとEUは、2000年代前半に、EUによるエアバス社への補助金、アメリカによるボーイング社への補助金がそれぞれWTO協定に違反するものとして、WTOに対抗措置の承認を求めて提訴していた22。19年10月14日、WTOがアメリカによる対抗措置を正式に承認したことを受け、アメリカは10月18日より、フランス、ドイツ、スペイン、英国から輸入される航空機及び同部品については10%(20年3月18日に15%へ引上げ)、EU加盟国及び英国から輸入される乳製品やウイスキー等については25%の追加関税を賦課していた。

そのような中、20年6月23日、USTRは、31億ドル規模の追加のリスト案を公表し、追加関税措置の拡大に関する意見公募を行う旨を発表した。追加のリスト案には、フランス、ドイツ、スペイン、英国の4か国から輸入するオリーブ、ビール、ジン、ウォッカ等が挙げられており、最大100%の追加関税を賦課するとされている。意見公募は7月26日までとされており、今後何らかの措置の実施が表明される可能性がある。

2.アメリカ経済の見通しと主なリスク要因

(1)アメリカ経済の見通し

20年のアメリカ経済は、感染症の拡大に対応するための外出制限、移動制限、休業措置等により、成長率は前年に比べて大きく減少することが見込まれている。これらの見通しは、感染症の状況や経済活動の段階的再開の進展に依存しており、第2波・第3波が発生するかどうかも含め、不確実性が高いことから、引き続き注視する必要がある(第3-1-42表)。

第3-1-42表 各種機関による実質経済成長率見通し

(2)アメリカ経済の主なリスク要因

アメリカ経済は、20年3月以降、感染症拡大及びそれに対応するための財政金融政策について、大きな不確実性が生じた。

アメリカの経済政策不確実性指数(Economic Policy Uncertainty Index)の動向を確認すると、総合指数は、19年後半に高まりを見せた後、20年初めには落ち着きがみられたが、3月以降、急速に上昇した。指数を政策別に分けてみると、金融政策については、臨時会合を含め3度のFOMC会合が開催され、大幅な利下げや量的緩和等が決定された3月に急上昇し、その後は低下したものの引き続き高い水準にある。財政政策については、3月27日に2.2兆ドル規模のCARES法が成立したが、翌4月に急上昇した。貿易政策については、20年1月に米中間において第1段階合意に達したことなどを受け低下し、その後も低い水準で推移している(第3-1-43図)。

第3-1-43図 アメリカの経済政策不確実性指数
(財政政策の動向)

第2章で述べたとおり、20年3月から4月にかけて累次の経済対策が実施され、合計3.3兆ドル規模の経済対策が決定された。対策に盛り込まれた各種措置の期限が迫る中、5月15日に下院が3兆ドル規模の対策法案を可決し、7月27日には上院共和党が1兆ドル規模の対策法案を公表したが、合意がなされない状況を受け、トランプ大統領は8月8日、7月末までが期限となっていた失業手当上乗せを減額して延長するなどの大統領令に署名した。追加対策法案についてはいまだ合意に至っておらず、政策の実施が遅れる場合には、経済の下押し要因となる可能性がある。

また、中長期的には、財政支出の増大が金融資本市場に及ぼし得る影響もリスク要因として考えられる。1(5)で述べたように、大規模な経済対策の実施と、経済活動水準の低下に伴う税収減などがあいまって、連邦政府債務残高は対GDP比で大きく高まる見通しとなっている。感染症や経済環境の動向によっては、今後も経済対策の継続や追加も想定され得る状況となっているが、過剰な財政支出が長期金利の上昇をもたらすリスクには留意が必要と考えられる。

(通商政策の動向)

米中間では、18年以降、貿易摩擦の問題が生じていたが、20年1月、米中間で第1段階合意への署名がなされ、落ち着きがみられた。しかし、前述のとおり、香港をめぐる情勢や、アメリカにおける中国企業との取引停止措置等により、米中間の緊張は再び高まっている。加えて、欧州に対する追加関税措置の拡大も実施・検討されており、通商政策の動向には引き続き留意が必要である。

(企業債務の動向)

アメリカでは、世界金融危機後、家計部門の債務残高対GDP比が低下傾向となっていたのに対し、企業部門の債務残高対GDP比は増加を続け高い水準となっており、20年1~3月期に更に急上昇した。企業部門の債務の増加は、経済に予期せぬ負のショックが生じた場合の脆弱性を高めるため、その動向を注視する必要がある(第3-1-44図)。

第3-1-44図 企業部門の債務残高対GDP比

1 四半期ベースでは、19年第4四半期が景気の山であるとしている。
2 全米住宅建設業者協会(NAHB)に所属する住宅建設業者への月次調査を基にした住宅市場の景況感指数。新築販売、販売見通し、客足の各指数を算出し、それらを加重平均して作成。50を上回れば見通しが改善、下回れば悪化したことを意味する。
3 雇用統計上のレイオフとは、企業の業績悪化等を理由とする一時的な人員削減であり、業績回復時の人員採用の際に優先して再雇用を約束するもの。
4 アメリカ労働省では、労働力の未活用状況に関して6種類の指標(U1~U6)を公表しており、失業者/労働力人口で定義される通常の失業率はU3と呼ばれる。
5 広義の失業率(U6)は、(失業者数+縁辺労働者数+経済的理由によるパートタイム労働者数)/(労働力人口+縁辺労働者数)で定義される。縁辺労働者(Marginally Attached to the Labor Force)とは、就業を希望する非労働力人口のうち、仕事があればすぐに就くことができ、過去1年間に求職活動を行ったことがあるが、過去4週間以内に仕事を探さなかったため、失業者とならない者をいう。また、経済的理由によるパートタイム労働者(Employed Part-time for Economic Reasons)とは、フルタイムで働くことを希望しているが、労働時間の削減、事業環境の悪化、フルタイム労働が見つからない、季節的な需要減少といった経済的な理由により、パートタイム(週35時間未満)でしか就労できなかった者をいう。
6 労働市場からの退出に加え、雇用統計における雇用状態の分類の問題が指摘されている。アメリカ労働省は、4月の雇用統計における感染症拡大の影響についてのレポートの中で、本来「一時的解雇」(失業者に含まれる)と回答すべきところ、誤って「その他理由による非労働」(失業者に含まれない)として回答したものが含まれており、これらが正しく回答されていた場合、失業率は19.5%に達していた可能性があるとの見解を示している。詳細は第2章第4節雇用支援策と労働市場の動向(アメリカ)を参照。
7 賃金上昇追跡調査は、アトランタ連邦準備銀行が、アメリカ商務省の人口動態調査を基に作成した賃金指標であり、同一個人の該当月と12か月前の回答を突き合せ、各個人の時間当たりの名目賃金・俸給の伸びを計算し、その中央値を示したもの。
8 パウエル議長は、20年1月のFOMC会合後の記者会見において、「19年初に物価を押し下げていた要因がはく落するため、今後数か月の間に物価上昇率は2%へ近づくと予想する」と述べた。なお、パウエル議長は、19年5月のFOMC会合後の記者会見において、ポートフォリオ管理サービス価格、衣料品価格等が、物価上昇率を一時的に押し下げていると指摘していた。
9 CBO(2020)
10 19年11月27日にアメリカで成立した香港人権・民主主義法に基づく措置。会見では、措置の実施期日については示されなかった。
11 上院では5月20日に「外国企業説明責任法」を可決しており、同法案によると米国に上場する外国企業に対し、外国政府の支配下にないことを証明することを求めるとともに、米規制当局による会計監査状況の検査を義務付け、3年間検査を拒否した場合は上場廃止とすることができる。
12 2020年においては、法成立後90日以内(10月11日まで)に提出することとされている。
13 個人・団体に対しては、査証発給の停止、米国内の資産凍結を実施。金融機関に対しては、米国金融機関による融資の禁止、米財務省証券プライマリー・ディーラー指定の禁止、米政府・米政府系機関との取引の禁止といった10種類の措置のうち、少なくとも5種類の措置を実施。
14 19年5月時点では、ファーウェイ本社及び関連企業68社をエンティティー・リストに追加。19年8月19日、新たに関連企業46社を追加。
15 中国企業5社と政府機関と直接の取引については、19年8月13日より禁止されている。
16 米商務省は同日、安全保障上の問題を理由に、24団体・企業をエンティティー・リストに追加した。
17 USMCAでは、例えば、自動車の原産地規則についてNAFTAと比べより厳格な内容となっており、加盟国間の経済協力関係を強化するものとなっている。具体的には、域内での自動車部品の調達比率を62.5%から75%に引き上げること、自動車のアメリカへの輸出に数量制限を設定すること、などが盛り込まれた。USMCAの内容については内閣府(2019a)を参照。
18 メキシコでは、19年6月に議会で批准されていたが、アメリカ民主党の要望などにより一部修正となったため、再度12月に手続きが行われた。
19 1962年通商拡大法第232条は、アメリカ大統領に対し、安全保障を理由にした貿易制裁を認める規定であり、大統領が外国製品の輸入を脅威と認定すれば、関税率の引上げや輸入割当枠の導入等、幅広い制裁措置を発動することが可能となる。
20 EU、カナダ、メキシコ、韓国、オーストラリア、ブラジル、アルゼンチンについては、アメリカとの間で安全保障上の脅威に対処するための十分な代替的手段を議論している途上にあるとされ、追加関税賦課の対象国からは除かれていた。その後、EU、カナダ、メキシコについては、期日までに合意がなされなかったとして、18年6月から適用となった。
21 英国、EU、イタリア、スペイン、オーストリア、チェコ、トルコ、ブラジル、インド、インドネアシアが該当する。
22 アメリカは04年10月にEUをWTOに提訴しており、EUは05年6月にアメリカをWTOに提訴している。

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