第1章 継続する米中貿易摩擦の影響
2018年から続く米中間の貿易摩擦は、19年前半も継続している。18年9月から実施している中国からの輸入品2,000億ドル相当に対する追加関税措置の税率引上げについては、18年12月の米中首脳会談で19年3月まで延期されたが、1月から2月にかけての次官級及び閣僚級協議の進展を踏まえて更に延期され、米中貿易摩擦の解消も期待されていた。しかしながら、19年5月にアメリカ政府は税率引上げを実施するとともに、対中国追加関税措置の対象をこれまで対象となっていなかった項目にも拡大し、ほぼ全ての輸入品を対象とする方針も表明、中国も対抗措置としてアメリカからの輸入品600億ドル相当に対する追加関税措置の税率を引き上げるに至った。アメリカ政府の追加関税措置の対象拡大方針の表明はまた、アメリカ国内において、追加関税の負担をめぐる議論を活発化させることにもなっている。19年6月末に米中首脳会談が実現し、米中貿易協議の継続が確認されるとともに、アメリカ政府によるほぼ全ての対中輸入品を対象とする追加関税措置の実施が見送りとなったことで、貿易摩擦の更なる高まりは回避されたものの、引き続き米中間の協議の行方に注目が集まっている。
本章ではまず、19年前半における米中貿易摩擦をめぐる動きを振り返り、次に、継続する米中貿易摩擦がアメリカ経済、中国・アジア経済、世界経済に与える影響を確認する。